( 2018.04.12 )

   Facebook


 世界で20億人以上のユーザーを誇るFacebookが大きな騒動を引き起こしている。

 2016年の米大統領選でドナルド・トランプ陣営のデジタル戦略を担ったケンブリッジ・アナリティカという英国のデータ分析会社が、Facebook上で使われる心理テストのアプリの回答者やその友人たちから、個人情報を不正に収集した。 被害に遭ったユーザー数が最大8700万人に上った可能性があり、その情報がケンブリッジ・アナリティカに流れ、大統領選で使われたと指摘されている。

 被害者はほとんどが米国人だとされる。 ただ今回はたまたま米国人の情報を集めただけであって、この問題で浮き彫りになった実態は、日本人の情報を取ろうと思えば、同じようにクイズのアプリを作ったりして取れてしまうということだろう。 事実、誰かにすでに取られてしまっている可能性だってある。

 このニュースを聞いて、 「驚いた」 という人がいったいどれほどいたのだろうか。 というのも、Facebookなどが登録者の個人情報を所有するということは、こうしたサービスが普及し始めてから、欧米ではすぐに話題になったからだ。 そもそも、Facebookなどが個人情報を吸い上げてビジネスをしているという実態はもはや常識だと言っていいのに、 「何をいまさら」 という感が強い。

 今回のFacebookの問題は、背景に、トランプ大統領とロシアの関係が疑われている 「ロシア疑惑」 と、ロシア情報機関に関連する組織がFacebookやTwitterを使い、米大統領選でトランプが有利になるようにフェイクニュースなどをばらまいたという一連の騒動がある。 またテストのアプリの作成にはロシア系米国人が関与している。 だからこそ大騒ぎになっているのであって、個人情報が使われていること、プライバシーが搾取されていることについて、個人的に意外性は感じない。

Facebook


Facebookなどのサービスには膨大な個人情報が利用されている
 3月27日、米CIA( 中央情報局 )のエドワード・スノーデンは、 「いかにFacebookとGoogleがあなたの信頼を不正使用しているかを示す精巧な詳細である」 と投稿し、データコンサルタントの男性の投稿をリツイートした。

 このコンサル男性は、Facebookがいかにユーザーのデータを残しているかを、自分のアカウントを使って明らかにした。 その様子は後日、英ガーディアン紙にも掲載されたのだが、Facebookが所有する彼の情報は膨大だった。

 Facebookには、ユーザー個人の情報をFacebookがどれほど保有しているのかをチェックする機能がある。 こちらがそのリンクだ。 ここから情報をダウンロードすると、自分のメッセンジャーのやりとり、交換したファイル、連絡先などの個人データが全て一括でダウンロードできる。 あなたの情報をFacebookがどれほど集めているかが一目瞭然だ。

 またFacebookは、あなたが 「いいね」 した内容や、あなたや友達が話題にした内容も記録している。 さらに、使っているアプリはもちろん、どこでログインしたかについてのデータを持っている。 もっと言うと、Facebook上で行ったことは全て把握され、記録されてしまっているのである。

 こうした 「自分」 情報の中で、ちょっと違和感があるのは、さまざまな情報を基にFacebookがまとめた 「広告トピック」 だ。 つまり広告を掲示するために、あなたがどんなことに興味があるのかがキーワードでリストアップされている。 それを確認すると、確かに興味のある単語が並んでいる。

 さらにこれよりも気持ち悪いのは、登録したこともないのに、自分が購読している新聞やサービスなどがリストアップされた 「あなたの連絡先情報を持っている広告主」 というものだ。 どこでどのようにこんな情報を手に入れたのか、不思議である。

 もちろんこうしたデータはFacebookしか持っていないものだが、今回のケンブリッジ・アナリティカの疑惑のように、これらの情報が第三者に勝手に渡っている可能性があるとすれば、かなり不快である。

 そもそもFacebookは、そのようなデータなどをベースに広告を掲示し、収益を得ている。 Facebookは収益のほとんどを広告から得ている。 つまり私たちの情報を使ってカネを稼ぎ、その代わりに、人々が楽しむサービスを無料で提供しているのである。 ただそれが別用途で勝手に使われるのは確かに問題だ。


Google


このように、過去に自分がどこをどのように移動したか把握できる
 言うまでもなく、ユーザーの個人情報を使って商売をしているのは、何もFacebookだけではない。

 例えば、Googleだ。 ツイートしたコンサル男性は、Googleがいかに私たちの情報をキープしているのかも解説している。

 それによれば、Googleもまた、私たちのことをかなり詳しく知っていると言える。

 もしスマホの位置情報をオンにしていれば、そのデータは全てGoogleが残している。 まずGoogleアカウントにログインして、こちらのサイトに行き、特定の日付を入れれば、過去にあなたがどこにいたのかを、Googleが教えてくれる。

 こんな情報は、序の口である。 さらに、Googleマイアクティビティでは、あなたがこれまでGoogle検索したキーワードを見ることができる。 傘下のYouTubeには検索履歴を閲覧できる機能がある。 また、こちらのサイトでは、Google上であなたが使っている全てのアプリを確認できる。

 またGmailや文書、PDF、写真、連絡先、ブックマークなどのデータは、こちらに行けば、Googleが残している個人データの全てを一括ダウンロードできる。 この情報をツイートしたコンサル男性の場合、個人データの合計サイズは5.5GBにも上っており、ワード文書に換算すると300万枚に相当するという。 とんでもない情報量である。

 さらには、こちらでは、Googleが広告用にプロファイルするあなたの特徴まで見ることが可能だ。 すごい時代になったものである。

 ただGoogleはこうした個人情報を、今回のFacebookのように流出させてしまったり、国家の世論を操作しかねない不正な企てに悪用されるようなことは今のところない。 あくまで、個人に便利なツールとなるように、個人の意思で情報をキープしているということだ。 確かに私たちは、自分の情報がこのように確認できると知らないだけで、Googleもそれを隠れてやっているわけではない。




 要するに、私たちはこうした情報が日々吸い上げられていることを頭の片隅に置きながら、便利なサービスを利用するべきだということだ。

 以前、米国の著名な専門家2人に取材をして意見を聞いたことがある。 『超監視社会』 の著者で、著名な暗号・セキュリティ研究者であり、現在は米ハーバード大学法科大学院で講師も務めるブルース・シュナイアーは、そもそもIT企業などが個人データを追跡している事実は驚くことではないと述べている。 その上で、 「個人情報を追跡するのがFacebookやGoogleのような企業のビジネスモデルで、それはずっと変わらない。 そうしたユーザーのプライベートなデータを商売に使って稼いでいるのですから」 と語っていた。

 また、著名な米サイバーセキュリティ専門家であるジェフリー・カーにも、ネットサービスとプライバシーについて話を聞いたことがある。 カーは、 「もはやプライバシーというものは存在しないということだ」 と述べ、こう付け加えた。 「ソーシャルメディアで全てを共有して、自らプライバシーを放棄しているのです」

 Facebookのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者( COO )は最近、米NBCテレビのインタビューで、プライバシーが欲しいなら 「有料のサービスになるだろう」 と語っている。

 そう、この言葉に全てが集約されている。 サンドバーグはこのインタビューでも、Facebookがユーザーのプライバシーを利用して商売していることを認めている。 完全な 「プライバシー」 を求めるなら、広告で稼ぐビジネスモデルでは無理で、サービスを有料化するしかない。 それが唯一の答えなのかもしれない。

 ただ有料で利用したいと思う人がどれほどいるのか。 唯一の解決策に乗り出した時こそ、まさにFacebookの終わりの始まりだと言えるのかもしれない。 今回の問題を受けて、Facebookがどのような方針を打ち出すのか注目だ。


 個人情報が吸い上げられていることを頭の片隅に置きながら、便利なサービスを利用するべきだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~