English
英语
영어




 
 


 姿

 
 
 
 



 携帯電話を使用しながら自転車に乗っていた高校生( 当時 )に背後から衝突され、重い後遺障害が残ったとして、神奈川県横浜市内に在住する57歳の女性が、自転車に乗っていた19歳の女性とその父親を相手に損害賠償の支払いを求めていた民事訴訟の判決が横浜地裁で開かれた。 裁判所は女性に 約5000万円 の支払いを命じている。

 問題の事故は2002年9月4日夜に発生している。 横浜市金沢区内の市道を徒歩で帰宅中の原告女性に対し、後ろから走行してきた自転車が衝突するという事故が起きた。 女性は転倒した際に首などを強打。 手足に痺れが残って歩行困難となる後遺障害に悩まされ、職を失っている。

 自転車に乗っていたのは当時16歳の女子高校生で、無灯火走行だった。 しかも事故直前から携帯電話の画面に注視。 前方をまったく見ない状態で自転車の運転を続けていたという。

 25日に行われた判決で、横浜地裁の井上薫裁判官は 「被告の女性は携帯電話に気を取られ、前方に注意を欠いたまま自転車を進行させた」 と指摘した。 その上で 「原告の後遺障害との因果関係も認められる」 として賠償責任が生じることを認めた。 ただし、被告の父親の賠償責任は認めず、結果として約5000万円の賠償支払いを命じている。


 高校生による自転車事故が増加し、それに伴う高額賠償事例も増えてきています。以下に簡単に列挙しておきますので、 「自転車事故でも、こんなに高額の賠償金を払うことになるんだ。 気をつけなくちゃ。」 と、しっかりと認識しておいて下さい。
通学中、歩行者に衝突。被害者には、脊髄損傷による麻痺の後遺障害が残り、賠償金額6,008万円
帰宅途中、街灯のない道で歩行者に衝突し死亡させた。 賠償金額3,912万円
道路右側を走行中、対向進行してきた主婦の自転車と接触し、転倒させ、死亡させた。 賠償金額2,650万円
帰宅途中、無灯火で歩行者に気付かず衝突、死亡させた。 賠償金額1,169万円
帰宅途中、植木の剪定をしていた作業者の脚立に接触、転倒させ、死亡させた。 賠償金額685万円
まだまだありますが割愛します。 ここでは自転車だからと軽く考えないようにすることを肝に銘じておいて下さい。





 自転車対歩行者で事故を起こすと、やはり自転車が不利になります。
 また、自転車事故で書類送検されるケースも増加していますので、自転車の交通ルールをよく確認しておくべきです。
 自転車事故が重く受け止められるようになり、東京・横浜・大阪地方裁判所等の交通事故専門の裁判官によって、2010年3月歩道上での自転車対歩行者の事故の責任は原則自転車側にあるという基準が示されました。
 しかも、自転車運転者が児童や高齢者の場合でも過失の減算がされないと言います。 これにより、自転車側の過失がより重く判断される可能性もあります。
 しかし、あくまでも 「原則」 ですので、歩行者に過失がある場合にそれが全く考慮されないということではありません。
 歩行者にも道交法第2章の義務がありますし、信義則上当然に進路の安全に注意しながら注視して歩行すべきとされていますので、気を付けておきましょう。
 その点、裁判例からみる歩道上の自転車対歩行者の事故で問題となる歩行者の過失について、歩道上の事故 歩行者の過失で簡単に説明します。
 また、ここで 「歩道上の事故の責任は原則自転車側にあり」 が何を意味するのか簡単に触れておきます。
 これは、立証責任が転換されたことを意味します。
 本来、交通事故による損害賠償請求をするためには、被害者が加害者の故意・過失の立証をする必要があります。 自転車対歩行者の事故の場合、加害者が自転車の場合が多いでしょうから、歩行者が自転車の過失を主張・立証しなければならなかったのです。
 それが、歩道上の事故では、自転車側が自分に過失がなかったこと等を主張・立証しなければならなくなった、ということになります。
 それでは、以下でいくつかの自転車対歩行者の事故の高額賠償裁判例を見ていきましょう。

※ 判例に関して
 判例の判断基準は、その後に大きな変更がなければ他の裁判でも考慮されます。
 判例が平成14年のものでも、その後その判断基準に基づいて判断されたもの( 和解等を含む )がありますので、 「過去のものだから現在は意味がない」 とは限りません。
平成10年大阪地裁判決
  事故当時68歳の老女が、交差点歩道上で信号待ちをしていたところ、前方不注視の自転車に乗った事故当時17歳未成年が衝突し、老女が転倒し、大腿骨を骨折し、後遺障害8級の障害を残した事例。
 老女の損害として、約1,800万円 を認容。 このうち、逸失利益は、就労可能年数を約7年として中間利息を控除、約700万円。 実は、この被害者の老女は、加害者の両親にも損害賠償請求していたのですが、判例は17歳の未成年者の両親の責任を否定しました。
平成14年の名古屋地裁判決
  白色実線内を歩行していた老女が、電柱を避けて車道に進出時、無灯火で自転車を運転して対向進行してきた中学生( 当時14歳 )と衝突したケースで、老女が頭部外傷による後遺障害2級の障害を残したものです。
 老女は、中学生の両親に監督責任があったとして損害賠償請求しましたが、裁判所は、加害中学生の責任を肯定するも、事故歴などなく、普段問題行動などなかったことなどから両親の監督責任を否定したものです。
 この判決で、中学生の損害賠償金は、合計 約3,120万円 です。 老女の過失割合15%と既往症の減額20%適用後でも、この額なのですから、自転車の運転には重々注意が必要だということです。
平成17年の横浜地裁判決
  事故当時54歳の看護師女性が、市道を歩行中、事故当時16歳女子高生が、無灯火の上、携帯電話を操作しながら片手運転していた自転車に追突された。 被害者女性は、手足に痺れが残って歩行困難になり、職も失った事例。
 裁判所は、加害者女性( 判決時19歳 )に 約5,000万円 の支払いを命じた。 被害者女性は、加害者の父親にも損害賠償請求していたのですが、やはり父親の責任は否定されました。
平成17年の大阪地裁判決
  事故当時53歳の女性が、ビルの敷地を歩行中に同僚に声を掛けられ、向かいの道路に横断するために敷地内の植込みの間から、公開空地である歩道上に歩いていた際に、業務中の男性と衝突して転倒し、腰椎を骨折し、後遺障害併合10級及び腰部脊柱変形の障害を残した事例。
 損害として、約808万円 を認容。 被害者の女性は、植込みの間から出る際に左右の安全確認をしなかったものとされましたが、特に走ることもなく、公開空地という歩道上で衝突したため、歩行者に過失相殺を認めず、自転車が100%悪いと判断されました。
 なお、ここで問題となっている植込みは高さが低く、自転車側に前方不注視がなければ歩行者に気付かないといったことはないとされたための過失判断です。 この点、もし歩行者が隠れていて気付きにくい状況であった場合には、歩行者に10~20%の過失を認定した判例も結構ありますのでご注意下さい。
平成25年の神戸地裁判決
  神戸市北区で2008年9月、当時小学5年生だった少年( 15 )の自転車にはねられて意識不明の状態が続いている女性( 67 )の夫と、保険金を支払った損害保険会社が、少年の母親に計約1億590万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が4日、神戸地裁であった。
 田中智子裁判官は 「自転車の運転に関する十分な指導や注意をしていたとはいえない」 として、計約9,520万円 の支払いを命じた。
 判決によると、少年は自転車で帰宅中、歩道のない下り坂で正面から歩いてきた女性と衝突。女性は頭などを強く打ち、今も寝たきり状態が続いている。
 判決で田中裁判官は 「少年の前方不注視が事故の原因」 と認定。 兵庫県警の鑑定書で、自転車の速度が時速20~30キロと速かったことなどを挙げ、 「母親の指導は奏功しておらず、監督義務を果たしていなかった」 と指摘し、 「危険な運転ではなかった」 などとする母親の主張を退けた。
 そのうえで、女性の成年後見人として提訴した夫に 約3,520万円、保険会社に 約6,000万円 をそれぞれ払うよう命じた。





( 2013.07.13 )
母親驚愕
 

 5年ほど前、この坂道で事故は起きた。 小5男児の自転車と女性が衝突し、女性は今も意識が戻らず寝たきりの状態。 男児の母親に命じられた賠償金は9500万円に上った。

 当時小学校5年生だった少年( 15 )が乗った自転車と歩行者との衝突事故をめぐる損害賠償訴訟で、神戸地裁は、少年の母親( 40 )に約9500万円という高額賠償を命じた。 5年近く前に被害に遭った女性( 67 )は、事故の影響で今も寝たきりで意識が戻らない状態が続いているだけに、専門家は高額賠償を 「妥当」 と評価する。 ただ、子を持つ親にとって、1億円近い賠償を命じた今回の判決は、驚愕でもあり注目を集める。 9500万円の内訳はどうなっているのか。 一方で、保険加入義務がない自転車の事故をめぐっては、高額な賠償命令が出されるケースも多く、自己破産に至る例も少なくないという。 こうした中、自転車の保険制度拡充を目指した動きも出始めている。




 事故は平成20年9月22日午後6時50分ごろ、神戸市北区の住宅街の坂道で起きた。 当時11歳だった少年は帰宅途中、ライトを点灯しマウンテンバイクで坂を下っていたが、知人と散歩していた女性に気づかず、正面衝突。 女性は突き飛ばされる形で転倒し、頭を強打。 女性は一命は取り留めたものの意識は戻らず、4年以上が過ぎた今も寝たきりの状態が続いている。

 裁判で女性側は、自転車の少年は高速で坂を下るなど交通ルールに反した危険な運転行為で、母親は日常的に監督義務を負っていたと主張し、計約1億590万円の損害賠償を求めた。

 一方、母親側は少年が適切にハンドル操作し、母親もライトの点灯やヘルメットの着用を指導していたとして過失の相殺を主張していた。

 しかし、判決で田中智子裁判官は、少年が時速20~30キロで走行し、少年の前方不注視が事故の原因と認定。 事故時はヘルメット未着用だったことなどを挙げ、 「指導や注意が功を奏しておらず、監督義務を果たしていない」 として、母親に計約9500万円の賠償を命じた。




 高額な賠償となった9500万円の内訳はどうなっているのか。

  ( 1 ) 将来の介護費約3940万円
  ( 2 ) 事故で得ることのできなかった逸失利益約2190万円
  ( 3 ) けがの後遺症に対する慰謝料2800万円

 などとされている。

 田中裁判官は、(1) について、女性の介護費を1日あたり8千円とし、女性の平均余命年数を掛け合わせるなどして算出。 (2) は、専業主婦の女性が入院中に家事をできなったとして月額約23万円の基礎収入を平均余命の半分の期間、得られなかったなどとして計算した。

 これらに治療費などを加え、母親に対し、女性側へ約3500万円、女性に保険金を払った保険会社へ約6千万円の支払いを命じた。 特に女性が意識が戻らぬままとなっていることで、慰謝料などが高額となり、賠償額が跳ね上がった。

 交通事故弁護士全国ネットワークの代表を務める古田兼裕弁護士( 第2東京弁護士会 )は、今回の判決について 「高額な賠償額だが、寝たきりで意識が戻っていない状況などを考えると妥当」 と評価。 ただ、 「自転車だから責任が軽くなるとはいえないが、11歳の子供の事故で親がどれほど責任を負うかはもっと議論していく必要がある」 と話す。




 自転車事故で高額の賠償が求められたケースは少なくない。

 横浜市金沢区で携帯電話を操作しながら、無灯火で自転車を運転していた女子高校生が女性に追突した事故では、女性は歩行困難になり、看護師の職を失った。 横浜地裁は17年11月、女子高校生の過失を認め、5千万円の支払いを命じた。

 また、大阪地裁が8年10月、夜間に無灯火で自転車を運転していた男性が、短大非常勤講師をはねた事故で、男性に損害賠償2500万円の支払いを命じるなど、自転車事故による高額賠償命令は以前から出されている。

 古田弁護士は 「自転車でも過失があれば、しっかり賠償しないといけないが、自転車利用者の多くは保険に未加入で、自己破産する例も少なくない」 と指摘する。

 自転車の普及推進や啓発活動をしている財団法人 「日本サイクリング協会」 ( JCA )によると、全国の自転車の保有台数は7千万~8千万台で、うち約3千万台が日常的に利用されているとみられる。 しかし、自転車の保険加入率について、JCAは 「統計がないため把握し切れていないが、10%に満たないのではないか」 との見解を示す。

 自動車の場合、自賠責保険の加入が義務付けられている。 「損害保険料率算出機構」 の統計では、任意保険の加入率についても、対人賠償保険、対物賠償保険いずれも73.3%と高水準となっている。

 一方で、自転車の保険は加入義務がなく、JCAは 「自賠責保険のように保険加入を義務付けるなど、制度を整備しないと不幸は繰り返される」 と警鐘を鳴らす。




 警察庁の統計によると、交通事故発生件数は16年の約95万件をピークに年々減少し、24年は約66万件まで減少した。 同じ期間中で、自転車側に過失がある事故は、年間約18万件から約13万件に減った。 ただ、自転車と歩行者の事故は年間約2500~約3千件で推移。 交通事故全体に占める割合は増加傾向にある。

 こうした状況について、JCAは 「自転車はエコで手軽といういいイメージが先行しすぎて、教育が行き届いていないことが原因」 と分析する。

 JCAは、会員に対して特典という形で、事故による賠償命令が出た場合に5千万円を補助している。 しかし、自転車事故による高額賠償命令が後を絶たないため、保険活動を主体とする別組織の創設を検討し始めている。 JCAは 「保険の拡充を検討しているが、ルールやマナー無視をなくすことが最も必要。 『自転車は危険なんだ』 と認識しないといけない」 と訴えている。





( 2013.07.22 )
9,
 

 自転車で女性をはねた小学5年生( 当時 )の男児の母親に、約9500万円の賠償を命じる判決が7月上旬、神戸地裁であった。 報道によると、事故は2008年9月、神戸市で発生。 マウンテンバイクに乗って坂道を下っていた男児が、散歩中の女性( 67 )をはねた。 女性は頭を打ち、現在も意識は戻っていないという。

 判決は、少年の前方不注意が事故の原因だと指摘。 事故を起こしたときの自転車の速度が時速20〜30キロだったという警察の鑑定書などを根拠に、母親の指導は不十分で 「監督義務を果たしていなかった」 と、母親の責任を認めた。 女性の介護費などを考慮し、女性側へ約3500万円、保険会社へ約6000万円の賠償を命じた。

 今回の莫大な損害賠償額はネットでも注目を集め、 「これからは自転車保険に加入しなきゃな」 といった声もあがった。 自転車事故での賠償額はどのようにして計算されるのだろうか。 また、もし支払いを拒んだ場合にはどうなるのだろうか。




「自転車は、道路交通法で定められた車両の一つで、分類上 『軽車両』 となっています。 よって、自転車を運転する際には、自動車同様、道交法上のさまざまなルールを守って走行しなければなりません。 また、自分の行動によって生じる法的責任をきちんと理解できないような子どもについては、その保護者がルールを教え、注意を払って運転させなければなりません」
―― つまり、今回のようなケースでは、母親に責任がある?
「そうですね。 母親が事故の責任を負う ── ここまでは、皆さんも違和感をお持ちにならないのではないかと思います。 どちらかといえば、その金額の大きさに驚かれた方が多いのではないでしょうか」
―― 自転車事故でこれほど多額の賠償が発生するケースはある?
「実は、損害賠償額は、被害者の被った損害を法的に評価して算出します。 自転車だからといって、自動車と区別されて低くなるわけではありません。 今回の判決のように9500万円の支払額になることも珍しくありません」
―― なぜ、そんなに高額になる?
「被害者の方が死亡されたり、高度の障害を負われたりした場合には、現実に支払った治療費や通院治療に対する慰謝料だけでなく、将来の収入補償や介護費、介護のための自宅改造費等も賠償額に含まれることになります。 高額の慰謝料( 後遺障害等級1級や死亡時の場合には約2800万円 )も認められます。 自転車は気軽で手頃な乗り物ですが、場合によっては巨額の賠償金請求を受けるリスクを常にはらんでいるわけです」
―― もし 「支払えない」 と言ったらどうなる?
「いったん賠償を命じる判決が出されたら、支払う義務が生じます。 仮に支払いを拒めば、所有する不動産や預貯金などが差し押さえられたり、給料が差し押えられたりなどの強制執行手続を受けることになります」
 これほど高額の賠償も決して珍しくはない ──。 自転車に乗る人やその保護者は、自分が負っている責任の大きさを再認識する必要がありそうだ。 自転車を頻繁に使う人は、万一に備えて、自転車保険への加入なども考えてみるべきなのかもしれない。





( 2018.09.03 )

   


 街中を歩いていると、毎日のようにスマートフォンを操作しながら運転する自転車とすれ違う。 しかし、これがいろいろな意味でいかに危険な行為かご存じだろうか。 自転車の 「スマホ運転」 を巡っては8月、2件の死亡事故が大きなニュースになった。 1件は元女子大生の有罪判決、もう1件は男子大学生の書類送検だ。 いずれも人命を奪ったが故に重大な刑事事件に発展した案件で、2人の人生にも暗い影を落とす結果となった。 なぜこれだけ問題になってもスマホ運転はなくならないのか。 その危険性を検証してみる。

1

 軽い気持ちでつい …… の 「ながらスマホ」、自転車で死亡事故も起きています。

 元女子大生( 20 )の判決は8月27日、横浜地裁川崎支部で言い渡された。 罪状は重過失致死罪、主文は禁固2年、執行猶予4年( 求刑禁固2年 )だった。

 判決によると、元女子大生は昨年12月7日午後3時15分ごろ、神奈川県川崎市麻生区の歩行者専用となっている商店街の市道で電動アシスト自転車を運転 し、歩行者の女性( 当時77 )にぶつかって2日後に脳挫傷で死亡させた。
 元女子大生は事故前の少なくとも約30秒間、イヤホンで音楽を聴きながら、飲み物を持った右手でハンドルを握り、左手でスマホを操作しながら走行。 スマホでメールのメッセージ送受信を終えた後、ズボンのポケットにしまう動作に気を取られ、事故を起こしたと認定された。

 裁判長は判決理由で 「周囲の安全を全く顧みない自己本位な運転で、過失は重大」 と厳しく断罪。 弁護側は 「悪質性の低い脇見運転」 と主張したが、判決では 「前方を注視しないばかりか、危険を察知してもブレーキを掛けられない状態だった。 『脇見運転』 と矮小化する主張は論外」 と受け入れなかった。

 元女子大生に執行猶予が付いた理由は、家族が加入する損害保険で賠償が見込まれる点、公判で 「同じ過ちはしません」 と述べるなど謝罪し反省している点、そして大学を中退するなど既に社会的制裁を受けている点だ。

 この判決には、実は大きな教訓が3つ含まれている。 1つは今回のスマホ運転の罪状が一般的な交通事故に適用される 「過失致死罪」 ではなく、より重い 「重過失致死罪」 だった点、もう1つはもし家族が損害保険に入っておらず遺族に賠償できなかったら実刑だった可能性がある点、もう1つは被告が大学の退学に追い込まれた点だ。

 それぞれ平たく言うと、スマホ運転は刑事上で一般的な車の死亡事故などより悪質とみなされ重い罪に問われること。 今回は家族に助けられたが1つ間違えば囚人服を着ていた可能性があったこと。 そして最近まで青春を謳歌していた女子大生が一転して 「前科1犯、無職」 になり、事件当時に成人していたため実名報道され、望んでいたような就職もほぼ見込めないという、極めて厳しい現実だ。




 一方、男子大学生( 19 )のケースはどうか。

 茨城県警が8月2日付で水戸地検土浦支部に書類送検した容疑は元女子大生と同じ 「重過失致死罪」。 送検容疑は6月25日午後8時45分ごろ、つくば市の道路でマウンテンバイクを運転中、団体職員の男性( 当時62 )を正面からはね、頭部強打により翌日死亡させたとされる。 男子大学生は送検後、未成年であることなどから、水戸家裁土浦支部に送致された。

 調書や弁解録取などによると、男子大学生は事故当時、マウンテンバイクを運転しながらスマホを操作していた上、無灯火だったとされるが、警察発表によると 「そもそもバイクにライトが取り付けられていなかった」 という。

 男子大学生は事故当時、両耳にイヤホンを着け、時間を確認しようとスマホを操作しており、前方にいた男性に気付かなかったと供述している。 実際に事故後、男性宅を訪れて妻( 62 )に謝罪し、スマートフォンを見ながら運転していたと正直に説明したという。

 ここで問題になるのは、刑事でも、民事の賠償能力に応じて処分が変わってくる点だ。 被害者の男性は松田長生さんで、農業と食品産業の研究開発 「国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構」 ( 農研機構 )果樹研究所の所長を務めていた。

 生命に 「軽い」 「重い」 がないこと、生命に価格をつけられないのは当たり前だが、司法的には 「遺失利益」 という概念が存在し、事故で死亡しなければ 「その後の生涯でいくらの資産を残せたか」 が具現化される。

 前述の元女子大生は民事的な賠償が可能だから執行猶予になったが、この男子大学生はどうか。 未成年による事件であるため情報が限定的だが、条件が揃わなければ元女子大生より重い判決になる可能性さえあるのだ。

 そして、無灯火( しかもライト無装着 )は情状として厳しい。 元女子大生の判決との整合性を考えると、公判請求された場合、罪を軽くするため弁護人にはある程度の説得力がある 「ひねりを入れた論旨」 が必要になる。




 警察庁によると、昨年1年間にスマホなどを含む携帯電話を使用していた自転車事故は明らかになっているだけで全国45件発生。 統計を取り始めた2007年の13件から3倍以上に急増した。

 内訳はSNSやポケモンGOなどのゲームによる 「画面の注視」 が29件で半数以上、次いで通話で4件、着信に対する反応で11件 ―― などだ。 最近では東京都豊島区で5月、自転車で電動車いすの50代女性をはね、首の打撲で1ヵ月の重傷を負わせ重過失致傷で10代の男性を書類送検したケースなど、自転車のスマホ運転による事故は珍しくもないことが分かった。

 一方、自転車だけではないが、東京消防庁ではスマホが関わる事故による救急搬送件数が急増している。 「自転車」 「歩きながら」 で取った統計では年々、上昇傾向にある。 自転車と同じぐらいに危険なのは鉄道駅で、階段やホームに突き落とされたり、足を踏み外して転落するケースだという。 いずれも命の危険に直結しかねない事態だ。

 元警視庁捜査2課刑事で現役時代は主に贈収賄を手掛け、引退後は交通安全協会などで若手巡査を指導する元警部補に以前、話を聞いたことがあった。 映画やドラマ 「踊る大捜査線」 で故・いかりや長介さんが演じた和久平八郎みたいな立場と言えば分かりやすいだろうか。

 実際に、ながらスマホで自転車運転をやってみたらしい。 「怖いぞ。 目をつむってんのと同じよ」。 視野は 「気配」 以外、分からなかったそうだ。 結果、警察の施設内で人生初の “重大事故” を起こしていた。 右肩に青あざと擦り傷が残っていた。

 「前科1犯、元大学生」 の無職女性は公判で、大学で保育士の資格を取り、社会の役に立ちたかったと夢を語っていた。 「そんな悪いことだと思わなかった」 という軽はずみな行為は人命を奪い、自身の将来を絶望的なものにしてしまった。

 そして 「勉強は続けたかったが、人の命を奪って人の命を預かるような仕事はできない」 と声を震わせた。

 この元女子大生の後悔と慟哭が、無自覚で無防備な方々に伝わるよう、そして教訓になるよう、心の底から切に願う。





暴走自転車ではないが、自転車絡み で


 


 運転しているだけでも疲労困憊こんぱいし、睡魔に襲われる未明の高速道路。 そんな状態で突然、空から自転車が降ってきたら、反応できるだろうか。 とっさにハンドルをきってよけられるだろうか。 一瞬のうちに 「死」 が頭をよぎるかもしれない ──。 兵庫県川西市の中国自動車道上り線で10月、高さ11メートルの陸橋から自転車2台が相次いで投げ込まれた。 殺人未遂容疑で逮捕された少年4人は 「殺そうと思ったわけじゃない」 「悪ふざけだった」 と話す。 しかし、軽い気持ちでやった行為でも、大量に死傷者を出す重大事故を引き起こしかねず、行為の結果は 「殺人未遂」 に問われる。 少年たちにはそんな当たり前の想像力もなかったのだろうか。




 10月14日午前1時55分ごろ、トラック運転手の男性は、通い慣れた中国道を走行中、目の前の光景が信じられなかった。 「自転車が降ってきた」。 1台目の自転車が投げ落とされた約10分後、狙いすましたように2台目が後続の乗用車のフロントガラスめがけて落下してきた。

 いずれも運転手のとっさの判断で大事には至らなかったが、トラックや乗用車など計7台が次々に自転車に接触したり、乗り上げたりした。

 兵庫県警は当初、けが人がいなかったことから、器物損壊事件として捜査。 しかし、走行中のトラックを狙って自転車を投げ落とし、その状況を確認した後に再び投下していることを重視。 さらに、自転車を急ハンドルで避ける車の様子が映っていた高速道路の監視カメラ映像などから、死亡事故になる危険性を十分に認識していたと判断し、殺人未遂容疑に切り替えて捜査した。

 捜査関係者は 「どう考えても悪ふざけの域を越している。 死人が出ていないのは運が良かっただけ」 と眉をしかめる。 11月24日未明には県警捜査1課が主導して、陸橋から自転車をロープでつるし、投げ落とす様子を再現する現場検証を実施。 10日後の4日には、高速道路に自転車を投げ込んだとして、同容疑で少年4人を逮捕した。




 逮捕されたのは、川西市のアルバイトの少年( 19 ) ▽同市の職業不詳の少年( 17 ) ▽宝塚市の無職少年( 16 ) ▽同市に住む私立通信制高校の男子生徒( 16 ) ── の少年4人。 地元の遊び仲間だという。 うち1人が、バイクの無免許運転で現行犯逮捕されたことなどがきっかけで、事件に関与したとして浮上した。

 県警によると、逮捕時、アルバイト少年や男子生徒、無職少年は 「悪ふざけだった」 「殺すつもりはなかった」 などと殺意を否認した。 職業不詳の少年は 「そんなことはやってない」 と投げ込み行為自体を否認した。

 投げ込まれた2台の自転車は、現場近くの駐輪場などから盗まれていた。 投げ込んだ際についたのか、少年らの指紋が検出されているという。

 捜査関係者は 「犯行自体は悪質だが、手袋も使わず、痕跡を隠そうとする様子はみられないほどずさんだ。 本当に警察が捜査するとは想像していなかったのだろう」 と推測する。

 事件の4日前にも、同じ陸橋から投げられたとみられる自転車1台にトラックが接触したほか、現場から約100メートル西の陸橋に掲げられた啓発用横断幕のひもが切られており、県警は関連を調べている。




 全国各地の高速道路などで、自転車やコンクリートブロックが投げ込まれる事件 は後を絶たない。 中には今回と同様に、殺人未遂事件として立件されたケースもある。

 平成17年11月、静岡県磐田市では、国道1号バイパス上の橋から自転車などが投げ落とされ、走行中の車やトラック計4台が破損した。 事件後、少年3人が 「面白半分でやったが、報道を見て怖くなった」 と保護者と一緒に出頭し、器物損壊容疑で逮捕された。

 20年9月には、埼玉県羽生市の東北自動車道で、陸橋から重さ約20キロのコンクリートブロックが投げ込まれた。 走行中のトラックの前部にぶつかり、助手席の男性会社員が重傷を負った。 殺人未遂容疑で35歳の男が逮捕された。

 今年9月にも、茨城県稲敷市の首都圏中央連絡自動車道に架かる陸橋から、コンクリートブロックや木のくいが投げ落とされ、走行中のトラックが破損した事件があった。 男子中学生3人が11月、道交法違反容疑などで書類送検された。 「面白半分でやった」 と話していたという。

 ある捜査関係者は 「少年が面白半分にいたずら行為をし、犯罪になるケースは多い」 と 指摘。 「人が死ぬかもしれない危険な行為は、もはや悪ふざけではすまされない。 れっきとした犯罪だということをわかってほしい」 と話した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~