![]() これは座って姿勢を変えるだけで便秘に効くというふれこみの椅子で、米国では大評判。 売り上げ18億円超の大ビジネスとなっているようだ。 便秘に限定して考えれば、サプリの類ではなくグッズである点が新しい。 上記商品の日本上陸は現時点では未定で効能のほども定かではないが、日本でも便秘に効くとうたうクスリやサプリの広告は日に何度も目にする。 それほど便秘に悩む人が多いということでもある。 すべての病気にいえることだが当事者以外にその辛さを理解させるのは難しい。 とくに便秘や肩こりあたりは当事者の数が多く、悪くいえばありふれているし、軽い症状で済む人もいるので余計に困難だ。 周囲の人に悩みを理解してもらえない 便が出ないだけで何が困るの? 下痢よりましでしょ? といった症状に関する誤解がある。 さらに、 野菜を食べてないんでしょ? 運動してないんでしょ? 「生活習慣」 のせいなんでしょ? つまり 「自己責任」 でしょ? とまあ、ここまでエスカレートする例は稀としても、無理解も多いはずだ。 そもそも便秘とは、便中の水分が少ないため硬くなったり、便の通り道である腸管が狭くなることで、排便が困難または回数が著しく減った状態のことである。 日に1回から2回の排便があるのが通常だが、仮にその頻度が多少低くても本人が特に苦痛を感じない場合は便秘とはみなされない。 逆に毎日排便があっても硬い便で量も少なく残便感があったり、排便そのものに苦痛がある場合は便秘とされる。 イライラするのは便秘のせいかも さらに便秘により腸内に便がとどまり続けること自体も、心身にさまざまな悪影響を与える。 腸内にいわゆる悪玉菌が増殖する、骨盤内の血行ひいては全身の血行が悪くなる、自律神経の働きが乱れるなどが主なところだ。 自律神経の乱れは頭痛、めまい、のぼせ、冷え、痛み、イライラなどどんな症状を引き起こしてもおかしくない。 硬い便は痔などのトラブルを招くこともある。 そのうえで血行障害による肩こりや腹部の不快感、残便感などがあるのならかなり重症の 「ありふれた病」 である。 女性がなりやすい 便秘は一般に女性に多いとされるが、これは俗説ではなく事実だ。 女性ホルモンのひとつである黄体ホルモンには大腸のぜん動運動を抑える働きがあるのだ。 このホルモンの分泌量が増える月経前にはさらに便秘になりやすくなる。 一般的に女性のほうが男性より筋力が弱い。 内臓を支える力も弱いので、胃下垂などの内臓下垂が起こりやすく、下垂した臓器に腸が圧迫されることで便秘になりやすいとも考えられている。 またいわゆる 「ふんばる力」 にも筋力が必要だ。 起床後に冷たい水を 対策には 「生活習慣の改善」 と 「通院」 がある。 前者は 「規則正しくストレスの少ない生活、バランスのとれた食事、適度な運動、じゅうぶんな睡眠」 というすべての病に共通するものだが、なかでも最も手をつけやすい食事について語られることが多い。 よく知られたことだが食物繊維を多く含む食品を摂るのはやはり重要だ。 食物繊維には便の量を増やし、排便のリズムを回復させる働きがある。 食物繊維を多く含む食品には、緑黄色野菜、ごぼう、さつまいも、大豆、ひじきなどがある。 冷たい水や冷たい牛乳には胃や腸の反射を促す効果があるので、特に起床後などに飲むとよい。 「生きた菌」はイメージ戦略 余談だが、何が便秘に効くか腸に良いかについては、情報が錯綜している面もある。 例えば食物やサプリで摂った乳酸菌やビフィズス菌の類は生きて腸まで届き 「腸内環境を整える = 万病に効く」 とされる。 しかし、 乳酸菌は胃酸で死ぬのでは? 酸素を嫌うビフィズス菌がどうやって腸まで届くのか? といった疑問が常に呈されてきた。 これについては胃酸に強い菌の開発が進んでいる、加えて大量摂取により一部が必ず生きてたどりつく、といった説明が一般的だ。 またビフィズス菌は体内の酸素の多い部分を冬眠のような状態で通り抜け、酸素濃度の低い小腸の奥や大腸で活性化するのだという。 そもそも 「生きた菌」 を強調するのはイメージ戦略であり、実際には死んだ菌であってもその成分や生成物に一定の効果があるとする研究もある。 便秘と下痢を交互に繰り返したら要注意 食生活については一般的に便通に良いとされるものを適度に飲食していればよいということだろう。 ただし多くの便秘と異なり、精神的ストレスが主な原因とされ、腸の機能が活発になりすぎ、便秘と下痢を交互に繰り返す傾向のある 「痙攣性便秘」 などには、食物繊維や冷たい水などは逆効果になってしまう。 下痢と便秘のサイクルを強化するだけだ。 このように食生活を大幅に改善しても症状が良くならない場合、自分の便秘は何なのか見極める必要がある。 内臓に根本的な疾患があるか、精神的なストレスが主な理由である可能性もあるからだ。 便秘専門の診療科もある これまで便秘治療の受け皿となってきたのは胃腸内科、消火器内科、肛門科といったところだ。 近年は便秘治療に特化した 「便秘外来」 が生まれテレビのバラエティ番組などで紹介される機会も増えた。 もちろん自分の便秘が 「普通の便秘」 だと考えている人も、慢性的に症状が続いて辛いのなら受診も考えていいだろう。 受診内容は血液検査、内視鏡検査から食生活の指導や排便習慣の改善まで多岐にわたる。 場合によっては患者に合うタイプの下剤が処方されることもある。 下剤には常用性があるので、結果的には便秘を悪化させるともいわれるが、病院の薬物療法はあくまで医師の管理下で行われるので、その点は安心だ。 これだけ便通に関わるサプリが流通しているということは、もはや便秘を生活の一部にしている人も多いということだ。 割り切って一生つきあうのもいいが、便秘を 「病気」 と考えればまた違った展開があるかもしれない。 参考URL: |