ご飯やパンなど糖質の多い食生活が肥満・糖尿病、そしてさまざまな生活習慣病の根本要因になっていることをご存知でしょうか。では、どうすれば 「普段の食生活」 を 「糖質オフの食生活」 に変えられるのでしょうか。




 糖質制限食の原則は、血糖値を上げる糖質をできるだけ控えて、食後高血糖を防ぐというものです。 簡単にいえば、主食を抜いておかずばかり食べるということです。

 抜く必要がある主食とは、米飯・めん類・パンなどの米・麦製品、ジャガイモ・サツマイモ・里イモなどのイモ類など、糖質が主成分のものです。 もちろん糖質制限ですから、甘いお菓子・ケーキ・ジュース、それに煎餅・おかきなどもNGです。

 一方、糖質さえ制限すれば脂質やタンパク質はしっかり摂っていいので、肉や魚はお腹いっぱい食べられます。 焼酎・ウイスキー・ブランデーなどの蒸留酒、辛口ワイン、糖質ゼロの発泡酒なら、お酒を飲んでもOKです。

 カロリー制限食でお腹を空かして難行苦行に耐えることに比べれば、とてもラクに実践できます。

 糖質制限食は人類の健康食なので、太った人は減量できて、やせすぎた人は適正体重に戻ります。 8~9割の人は、普通にお腹いっぱい食べて、カロリー計算はいりません。




 ほとんどの人はカロリー制限なしで減量に成功するのですが、 「糖質制限食を実践してもなかなかやせない」 という人がたしかに数パーセントおられます。

 世の中には、やせやすい人とやせにくい人がいるというのは間違いないようですが、その大きな要因として基礎代謝があります。 基礎代謝というのは、何もせずにじっとしていても最低限必要になるエネルギーのことです。

 吉田俊秀先生(京都府立医科大学臨床教授・肥満外来)によれば、日本女性の平均基礎代謝量は1日約1200キロカロリーですが、個別に見ると600~ 2400キロカロリーと、かなりのバラツキがあるそうです。

 基礎代謝が800キロカロリーしかなければ、1日の食事を1200キロカロリーの低カロリーにおさえても、なかなかやせないことは理解できますよね。

 基礎代謝が低い人には 「倹約遺伝子」 の持ち主が多いようです。 米国のピマインディアンから基礎代謝を低くする遺伝子が見つかっており、それが 「倹約遺伝子」 と呼ばれています。

 食糧事情がきびしかった時代には、基礎代謝が低いほうが少ないカロリーで生きられるので、効率的だったわけです。 ところが、飽食の時代になるとその体質がマイナスに働き、ピマインディアンの間では肥満の増加が深刻な問題になっています。

 こうした倹約遺伝子の持ち主の場合、女性で1日1200キロカロリーの糖質制限食でもやせにくいことがあり、 「糖質制限食+カロリー制限食( 1000キロカロリー )」 が必要となります。

 日本人にはこの倹約遺伝子の持ち主が数パーセントおられると思います。 女性なら1日1000~1200キロカロリー、男性なら1400~1600キロカロリーが1つの目安です。

 さらに、数パーセントほど大食タイプの人がおられます。 無糖ヨーグルト500g入りを1日2~3個食べても平気とか、ステーキ400gなんて楽勝とか、タマネギ中玉( 200g )2個くらいなら炒めたら簡単とか ……。

 こういう大食漢の方々には、カロリー制限までしなくても、普通のカロリーを心がけることが大切です。 女性なら1日1200~1600キロカロリー、男性なら1600~2000キロカロリーが1つの目安と説明しています。




 糖質制限食に面倒な計算はいりません。 糖尿人の場合は、食後高血糖を防ぐために1回の食事の糖質量を20g以下におさえる必要がありますが、それ以外の方々はいちいち糖質量を計算しなくてよいのです。

 一番大切なのは、糖質が多い食品をあらかじめ把握しておき、そうした食品を避けるようにすることです。

 米飯やパンなどの主食系は糖質が多いとすぐにわかりますが、野菜でもカボチャやニンジンなど糖質の多いものがあるので要注意です。 海藻類では、昆布だけは100g中に30gくらいの糖質が含まれているのでNGです。 しかし昆布だしは大丈夫です。

 牛乳は100ccあたり5gの糖質で、厚生労働省の低糖質食品に相当するのですが、ガブガブと200~300ccくらい平気で飲む人がいるので要注意です。 料理に牛乳を100cc使用して4人家族で一緒に食べたり、コーヒーに牛乳を10cc入れたりくらいなら、問題ありません。
果物の糖質量( 可食部100g当たり )
果物名100g当たり
糖質( g )
100gの
およその目安
アドガボ0.92 / 3 個
いちご7.17 粒
パパイア7.31 / 2 個
レモン7.61 個
夏みかん8.81 / 2 個
もも8.92 / 3 個
びわ9.02 個
グレープフルーツ9.01 / 3 個
すいか9.21 / 50 個
メロン9.91 / 6 個
はっさく10.01 / 3 個
なし10.41 / 3 個
いよかん10.61 / 2 個
うんしゅうみかん11.01 個
ネーブル11.81 / 2 個
パイナップル11.91 / 7 個
いちじく12.41 個
西洋なし12.51 / 3 個
りんご13.11 / 2 個
キウイフルーツ13.21 個
さくらんぼ14.010 個
14.31 / 2 個
ぶどう15.110 粒
バナナ21.41 / 2 個

 次に、果物の糖質含有量を整理してみました。 表の数値は、果物可食部100g当たりの糖質含有量です。 果物に含まれている糖質は果糖・ショ糖・ブドウ糖・糖アルコールなどです。

 例えば、リンゴ1個( 約240g )は約150キロカロリーで、ビタミンC含有量は8mg、遊離糖含有量は35.6g( 果糖18g、ブドウ糖6g、ショ糖9.6g、ソルビトール2g )、水溶性食物繊維含有量は0.95g、不溶性食物繊維含有量は2.95gです。

 もちろん、果物の種類によって果糖・ブドウ糖・ショ糖・糖アルコールの比率は異なりますが、このうち果糖は10%くらいしかブドウ糖に変わらないので、ほとんど血糖値を上昇させません。

 そのため、果物の糖質のうち半分が果糖と仮定すれば、穀物の糖質に比べると血糖値は上がりにくいといえます。 穀物のでんぷん1gが血糖値を3mg上昇させるとすれば、果物の糖質1gは約半分の1.5mg上昇させると考えられます。

 細かいことをいえば、ソルビトール( 糖アルコール )はブドウ糖の半分くらい血糖値を上げますし、ショ糖は 「ブドウ糖+果糖」 です。 けれども大ざっぱにはこの計算でよいでしょう。

 厚生労働省の低糖質食の定義が 「100g中糖質5g以下」 です。 そうすると100g中の糖質が10g以下の果物は、血糖値の上昇に関しては100g食べてもおおむね大丈夫と思います。 果物の糖質量が1回に10g程度なら、血糖値の上昇は約15mgですむ計算です。
 100g中の糖質が13gや14gのリンゴやさくらんぼも、食べるとき糖質の計算だけしておけば、どのくらい血糖値が上がるのか予測できますから、それを承知の上で適宜食べればいいと思います。

 なお、バナナには糖質に加えてでんぷんも多く含まれているので、とくに糖質含有量が多いです。 でんぷん分は、他の果物より血糖値を上昇させます。


使

 糖質制限食には3つのやり方があります。

 1つめは 「スーパー糖質制限食」 で、朝・昼・夕とも主食なしです。 1日を通して糖質を控えるので、血糖値は上がらず、インスリンの追加分泌はほとんど出ません。 そのためダイエット効果や生活習慣病などの予防効果がもっとも高く、それまでとはまったく異なる代謝リズムになります。

 2つめは 「スタンダード糖質制限食」 で、1日3食のうち1回の食事だけは主食を摂り、残りの2回については主食を抜きます。 主食を摂るのは朝でも昼でもよいのですが、夕食はお勧めできません。 なぜなら、夕食後に就寝すると脳も筋肉も活動しないので血糖値が下がりにくく、インスリン( 肥満ホルモン )によって脂肪が蓄えられやすいからです。

 3つめの 「プチ糖質制限食」 は、1日3回の食事のうち、夕食だけ主食を抜くようにします。 朝・昼は適量の糖質を摂れるので実行はかなりラクですが、スーパーなどに比べれば改善効果はどうしても低くなります。

 この3つのやり方を、病気や症状によって適宜使い分けるようにします。

 糖尿人にはもちろん、スーパー糖質制限食が一番のお勧めです。 サラリーマン諸氏で昼食が定食とか弁当しかないときは、スタンダードでもやむをえません。 昼食に主食を摂らざるをえない糖尿人は、食前30秒に薬を飲んで適量( 少量 )の主食を食べるという選択肢もあります。

 ダイエット目的なら、スーパー糖質制限食で2~4週間頑張って、目標体重になったらプチかスタンダードでキープするというパターンもあります。 人にもよりますが、スーパーを始めて3日~1週間で体重が減りはじめます。

 糖尿人がスーパー糖質制限食を実践する場合は、食後高血糖を防ぐため、1回の食事の糖質量を20g以下にします。 肥満や糖尿病がない人は、1回の糖質量を30~40g程度に増やして、緩やかな糖質制限食で健康を維持するというパターンもあります。







  



 料理名炭水化物量





肉豆腐9.7
豚肉のショウガ焼き7.4
ヒレカツ13.5
すき焼き (*1)39.2
肉じゃが (*1)25.0
ハンバーグ11.1
八宝菜8.5
酢豚19.9
焼きギョウザ22.8
レバニラ炒め7.3
ビーフシチュー (*2)30.7





エビフライ(2尾)9.3
天ぷら盛り合わせ20.5
サバの味噌煮(1切れ)7.2
ブリの照り焼き(1切れ)7.6
エビチリソース7.0







オムレツ3.5
麻婆豆腐4.8
マカロニグラタン (*2)44.8
ポテトコロッケ(1個)16.4
コーンスープ22.2
ミネストローネ18.5
(*1)和食などで砂糖を多く使っているものには注意。
(*2)シチュー・カレー・グラタンなどは小麦粉を使っているため、糖質量が多い。
  満や高血圧、高脂血症に悩まされている働き盛りのビジネスパーソン。 仕事に追われる中、外食やコンビニ弁当に頼り、栄養は偏りがちだ。日々の心掛けで健康を維持する方法はあるのだろうか。
 画期的ダイェット法として、注目が高まっているのが 「糖質制限食」 だ。 糖尿病患者向けの食事療法だが、煩わしいカロリー計算や食事制限が少なく、肥満や高血糖、高血圧、高脂血症などの改善効果が期待できる。 「3ヵ月で20キログラムの減量に成功した。 その後2年間、一度もリバウンドしていない」。 そう胸を張るのは、2010年に糖尿病と診断されて以来、糖質制限食を続けている作家の桐山秀樹氏。 身長168センチメートルで体重はかつて87キログラムあったが、現在は68キログラム前後を維持。 糖尿病の進行具合を測るヘモグロビンAlcの値が正常値に戻ったほか、血圧、中性脂肪など、関連する主要な数値すべてで改善が見られている。
 にもかかわらず、桐山氏には食事制限の悲壮感は見られない。 朝、昼、晩とたっぷりと食事し、大好きな酒を飲むこともしばしばだ。 そんなうまい話があるかと思うが、そのカギを握るのが糖質制限なのだ。
 では、このダイェット法、どうやればいいのか。 大原則は、ご飯やパンの食べる量を減らすだけ。 糖尿病専門医で糖質制限食を提唱している北里大学北里研究所病院の山田悟医師は 「1食当たりの糖質摂取量は20~40グラムが目安」 と言う。 ご飯半膳または6枚切りの食パン半切れに含まれる糖質が約20グラム。 そのため、 「ご飯の量を半分程度に減らせば、おかずは一部のメニューを除き、自由に食べて大丈夫」 ( 山田医師 )という。
 左の献立例やおかず 1人前当たりの糖質量を参考にしてほしい。 白米、パン、パスタなどのほか、糖質量が多いのはイモや果物、お菓子など。 また和食は味付けに砂糖やみりんを多ぐ使うため糖質量の多いものが少なくない。 シチューやカレー、酢豚も、調理過程で小麦粉や片栗粉を使うため、実は注意が必要だ。 こうした一部のおかずと主食の量にさえ気をつければ、あとは自由に食べられる。 1食20~40グラムが基本だが、 「もともと100グラム取っていた人か60グラムにした場合でも、きっと効果が出る」 ( 山田医師 )。
 このダイエットの基本原理は、糖質摂取を制限して食後の急峻な血糖上昇を抑制し、それに呼応したインスリンホルモンの過剰分泌を予防することにある。 過剰なインスリン分泌は肥満の原因になりうると考えられている。
 さらに、糖質の代わりにタンパク質を摂取することで早ぐ満腹感を得られるようにしたり、基礎代謝を上昇させたりして、エネルギーの出納バランスを改善させることも期待されている。
 肥満や糖尿病は多くの生物種で寿命延長効果が証明されているカロリー制限食が本来の治療法だが、糖質制限食も、欧米では08年にI・シャイ博士が米医学雑誌 『 ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン 』 上に発表した論文などにより、学術的に効果が証明され、治療オプションとして期待が寄せられている( 糖尿病患者やその予備軍がこの食事療法を実践するに当たっては、必ず医師に相談すること )。




 ただ、いかに縛りが緩いとはいえ、外食続きのビジネスパーソンには続けられるか、不安も付きまとう。 コツはあるのか。桐山氏は 「外食やコンビニもうまく活用すれば、糖質制限ダイエットの味方にできる」 と言う。
 桐山氏のオススメはファミレスやホテルのビュッフエ。 ご飯やパンを注文せず、サラダやおかずを中心に自由にメニューを組み立てられるところが利点だ。 同様の理由で、居酒屋も使いやすい。
 糖質制限食は、実は酒飲みにはありかたい減量法だ。 ビールと日本酒には糖質が含まれるので控えるべきだが、焼酎、ウイスキー、ブランデーなどの蒸留酒は糖質ゼロのため、自由に飲める。 また赤ワインも2~3杯程度なら飲んで問題ない。
 桐山氏がよく活用するのは焼き鳥屋。 鶏肉中心の構成で、炭水化物系のメニューが少ないため、献立を組み立てやすい。 しかも鶏肉は牛肉などに比べ、比較的安価だ。 「気をつけたいのは、タレでなく塩で頼むこと」 ( 桐山氏 )。 またシメのお茶漬けや親子丼はやめておこう。
 コンビニはどう使うべきか。 「軸となるのは豆腐やサラダ、チーズ、豆乳、ゆで卵など。 甘いドレッシングは使わず、マヨネーズにしたほうが糖質を抑えられる」。 特に淡泊で飽きにくく、腹もちもする豆腐は使い勝手がいい。 またサバの水煮缶やツナ缶も、ボリュームがあり重宝する。 コンビニおにぎりの糖質は1つ( 100グラム )約40グラムなので、食べるとしても1つが限度だ。 マクドナルドでは、ダブルチーズバーガーとサラダ、アイスティーで糖質量約40グラムとなる。 食べ物の好みによっても、どんなやび方がいいかは異なる。 自分のパターンを確立しよう。
 食べる順番についても意識したい。 野菜から食べることの効用を説くのは、 『なぜ、 「食べる順番」 が人をここまで健康にするのか』 などの著書がある梶山静夫医師。 「野菜を先に小腸に入れておくことで、食物繊維がブドウ糖の吸収を抑えてくれる」 という。 つまり、糖質を摂取しても、野菜の力により、血糖値の急激な上昇を抑えられ、マイナス影響を相殺できる。
 梶山医師は今年、大阪府立大学の今井佐恵子教授と共同で日本糖尿病学会に論文を発表。 2型糖尿病患者を対象とした試験において、野菜から先に食べることでヘモグロビンAlc、血圧、LDL( 悪玉 )コレステロールの値が大きく改善することを立証した。
 実践のポイントは、野菜とご飯の間を約10分間空けること。 ご飯が届く前に野菜が腸で待ち構えている状態を作らないと、効果が薄れる。 どんぶり物やカレーライスなど、ご飯とおかずが一体化している食べ物の場合は、別に野菜サラダも頼み、そちらから食べ始めよう。
 「10分空けるのがつらいと訴える患者さんは多い。 野菜を5分かけて食べ、その後おかずを食べ始めて、最後にご飯とおかずを交互に食べるようにすると、無理なく10分の間隔を空けられる」 ( 梶山医師 )。


寿

 野菜( きのこや海藻を含む )は1日350~400グラムの摂取を目標としたい。 この量は小鉢など少量のメニューなら1食につき2品、野菜炒めのように野菜たっぷりのメニューなら1食につき1品。 これを3食食べるイメージだ。
 なかなか簡単ではないが、みそ汁や作り置きできるおひたしを活用すると品数を稼ぎやすい。 また、はやりのシリコンスチーマーを使って電子レンジで加熱し、蒸し野菜にすれば、かさが減って食べやすくなる。 ブロッコリー3房で約50グラムだ。
 「野菜の食物繊維の力に加え、野菜、おかず、ご飯の順に食べると、満腹になり、ご飯を食べる量が自然に減る。 これも食べる順番ダイエットの利点だ」 ( 梶山医師 )
 最低限のルールさえ守れば自由に食べられる緩さが、糖質制限や食べる順番ダイエットの利点。 ただ、何を食べるのが体にいいのかも、意識しておいていいだろう。
 「タウリン、マグネシウムが長寿の源」。 そう語るのは、家森幸男・京都大学名誉教授。 家森教授は世界225ヵ国61地域を回り、世界中の民族の尿のサンプルを採取。 その分析結果から、長寿の地域で何か食べられているかを割り出した。 カリウム、カルシウム、イソフラボンなど、健康にいい成分は数多いが、中でも特に有効なのがタウリンとマグネシウムの2つだという。
 「がんと並ぶ最大の死因は脳卒中と心臓死。 つまり血管の病気だ。 血管の若さを保つことが、長生きの秘訣だ」 ( 家森教授 )。 タウリンは動脈硬化のもととなるコレステロールを退治する成分。 コレステロールを肝臓で処理するには、7α水酸化酵素と呼ばれる酵素が必要となる。 この生成を促すのが、魚介類や海草類に豊富に含まれるタウリンなのだ。
 またマグネシウムもタウリンと並ぶ 「長生き栄養素」。 マグネシウムは細胞内に取り込まれたナトリウム( 食塩の主成分 )を外にくみ出すうえで、重要な役割を果たす。 そのため、マグネシウムを多く摂取すると、血圧が下がり、脳卒中のリスクを低減できる。 「マグネシウムはナッツや種、大豆に豊富。 日本人には大豆が食べやすいだろう」 ( 家森教授 )。
 同時に、塩分の取りすぎには気をつけたい。 日本人の食塩摂取量は平均で1日約11グラム。 だが、厚生労働省の 「日本人の食事摂取基準」 では、男性で1日9グラム未満、女性で7.5グラム未満を推奨している。 日本人は塩分を取りすぎなのだ。 岡田正彦・新潟大学名誉教授も 「日本人の食の最大の問題点は、塩分取りすぎ、野菜少なすぎの2つ」 と指摘する。
 また武庫川女子大学の森真理講師はインスタントのラーメンやみそ汁の塩分表記に警鐘を鳴らす。 「こうした商品では、 『 ナトリウム( Na )1.1グラム 』 などと表記されている。 これを塩分量と混同しがちだが、この値を2.54倍した値が塩分量になる。 みそ汁なら1杯1グラム未満に抑えるのが適正で、1杯3グラム近い塩分は明らかに過多だ」。 野菜に含まれるカリウムには塩( ナトリウム )による血圧上昇を中和する働きがある。 濃い味付けが好きな人は、野菜を多めに取ることを心掛けたい。
 いろいろと触れたが、健康法は続けることが最重要。 まずはストイックになりすぎず、気軽に始めよう。





( 2016.06.12 )


 老後のさまざまな生活設計も、すべては健康であってこそ。そして、働き盛りのあなたの体の中でも、すでに老化現象は始まっている。最新の科学的知見に基づいた、今日から始めるアンチエイジング習慣。



 長生きするのもいいけれど、できればお迎えがくる直前まで、元気に活動できる体でいたいもの。

 介護を受けたり寝たきりになったりせずに日常生活を送れる年月のことを、 「健康寿命」 と呼ぶ。 厚生労働省の2013年の統計によれば、日本人の健康寿命は男性が71.19歳、女性が74.21歳。 平均寿命との差は、それぞれ9.02年と12.4年ある。

 具体的にどうすれば、長く元気に生活できるのか。 そもそも、老いという現象を自分でコントロールできるのか。

 できる、というのは、日本におけるアンチエイジング医療の草分け、満尾正医師だ。 「老化そのものは、実は20代から始まっています。 そのなかには老眼や薄毛など、努力では止めにくい現象もありますが、ちょっとした注意や努力で進行を抑制できる部分も大きいんです」。
  「40代から60代までの間に体を整え、70代以降はそのおつりで生きていくことを目指しましょう」 と言うのは、日本抗加齢医学会の正会員でもある管理栄養士の堀知佐子氏。 健康運動指導士の菅野隆氏は、 「運動や歩行に問題が出る年齢より前に、筋力トレーニングを習慣化しておくことが必要です」 と助言する。

 この3人の専門家に、健康寿命を延ばす方法を尋ねてみた。 まずは、満尾正医師に、老化の大きな要因と対策を聞いた。




 健康寿命を損なう病気には、心臓病、脳血管障害、糖尿病、骨粗しょう症など、さまざまなものがあります。 とくに糖尿病は、他の生活習慣病やガン、認知症の発症リスクも高める怖い病気です。

 こうした病気の多くは、加齢に伴う身体の 「老化」 が原因で起きてきます。 老化の進行要因は、以下の3つです。

( 1 )活性酸素による酸化:人体は外部から取り込んだ糖質や脂質を酸素と反応させ、エネルギーを取り出しています。 このとき発生する活性酸素が、細胞を構成する脂質などを傷つけ、 「体のさび 」 が徐々に進行します。 活性酸素を無害化する酵素も、加齢とともに減少します。
( 2 )タンパク質の糖化 :生きるために必要なエネルギー源である糖が、体を構成する主成分であるタンパク質を変化させます。 その結果、細胞や酵素などの働きが悪くなり、体の機能低下につながります。
( 3 )ホルモン分泌の変化:若さを保ち、免疫力を維持するDHEA、筋肉量や筋力の維持に関わる男性ホルモン( 女性の体内にもあります )、睡眠に関係するホルモン( メラトニン、セロトニン )の分泌が、ストレスが原因で下がり気味になり、さまざまな不具合が生じます。

 とはいえ、これらの現象は、日ごろの生活習慣を見直すことで、かなり進行を遅らせることができます。 たとえば、活性酸素による酸化は、抗酸化物質や、SODの材料となるタンパク質や亜鉛を含む食材を意識してとること、喫煙や暴飲暴食、激しすぎる運動を避けることなどで抑制できます。 糖化の予防には、糖質の多い食材を控えめにすること、タレを付けて焼いた肉の焦げ目など糖とタンパク質が高温で結びついてできるAGEs( 最終糖化産物 )の摂取を控えること、体の満腹サインを受け取れるようゆっくり食事すること、の3点を心がけてください。

 ホルモンレベルの維持には、質のいい睡眠の確保が重要です。 人の脳や体は、眠っている間にホルモンの力でメンテナンスされるしくみになっているからです。 どんなに遅くとも夜12時前、できれば11時前には床につくことが望ましいです。 ストレス対策は暴飲暴食ではなく、軽い運動で。 DHEAはサプリメントで補充することも検討してください。

 働き盛り世代の老化信号は、体重に出ます。 最近急に体重が増えた方は、とくに注意してください。 BMIが25を超えると、糖尿病をはじめとする生活習慣病のリスクが大きく高まります。




 老化のメカニズムが科学的に解明されるにつれ、それを抑制する方法も明らかに。 止められない現象とあきらめず、日々の注意と努力の積み重ねで健康寿命を延ばそう!
[ 1 ]
活性酸素による酸化 ― 体内でエネルギーをつくるときに発生する活性酸素が、細胞を傷つける。
対策:食事の改善。喫煙や暴飲暴食など、体内の活性酸素を増やす習慣を改める。
[ 2 ]
タンパク質の糖化 ― 体内のタンパク質が糖によって変化し、細胞や酵素などの働きが悪くなる。
対策:糖質をとりすぎない。 早食いは避ける。 AGEsの摂取を控える。
[ 3 ]
ホルモン分泌の変化 ― ストレスが原因で、「若返りホルモン」DHEAや男性ホルモンなどの分泌が減る。
対策:ストレスを極力避ける。 できれば11時前には寝る。 睡眠時間は7時間がベスト。





( 2018.05.18 )

 


 「脂は太るから絶対食べない」 「コレステロールが気になるから卵は1日1個」 「朝は健康的にスムージーだけ」 …… その “食べ方”、間違っています! 「太らない」 「健康になる」 正しい食べ方とは?



(1) 脂肪は太る原因だから厳禁?

 健康やダイエットに関心が高い人なら、脂肪はもちろん糖質の摂取にも気を使っているのではないだろうか。 私自身もどちらも摂取量をできるだけ減らす努力をしてきた。

 しかし脂肪や糖質がどう体に影響を与えているか、具体的にどのようなデメリットがあるか、詳細には分かっていなかったのが実情だ。

 まずショックだったのは、脂肪は食べても太らないという事実だ。 脂肪は食べ過ぎてもほとんどが体外に出てしまうため、体内には残らないのだという。

 では何が私たちの体の中で脂肪になっているかというと、糖質だ。 私たちの体は飢餓の時代の記憶から、エネルギーとして使い切れなかった糖質を脂肪に変えて体内に蓄える性質がある。 しかも糖質は体外に排出されることがなく、吸収率が100%なのだ。

 反対に細胞膜は脂質でできているため、むしろ脂を制限することは危険であり、良質の油を積極的に摂ることが大切だという。 その一番のお勧めがオリーブオイルである。

 これまでダイエットのために我慢してきた脂肪。それは徒労であったわけだが、少なくとも今後は、オリーブオイルのような良質の油なら積極的に摂っていいということが分かったのは嬉しいことだ。

(2) 健康のために気を付けるのはカロリー? 糖質?

 「太る唯一の原因」と言い切っている糖質。 しかしそれ以上に衝撃だったのは、日々の不調の原因も実は糖質にあった、ということだ。

 皆さんの中には、 「血糖値スパイク」 という言葉を耳にしたことがある人も多いと思う。 昼食で丼ものや麺類を食べた後、急激な眠気やだるさに襲われる。 私はこれを、お腹がいっぱいになったがゆえの自然現象ぐらいにしか捉えていなかった。 が、実はこれこそが 「血糖値スパイク」 の現象だったのだ。

 空腹時に大量の糖質を摂ると、本来ジワジワ上がっていくはずの血糖値が急激に上がる。 すると体は、急いで血糖値を下げようと大量のインスリンを出す。 その結果、必要以上に血糖値が低くなる低血糖状態に陥ってしまう。 これが、眠気やだるさといった不調を引き起こしていたのだ。 ひどい場合は動悸やめまいなどが起こるだけでなく、意識を失ってしまうこともあるのだという。

 ダイエットのためにはカロリー制限が一番、そう思っていた人は今一度自分の食生活を見直す必要がありそうだ。

(3) 昔からの「正しい食べ順」は大間違い?

 とはいえ、糖質は私たちの体にとって必要なものでもある。

 いくら日々のパフォーマンス力を下げてしまうからといって、完全に摂らないのも良くない。 では体にダメージを与えない糖質の摂り方とはどのようなものなのか?

 最大のポイントは、食べる順番にある。 比較的糖質の少ない野菜( 根菜や、甘いトマトはNG )や、肉や魚を先に食べれば、消化に時間がかるため、その後に米などの炭水化物が胃に入ってきても、血糖値は急激に上がらないのだ。

 脂肪もコレステロールも我慢する必要はない。 ただ食事の最初に野菜や肉、魚を食べる。 それだけで肥満はかなり防げるのだ。 その昔、小学校で推奨されていた 「三角食べ」 ( 和食を食べるときに飯と味噌汁とおかずを “順序よく食べる” 方法のこと )も、一見バランスよく食べられるように見えて、糖質を考えた健康的な食べ方から見るとNG。

(4) フルーツスムージーは美容にいい?

 皆さんの中には、 「夏までに痩せたいから、朝はフルーツスムージーだけ」 「美容のために朝はしぼりたてのフレッシュジュースを毎日飲んでいる」 という人も多いのではないだろうか。

 実はこちらもダイエット的にみると決して正しいとはいえない。

 果物はたしかにビタミンやミネラルを豊富に含んでいる。 しかしその甘さが物語るように、糖質もたっぷり。 さらにタチが悪いのは、その糖質が米や小麦に含まれるブドウ糖ではなく、果糖であること。 人間の体はブドウ糖から優先に消費するため、果糖の消費は後回しとなり、脂肪としてすべて体内に蓄えられてしまうのだ。

 つまり冒頭で触れた、多くの人がやっているであろう朝一杯の 「フルーツスムージー」 「フレッシュジュース」 というのがいかに危険な行為か分かるだろう。 たとえばオレンジジュース1杯は、一度にオレンジを6~8個食べるようなもの。 肥満街道まっしぐらなのである。

 果物を摂るなら比較的果糖の少ないキウイやブルーベリーを、1日の始まりである朝にジュースにせず、そのまま少量摂るのがお勧めだ。

 これほどまでに身近な栄養素でありながら、私たちの体に多大なダメージを与える糖質。 そのコントロールが難しいのは、タバコやお酒と違って完全に断ってしまえばいい、というものではないことだ。

 だからこそ、いつどのくらい食べればいいのか、どのような食品にどれくらい含まれているのか、正しい知識を身につけ、長く健康で見た目も若々しくいたいものだ。


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