決算書が読めるか読めないかで、ビジネスパーソンとして大きな差がついてしまいます。 業種を超え、立場を超えて必要となる、汎用性の高い知識や能力について考えてみましょう。 よく言われるのが英語力です。 英語力はもちろん必要ですが、これは学ぶというよりも、とにかく実践で日々使うのがいいと思います。 例えば留学するといった使わざるを得ない環境に身を置くと、自然と磨かれる類の力です。 わざわざ留学しなくても、英語圏の人と知り合うとか、スクールに通うなども検討してみるといいでしょう。 こればかりは本で勉強しているだけでは身につきません。 毎日、話したり聞いたりという行為を繰り返すことで、英語でのコミュニケーション力は養われるからです。 また、何よりも重要なのがアカウンティング=会計の知識です。 ビジネスに必要なたくさんの学問領域がありますが、30代で一番身につけておくべきものが会計です。 もちろん、 「マーケティングや組織論の知識が必要ない」 と言っているわけではありません。 ただそうした学問は、必要になれば遅れを取り戻しやすい学問です。 しかし、会計だけはそうはいきません。 管理職、ましてや経営者になれば、決算書が読めなければ話になりません。 会計はどこかの段階でしっかりと学んでおかないと、簡単には身につかない領域なのです。 損益計算書や貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書などの数字満載の書類を読むという行為には慣れが必要です。 そうでないと、とにかく苦痛です。 見えるべきものも見えてきません。 それではビジネスパーソンとして不完全としか言いようがありません。 実際、取締役会に出席すれば、議論の3分の1は決算関係の話題です。 どの会社でもそこは同じです。 だから決算書が読めない、財務諸表が理解できないでは、済まされません。 すでに簿記関係が得意という人はいいのですが、そうではない人。 「自分は営業で頑張る」 「マーケで行く」 「私は研究職になる」 という人も、30代のうちに基礎力として会計の知識だけは学んでおいたほうがいいのです。 決算書が読めるか読めないかで、ビジネスパーソンとしては本当に差がついてしまいます。 |
次に重要な汎用性のある基礎知識は、幅広い意味での自然科学領域の知識だと思います。 これからは、どのような仕事をするにしても、多かれ少なかれ、自然科学の基礎的素養が求められるようになると思っています。 ITもそうです。 専門家になる必要はなくても、システムの基本構造やアルゴリズムの何たるか程度は理解しておくべきでしょう。 バイオも、メディカルも、ロボティクスもそうです。 例えば、京都大学の山中伸弥教授が命名したiPS細胞についても、詳しく知る必要はありませんが、その言葉が何を意味しているのかはわかっておいたほうがいいでしょう。 そうした意味で言えば、地理も重要です。 例えば、エストニアという国はどこに位置しているのか。 結構、知らない人が多いものです。 現代は、世界地図が何度も書き換えられている時代です。 例えばヨーロッパのグルジアという国は、今ではジョージアと呼ばれるようになっています。 「ジョージア」 と聞いて、アメリカのジョージア州だと勘違いしてしまえば、話が通じません。 時事の側面から見ても、世界情勢を見極める一歩としても、最新の地理の知識は重要です。 最近、多くの話題の中で、アフリカ諸国の名前がたくさん出てきます。 それが、それぞれどこのことを言っているのかがわからないのでは困ります。 ザンビアやルワンダ、コンゴ、あるいはスーダンはどこにあるのか、どのような位置関係にあるのか、などはビジネスをする上でも重要な知識なのです。 だから、最新の地図帳は持っていたほうがいいと思います。 そして、本棚に差してしまうのではなく、できればリビングに置いておく( =積んでおく )。 真剣に覚えるということではなく、ニュースなどを見て、場所が浮かばない国名が出てきたら、すぐにチェックする。 隣国はどこか、どのような位置関係にあるのかという情報から、多くの関連性が見えてくるはずです。 話を戻しますが、自然科学についても、真剣に、専門的に学ぶ必要はありません。 科学雑誌やシリーズものの書籍を、それこそ乱読すればいいと思います。 ただ、興味は絶対に持ち続けたほうがいい。 テレビ番組も役立ちます。 例えばNHKスペシャル。 特に科学系や災害系のNスぺを私は常に録画しておいて、時間がある時に視聴しています。 あるいは、ジャンルはもう少し幅広くなりますが、Eテレは知識の宝庫です。 5分番組ですら、 「よくこんなに面白いものを作るなあ」 と感心することもしばしばです。 私はよく、家にいる時、特に日曜の夜などはEテレをつけっぱなしにしています。 これは多分に私の趣味の世界ですが、こんなラインナップです。 まず21時から 「クラシック音楽館」、続いて 「美の壺・選」、そして 「サイエンスZERO」、さらに 「地球ドラマチック」 と視聴しています。 こうした番組を、一杯呑みながら気楽に観る。 自然科学系と美術系の知識をつまみ読みならぬつまみ観する、肩の凝らない方法です。 何であれ、大事なのは習慣化すること。 ずっとやっていることは苦になりません。 定期的に雑誌を買って読むのも同じです。 |
次に必要なのが即戦力となるための実践力です。 30代ですから、ビジネスパーソンとして、将来を見据えた基礎力とともに、当然、実務能力も求められるわけです。 実務能力の中でもまず必要なのがマネジメントとリーダーシップです。 いい仕事をしようと思えば、人を巻き込まなければいけません。 全く人を巻き込まずに成果を上げられる人というのはほとんどいないと思います。 40代は 「出世の10年」 です。 社外から見ても 「これはいい!」 と思える仕事をやり遂げるべき10年間だとすれば、そのためには30代でマネジメントやリーダーシップの力はある程度身につけておきたいものです。 40代になって、いきなり本番はかなり辛いと思います。 では、リーダーシップやマネジメントはどう学べば良いのでしょうか。 大企業であれば、30代では多くの人がまだ管理職になっていないと思います。 例外はあるにせよ、30代の後半から管理職になり始めるというのが一般的ではないかと思います。 だから、マネジメントやリーダーシップ発揮のチャンスはまだそれほど多くないと思います。 ですから、人を動かす経験ができるチャンスがあれば、それがたとえ疑似体験( 例えば研修の場でのまとめ役等 )であっても、積極的に買って出るべきです。 現場の仕事においても、たとえ管理職でなくても、プロジェクトリーダーや新人のお世話役等のチャンスは、その気になればいろいろとあるはずです。 ところが最近、そうした立場を面倒くさがる人が多いようです。 「私はその器ではない」 とか、 「趣味じゃない」 などと言う人もいます。 女性に比較的多いようです。 これはもったいない話です。 たとえ失敗しても、この段階では責任を問われることはありませんから、せっかくのチャンスを活かしてリーダーシップを経験してみましょう。 人に動いてもらうということがどれだけ難しいことかということをわかるだけでも、大収穫です。 一度、肌感覚でリーダーシップを発揮することの難しさや、人をマネジメントすることの面白さがわかったら、関連する図書から学ぶといいでしょう。 本来、マネジメントを学ぶ順番はそうあるべきなのです。 なぜなら最初から本を読んでしまうと、頭でっかちになってしまって、物事の本質を見失う可能性が高まってしまうからです。 いわば予行演習です。 会社における仕事上で学ぶのがベストですが、例えばボランティア活動の中での幹事役等も有益です。 どんなことであれ、人を巻き込んでいく術は経験しておいたほうがいいと思います。 そうこうするうちに、チームリーダーのような公式的な役が回ってきます。 それを嫌がらずにやる。 それも漫然と行うのではなく、しっかりと意識して行う。 経験学習であることを意識して、経験したこと、感じたことを振り返り、内省する。 反省すべき点を反省し、骨太の理論書に当たってじっくりと読み込んで学び直す。 これは自分一人でもできますが、可能であれば、振り返りのための仲間がいるといいですね。 会社は同じでも違ってもいいので、同じようにチームマネジメントにチャレンジしている同年代の仲間です。 悩みの共有をして、お互いの言動をチェックし合う。 相手の知恵をいただき、自分の知恵を提供する。 そうした仲間です。 もしそういう仲間がいなければ、積極的に仲間作りをすることをお勧めします。 |