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 新聞やテレビでもカタカナ言葉がよく使われている。 ビジネスマンの会話でも、また、最近は政治家までが、得意気にこうした外来語( 主に英語を中心とした )を頻繁に使う傾向が見られる。 日本語ではどうしても表現出来ない事柄や場合はともかく、やたらと外来語の連発では、果たして全ての人たちに完全に理解されているのだろうか。

 また、それを使っている人たち自身も、良く言葉の意味を解ってしゃべっているのだろうか。 国立の国語研究所が、このほどよく使われると考えられる外来語を日本語に言い換えるとどうなるか、を発表した。

 今年の春に発表した62語に続いて、今回は52語についての中間発表である。 こうしたカタカナ言葉を、解かりやすく日本語で言い換えるとどうなるか、詳しくは今年の秋にまとめられる予定の最終案を参照されたい。

 ここでは代表的な数例を紹介するに留めておこう。 「 倫理崩壊 」 「 時空自在 」 を始め、 「 意欲刺激剤 」 「 等生化 」 「 法執行 」 等が、どういう外来語を翻訳したものか、直ちに解かれば相当勘のいい人だ。 これらの日本語を見ただけで、これらをどういう意味で、どんな状況で使えばよいか、迷う人も多いに違いない。

 ちなみに正解は、英文で書き表せばこうなる。 順に 「 moral hazard 」、 「 ubiquitous 」 ( ラテン語 )、 「 incentive 」、 「 normalization 」、 「 enforcement 」 である。 もう少し説明すると、 「 モラル・ハザード 」 とは、保険用語として使われる “道義上” の危険を指している。

 例えば、健康保険の加入者の多くが、些細な怪我でもすぐに病院に駆けつけ、そのために保険制度自体に支障が出るといった、社会の利益には反するが、個人には合理的な行動によって生じる “危険” を指しているのだ。

 「 ユビキタス 」 は、ラテン語の( 何処にでもある )という意味から、コンピューターが多くの “機具” に組み込まれている現代の社会を指して使われるようになったものである。 従って、これを言い換えれば、 『 時間と場所を選ばないで、いつでも自由に情報処理機器が使える便利な社会 』 ということになる。

 それにしても 『 孫悟空 』 を連想させるようなこの日本語訳は、この日本語自体にも更に説明が必要だろう。 「 インセンティブ 」 は通常、 「 刺激的な 」 「 誘因 」 「 動機 」 等と訳されているが、 「 意欲刺激剤 」 では何かいかがわしい媚薬を想起させる。 いっそのこと、平易に表現するなら 「 ヤル気 」 ( を起こさせる )が解かりやすいのでは ……。

 また、 「 ノーマライゼイション 」 の日本語訳に、聞き慣れない日本語が充てられている。 これは知的障害のある人達にも、等しく普通に生活する機会を与えられるべきだ、という福祉の精神を汲んでこの造語が考えられた、という背景がある。

 しかし、本来の 『 皆な平等の普通の生活化 』 ( を進めること )のほうが柔らかで解かりやすいのではなかろうか。 更に 「 エンフォースメント 」 等、わざわざ舌を噛むようなカタカナを使うより、最初から日本語で 「 施行 」 とか 「 実施する 」 というほうが、はるかに簡単明瞭ではないだろうか。

 アメリカ系のF記者はいう
「 私は日本に住んで10年以上になります。 日本語も良く解かっている積もりです。 それだけ日本語では、気になることが沢山あります。

 私が習った日本語が正しい文法に則ったものだと思いますが、若い人達はもっと正しい日本語を使うように、努力しなければ、日本語はやがて何語か解からなくなってしまいますよ。

 当初は日本語の 「 て、に、お、は 」 等、助詞の使い方や動詞の変格活用等には戸惑いましたが、ようやく慣れてきました。 今ではあまり意識せずに通常の会話ができるようになりました。 そうしますと、最早一般化しているとさえ思われる 「 食べれない 」 「 しゃべれない 」 「 見れない 」 などの、ラ抜き言葉を聞く度に、一体どっちが正しいのか、ふと迷ってしまうことさえあります。

 それに 「 マジ 」 「 ヤバイッ 」 「 かわいいーっ 」 「 ホント 」 「 ウザッタイ 」 等の感嘆詞だけで会話が成り立っている若い人たちの日本語は将来どうなるのでしょうか。 少し心配になります。 その日本語の乱れている中で、日本の人は、会話の中に、英語の単語を良く入れて話しますが、日本語を抜いて英語だけで話をするのは苦手のようです。

 これは学校での英語の勉強の仕方にも問題があると思います。 一つずつの単語を記憶させて、しかもそれらの固定的な意味の翻訳をどれだけ覚えたかによって成績を決めていると聞きました。 言葉は、生きているコミュニケーションのためのツール( 道具、手段 )です。

 ですから、短くてもいいですから、一つの意志を伝えるセンテンス( 文章 )として覚えるようにすれば良いのです。 英語で話を聞く場合も、相手のメッセージが何か、を的確につかみ取る事に集中すべきです。是非そうして下さい。 そうすれば上達も早まる筈です。

 日本人が何かを表明する場合、日本語の間に英語の単語を挟んでシャベル事が、いわばカッコいい、知識人のように思われているのではないでしょうか。 それは、折角の黒い髪の毛を、欧米人を真似て、茶色に染める行為と一脈通じるのではないでしょうか。

 先に発表された語彙を含めて、今回発表された外来語の言い換えの案は、かなり無理をしている感じがします。 この中に 「 インフラ 」 という言葉がありましたが、それが 「 infrastructure 」 だと解かるまで、少し時間がかかりました。

 経済や社会活動を維持発展させるための基盤構造を指すこの言葉は、今回の国語研究所の案では 「 社会基盤 」 とほぼ的確に訳されていました。

 日本では、音節の長い英語をよく省略する傾向があります。 「 マスコミ 」 「 デフレ 」 「 パソコン 」 「 アニメ 」 「 エアコン 」 「 ファミレス 」 「 デジカメ 」 「 リストラ 」 「 ロケハン 」 「 コンビニ 」 等数えればきりがありません。 これらは全て英語を端折った日本語です。 これらをそのまま英語として言われてもアメリカ人には通じません。

 それらの中でも、本来の意味から全くかけ離れて、飛躍した使われ方をしているものの代表が 「 リストラ 」 でしょう。 この 「 restructureing 」 は再構築とか、組織の立て直し、構造改革の事を言うのです。 企業が経営の革新を図って組織の改革、人事移動等を行なった結果、職場が無くなったり、縮小されたために職を失う事態が出ることもあります。

 しかし、理論的には、逆に要員を増やさなければならない場合もあり得る訳です。 でも、この言葉が一人歩きをし始めて、 『 首切り 』 の代名詞となっているのには驚きました。 本来正しく使うべき日本語が良く理解され、駆使されないまま、さらに難しい外来語を交えて、更に難しく表現しようとしているような気がします 」