自分の身の回りの他人の言動を見ていて、腹立たしいと思ったことのある人はまだ、それなりにマナーの心得がある人である。 何を見ても、誰が何をしても、自分に関係さえなければ、それはどうでもいいことと考えている人も多い。

 「 マナー麻痺症候群 」 が増えている。 日本人のマナーは地に落ちている。 いくら価値観が多様化しているとは言え、社会生活の中で、物事の是非善悪、法律以前のマナーを心得て守ることが、社会に生きる最低条件だと思うのだが。 ある全国紙の最近の世論調査によると、次のような結果が示された。

 全国の250地点、層化二段無作為抽出法で、有権者3,000人を対象に、個別訪問面接聴取によって行なわれた数字である。
日本人のマナーが悪くなったと思う …… 90.4%
世代別では 若い女性が …… 60.3%
中・高校生が …… 59.7%
 これらのマナー違反の内容を順位別に挙げると
煙草やガム、あきかんなどのポイ捨て …… 67.6%
子供が騒いでも注意しない …… 55.0%
公共の乗物の中で携帯電話を使う …… 42.5%
 などがやはり目立つ。
 そして、マナーや礼儀作法、しつけ等の教育については
キチンと行なわれていない …… 89.1%
 更に今後これからの日本人社会でのマナーや礼儀作法は
ますます軽視される …… 49.4%
現在と変わらないだろう …… 40.9%
 で、合計すると、90.3%と言う驚くべき数字になる。

 中部ヨーロッパ系のW記者は体験を交えていう
「確かに日本の若い女性のマナーは良くないと思います。 日本でも最近禁煙運動が盛んです。 ヨーロッパではまだアメリカほど厳しくはありませんが、それでも喫煙者の数を減らそうと、EU各国は今懸命で対策を講じています。

 煙草を吸うのは、健康に害があると言っても、個人の嗜好で自由です。 が、だからといって、回りの人の迷惑等も顧みないで、自分だけ良ければいいというのは、マナー違反です。 辺り構わずこれ見よがしに、くわえたばこで人混みの中を闊歩しているのは例外無く殆ど若い女性です。

 先日、渋谷駅で電車が到着した途端、髪の毛を黄色く染めた若い女性がプラットホームに火の付いたままの煙草を放り投げたのです。 私は見兼ねて直ぐ注意しました。 しかし、彼女は恐ろしい目で私を睨み付けたまま、何も言わずそのまま電車に乗って行ってしまいました。

 私がこれまでに持っていた日本女性のイメージは、またこれでどんどん崩されていきます。 私は日本の女性に煙草を吸うな、と言っているのではありません。 外国人のようになりたいと、折角の黒い髪を何色に染めようと自由です。

 煙草が吸える年齢なのですから、もう少し基本的な社会の構成員の一人としての自覚というものが持てないでしょうか。 日本の女性は、内面的な日本特有の文化を持っている筈だと信じています。 聡明で、淑やかで、優しくて礼儀正しく、そして自己を確立している筈の日本の女性は何処に行ってしまったんですか。

 誰もが申し合わせたように、電車に乗るとすぐに携帯電話を取り出して、親指一本でピコピコとやっているのも殆どが若い女性です。 全員がまるで競争しているようで、とても面白い光景です。 他に何も考えることがないのでしょう。

 みんながやっていることをやっている限り、自分の安全な居場所があると思っている 『 自己喪失症候群 』 の人達です。 それが終わると、こんどは化粧を始めます。 鏡を取り出して、あまり長くない “まつげ” を一生懸命に小さなブラッシで掻き上げています。 口を半開きにして ……。 あまり人前で見せる作業ではないと思うのですが。

 メイクアップは自分の化粧室で、などという感覚は持ち合わせていないようです。 彼女らにとっては、回りの人は自分とは何の関係もない他人なのです。 しかも揺れる電車の中での芸当です。 高度な技術を必要とするでしょう。 幸か不幸か、ヨーロッパの女性達はそうした器用な技術がないためか、市内電車やバスの中で、彼女達が化粧をしている姿を見ることはまずありません。

 若い女性に限らず、若い人や子供達は、これからの社会を築いていく大切な社会資本だと私たちは考えています。 ですから、学校であれ、街中であれ、公共の場では回りの大人たちが責任をもってしつけ教育をします。 家庭での親はもちろんのことです。

 日本の、こうした女性達がやがて結婚して母親になる日も近いのです。 非常に残念なことですが、世論調査の結果は、かなり正しく今後の日本の社会動向を反映しているのかも知れません」