( 2018.11.08 )

  


 一部で 「移民政策」 ともいわれている入管法改正案が成立しそうだが、この政策は後世に計り知れない悪影響を与えかねない。 実は100年前の日本でも同様の事態は発生しており、それは今日にまで在日朝鮮人差別問題として尾を引いている。

「移民政策」は日本の労働者にも百害あって一利なし


日本社会で事実上の「移民政策」を進めて、果たしてうまくいくのか
 安倍首相が頑なに 「移民政策」 と認めない 「外国人労働者の受け入れ拡大」 を目的とした出入国管理法改正案が、なし崩し的に成立しそうだ。

 誰も投獄されていない特定秘密保護法や、物証のない首相の口利き疑惑の時は、この世の終わりのように大騒ぎするマスコミや野党も、驚くほどあっさりとした批判で終わっているからだ。

 だが、この政策は我々の子どもや孫の世代に、計り知れない悪影響を与える可能性が高い。

 現在の日本の人手不足問題の多くは 「雇用ミスマッチ」 による 「人手偏在」 によるところが大きい。 つまり、新卒ホワイトカラーの求人には過剰に人手が集まるのに、低賃金で辛い単純労働的な求人は見向きもされないため、 「留学生」 や 「技能実習生」 という弱い立場の 「短期移民」 への依存度が高まっている状況なのだ。

 こういう負のスパイラルを断ち切るには賃金アップと生産性向上、それができない経営者の淘汰しかないのだが、今回の移民政策への転換でそれが一気にパアとなる。

 「人手偏在」 にどんなに外国人労働者を注入しても、辛い単純労働の価値をさらに下げるだけで、低賃金がビタッと定着するからだ。 こうなれば、低賃金でコキ使われる日本人や在日外国人の皆さんは 「お前の代わりはいくらでもいる」 と脅されるなど、これまで以上の弱者になる。 つまり、 「外国人労働者の受け入れ拡大」 で潤うのは、低賃金労働を前提としたビジネスモデルを死守したいブラック経営者だけで、我々一般の労働者からすれば 「百害あって一利なし」 なのだ。

 そう言うと、 「既に日本は移民国家だ」 という開き直る人も多いが、なぜそうなってしまったのかというと、今から100年前、良識のある日本人たちの 「警鐘」 を無視したからだ。


100年前の雇用ミスマッチで政府は朝鮮人労働者を “輸入”

 1917年、北海道や九州の炭鉱で深刻な人手不足が発生した。

 当時、日本の人口は右肩上がりで増えていた。 おまけに、ワークライフバランスなんて概念もないので、労働者は朝から晩まで働かされた。 そんな状況でも 「人手不足」 だというのだから、炭鉱業では常軌を逸した 「雇用のミスマッチ」 が蔓延していたわけだが、日本政府はそれを是正することなく、禁断の果実に手を出す。 「試験的」 という名目で、三菱、三井などの炭鉱に朝鮮人労働者約700名の受け入れを行ったのである。

 だが、当時の新聞人は今と比べてかなりまともだった。 「読売新聞」 ( 1917年9月14日 )の 「労力の輸入 最後の計算を誤る勿れ」 という記事が以下のように警鐘を鳴らしている。
 「鮮人労働者の輸入は生産費の軽減を意味ししたがって生産品の低廉を意味するが如きも事質に於ては只内地労働者のエキスペンスに於て資本家の懐中を肥やすに過ぎざるなり」
 「要するに鮮人労働者を内地に輸入するは我内地の生活を朝鮮の生活と同一の水準に低下せしむるとなしとせず」

 これは杞憂でも妄想でもなかった。 「試験」 の結果に気を良くした経営者は続々と 「鮮人労働者」 を受け入れた。 しかし、その一方で、日本の労働者の待遇は一向に上がらず、程なくして小林多喜二の 「蟹工船」 に描かれたようなブラック労働が定着していったのである。

 この100年前の過ちを、さらに大規模なスケールで繰り返そうというのが、今回の 「外国人労働者の受け入れ拡大」 なのだ。

 さらに言ってしまえば、 「人間」 を 「労働力」 という側面でしか見ない政策が、憎悪と対立につながっていくことも、我々は歴史から学ぶことができる。


生活の基盤を持つ外国人が感じる 「差別」

 政府が 「労働力の輸入」 に舵を切ってから3年後、 「朝鮮移民」 が増えた日本で 「在京朝鮮人の過半数は内地へ来て一年か二年経つと思想的に悪化し当局に対して白眼視する様になる傾向が現れて来た」 ( 読売新聞1920年8月24日 )という問題が発生している。

 そのように聞くと 「当時の朝鮮人は悪さをすることを目的にやってきた犯罪者も多かった」 と、トランプ大統領のようなことを言う人も多いが、実は当時の朝鮮人の態度が悪くなる最大の理由は、 「日本人のような扱いを受けられない」 という不満だった。 先ほどの新聞記事に登場した朝鮮人はこんな風に述べている。

 「内地人と私等とを差別されるので困る。 学生は学校、職工は工場で、其他日毎に遭ふ日本人は皆一様に私達に侮蔑的態度で接してゐる 。相当な地位或は財産が出来て内地の婦人を娶ろうとしても鮮人だからと云ってまとまらぬ」 ( 同上 )

 この主張の是非についてはややこしくなるのでちょっと脇に置く。 言いたいのは、日本人側がいくら外国人を 「労働者」 や 「移民」 と呼んで、日本人と異なる特別扱いをしたところで、それはこちらの一方的な押し付けであり、当の外国人は日本で暮らして働く以上、遅かれ早かれ日本人と同じ扱いを望むようになる、ということだ。

 よそ者のくせに何たる図々しさだ、と思うかもしれないが、それが 「人間」 というものだ。

 皆さんも想像してほしい。 もしどこかの別の国へ移住して、その国の言葉をしゃべり、その国の中で立派に働き、そこで家族を養うようになったら、その国の人とせめて同じくらいの権利や公共サービスを受けたいと思うのではないか。

 その国で何年も暮らしているのに 「外国人労働者」 と言われ続け、体調を崩して働けなくなったりしたら、すぐに国から出てけと言われたらどうか。 「差別」 だと感じるのではないか。

 どちらが正しい、間違っているという話ではない。 100年前、日本にやってきた朝鮮人労働者が感じた 「差別」 というものが、 「従軍慰安婦」 の問題や今回判決が出た徴用工の問題にもつながって、 「負の遺産」 になっているのは、動かしがたい事実なのだ。


「労働者」 としか見ないのがすべての悲劇の始まり

 ここまで言えば、もうお分かりだろう。 今回の 「外国人労働者の受け入れ拡大」 も 「朝鮮人労働者」 問題のリバイバルで、これから100年続く民族間の遺恨につながる可能性が極めて高いのだ。

 隣の国との問題はあくまでレアケースで、他の外国人労働者と遺恨など生じるわけがない、と嘲笑する方も多いかもしれないが、既にブラック労働に辟易とした 「技能実習生」 が、日本嫌いになって帰国するなどの問題が起きている。 また、 「移民政策」 だと批判された際の安倍首相の反論にも、その兆候が見て取れる。

 「素行善良で独立した生計を営める資産または技能があるなど、厳しい条件が課される」

 要するに、誰かれ構わず入れるわけではなく、品行方正な労働者だけしか入れませんというのだ。

 素晴らしいじゃないかと思うかもしれないが、我々が受け入れるようとしているのは、血が通った人間である。 入国した時は素行善良でも、1年経過すれば 「差別」 に不満を漏らす外国人になるかもしれない。 技能や資産があっても、ブラック労働に耐えかねて仕事をボイコットするかもしれない。 このように外国人を 「労働者」 としか見ないところがすべての悲劇の始まりだということを、首相は歴史から学ぶべきだ。

 2016年、SNSで一枚のFAXの画像が話題になった。

 技能実習生の雇用を企業に促すためのFAXで、 「外国人技能実習生で人手不足を解消!! 労働力として全国で約15万人が活躍中!」 という文言が大きく踊っていた。 もちろん、何者かが何らかの意図を持って作成したビラである可能性もあるが、それを見て 「いかにもありそう」 と感じたのは、以下のような記述があったことだ。

 「入国前には日本語やマナーを徹底教育しますので外国人技能実習生はオススメいたします」
 「実習生は基本仕事を休みません! 途中で辞めません! マジメで素直です! 残業、休日出勤は喜んで仕事します!」

 ここに日本人が100年前から克服できない 「病」 の片鱗が見える。 人手不足の炭鉱で朝鮮人を働かせた時代から、日本人にとって、外国人は低賃金で文句を言わずキビキビ働く、 「労働者」 であって、 「人間」 として見ていないのだ。


外国人差別が根強く残る国で 「移民政策」 が成功するわけがない

 さらに厄介なのは、この病はインテリの方が症状が重いことだ。 先日もニュースを見ていたら、 「論説委員」 という立派な肩書きを持つ方が大真面目な顔をして、こんなことをおっしゃっていた。

 「これから日本人は人口が急速に減っていく、いま反対をしても我々が年をとって、誰も介護をしてくれないなんてことにならないように、外国人を受け入れていくしかない」

 外国人を労働者どころか、介護要員や社会保障維持の人柱のようにしか考えていないのだ。 こういう 「外国人差別」 が根強く残る国では、 「移民政策」 など進めて成功するわけがない。

 世界一真面目で勤勉と何かにつけて自画自賛している我々日本人でも、あまりに辛いと仕事を投げ出す人がいる。 会社を辞める人もいる。 働きたくても働けないと心を病む人もいる。

 ならば、これから大量に受け入れる 「外国人」 だってそうならない保証はない。 そうなったら、さっさと荷物をまとめて日本から出て行け、と不法滞在外国人扱いとなるのか。 これまで日本社会に馴染んできた家族はどうするのか。 使い捨てのコマではなく、人間らしく扱うべきだ、と言う声も必ず出てくるはずだ。

 安倍首相はこれを頑なに 「外国人労働者」 と呼ぶが、世界ではそういうスタイルで働かされるのは 「奴隷」 と呼ぶ。

 今の国会で行われている論戦の最大の問題は、外国人を 「人間」 として見ていないことだ。

 「労働力」 という頭数でしか見ていないので、 「人間」 ならば起こりえる不正受給、犯罪、心の病など、我々日本人の中で当たり前に見られる問題がスコーンと抜けているのだ。

 その中でも最もゴソっと抜けているのは、人間ならば当然抱くであろう 「妬み」 や 「ひがみ」 という感情だ。

 なぜ日本人よりも何倍も多く働いているのに、日本人よりも待遇が悪いのか。 なぜこんなにも日本に貢献しているのに、日本人のように扱ってくれないのか。 我々は 「使い捨て」 なのか ──。

 このような不平不満に答えられないような制度設計では、外国人が雪だるま式に増えれば 「破綻」 をするのは目に見えている。

 個人的には、日本の賃金アップと生産性向上がある程度の水準まで到達した後、それでもまだ人手が足りない分野があるというのなら、 「移民」 を受け入れられればいい。 ただ、その時は日本人とそれほど変わらない待遇にする、という覚悟を持つべきだ。

 外国人は日本人が豊かな生活を送るための 「お手伝いさん」 や 「奴隷」 ではないのだ。





( 2018.10.21 )

  



彼らの多くは借金を抱えて来日している
 いま日本のカタチが変わろうとしている。

 決して大げさな話ではない。 おそらく後世の人にとって、2018~19年は、国のあり方がはっきり変わった歴史的なターニングポイントとして知られているはずだ。 これまで 「移民政策は断じてとりません」 と繰り返してきた政府が、 “事実上の移民受け入れ” に向けて大きく舵を切ったのである。

 今年6月の 「骨太の方針2018」 では、外国人に対して新たな在留資格を設けることなどが明らかにされ、2025年までに50万人超の就業を目指すことがアナウンスされた。

 10月下旬から始まる臨時国会に関係法案が提出される。 出入国管理法も改正される。 来年4月の導入を目指す新たな在留資格は、更新を繰り返すことで実質的な永住が可能になる仕組みだという。

 こうした矢継ぎ早の政策発表のウラにあるのは、深刻な労働力不足である。

 2018年現在、最新の有効求人倍率は1.63倍。 政府はこの数値を好景気の指標として使うが、要するに現場で人手が足りていない何よりの証拠だ。


 政策と実態のねじれ

 いま街で見掛ける外国人労働者のほとんどは留学生や技能実習生だが、彼らは本来的な意味での労働者ではない。

 留学生はアルバイトであり( “就労” は不可 )、技能実習生はその名のとおり技能を学ぶ実習生( 英語で言えば 「実習生」 = 「インターン」 )だ。 しかし、現実には合わせて50万人を超える規模の労働力として日本経済を支えている。

 日本で暮らす外国人の数は2017年末の時点で250万人を超えた。 これは名古屋市の人口( 約230万人 )よりも多い。 そのうち労働者は約128万人で、さいたま市の人口( 約126万人 )に匹敵する。 ともに法務省が統計を取り始めてから過去最高の数値である。 都内に限っていえば、いまでは20代の若者の10人に1人が外国人という割合だ。

 コンビニだけでなく、ドラッグストアやファミリーレストラン、ハンバーガーショップ、牛丼チェーンなどなど、さまざまな場所が働く外国人の姿であふれている。

 もちろん世界的に見れば、日常的に外国人が多いという状況は珍しいことではない。 だが、政府は 「断じて移民政策はとらない」 と明言してきたのに外国人労働者の数が増えている。 これはいったいどういうことだろうか。

 政府の方針をわかりやすくいえば、 「移民は断じて認めないが、外国人が日本に住んで働くのはOK、むしろ積極的に人手不足を補っていきたい」 ということだ。

 留学生や実習生ではもう不足が補えず、いよいよ正面から外国人労働者の受け入れを決めたということだろう。 しかし、ここに至るまでに十分な議論がなされたようには思えない。

 とりあえず10月下旬からの臨時国会には注目だが、消費税率が 3% → 5% → 8%、そして10%と段階的に高まってきたように、外国人労働者の受け入れ枠も( なんとなく )知らないうちに増えていくのかもしれない。


 留学生が労働力不足を補う現状

 多くの “コンビニ外国人” に取材をしたが、そのほとんどが日本語学校か専門学校に通う留学生だった。

 彼らは、 「原則的に週28時間まで」 のアルバイトが法的に許されている。 「原則的に」 というのは、夏休み期間などは週40時間のアルバイトが認められるためだ。 学生がより長く働けるように長期休暇が多いことをウリにしている日本語学校もある。

 週に28時間では時給1000円で計算しても月収は11万円ほどにしかならないが、世界的に見るとこの制度はかなり緩い。 たとえばアメリカやカナダなどは、学生ビザでは原則的にアルバイト不可、見つかれば逮捕される。

 つまり、コンビニなどでアルバイトをしている留学生は、学生であると同時に、合法的な労働者でもあるのだ。 彼らも仕事を求めているし、現場からは労働力として期待されている。 需要と供給を一致させているのは、日本の人口減に伴う深刻な人手不足だろう。 実際、留学生の9割以上が何らかのアルバイトに携わっている。

 いま日本は 「留学ビザで( 割と簡単に )入国して働ける国」 として世界に認識されている。 しかし、ここに大きな問題がある。

 日本語学校などに籍をおく留学生の多くは、入学金や授業料、現地のブローカー( エージェント )への手数料などで100万~150万円という金額を前払いする必要があり、その多くが借金を背負って来日しているのだ。

 借金を返済するためには働く必要がある。 だが、原則28時間という労働時間を守っていたのでは、生活費を賄うのがやっと。 中には強制送還覚悟で法律を破って28時間以上働く留学生もいるし、借金を背負ったまま帰国する留学生も少なくない。

 日本語学校を卒業して大学まで通い、日本で就職したいと願う留学生たちも、3割程度しかその夢をかなえることができない。


 留学生が労働力不足を補う現状 世界第4位の移民受け入れ国

 ユネスコの 「無形文化遺産」 に登録された和食も、いまや外国人の労働力なしには成り立たない。 コンビニに並ぶおにぎりや総菜は外国人が売っているだけでなく、製造工程においても多くの外国人の労働力に支えられている。

 深夜の食品工場を見れば、外国人の割合が高く、和食に欠かせないダシのもととなるかつお節やコンブの加工工場、さらには漁船にもいまや技能実習生が乗っている。 もちろん農家でも多くの実習生が働いている。

 現実として、外国人労働者抜きに日本経済はもう回らない。 わたしたちの生活は彼らの労働力抜きには成り立たない。

 OECD( 経済協力開発機構 )の発表では、日本はすでに世界第4位の外国人労働者受け入れ国である。

 国の政策とは別に、外国人との共生に取り組む自治体も増えはじめている。 横浜市では独自にベトナムの医療系大学などと提携して、留学生を迎え入れることを決めた。 近い将来、大規模な不足が予想されている介護職に就いてもらうための人材確保だ。 留学に関する費用や住居費なども市が一部負担するという。

 2010年から外国人を積極的に呼び込んでいる広島県安芸高田市の浜田一義市長はこう言っていた。
「今後、ウチのような過疎の自治体が生き残っていく道は世界中に外国人のファンを作ることだ。 『ガイジンは苦手』 と言っている場合じゃない。 多文化共生は私たちの必修科目です」
 個人としては、外国人の受け入れには賛成の立場だが、これまで国政レベルでも十分な議論がなされたとは思えず、彼らの生活保障に関する法整備など、受け入れの準備はほとんどされてない。 このままなし崩し的に受け入れを進めていいものだろうか。

 移民の問題を語るときによく引用されるスイスの小説家の言葉を最後に紹介する。

〈労働力を呼んだら、来たのは人間であった ――





( 2018.11.26 )

   


 日本では長年にわたる少子化の進行で若者が減少しているうえ、数少ない若者も大都市への集中が進行しているため、地方の中小企業を中心に人手不足が深刻になっている。 そこで政府は、2018年度に決定した 「経済財政運営と改革の基本方針」 ( いわゆる骨太の方針 ) に重点政策課題の1つとして外国人材の受け入れ拡大を盛り込んだうえで、2019年度からこれを実施すべく、出入国管理および難民認定法の改正を目指している。

 2025年頃には横浜の人口を上回る外国人

 総務省 「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」 によると、2018年1月1日の外国人人口は250万人。 2017年に17万人増加し、過去最高を記録した。 外国人人口の規模は、市町村別人口で全国第3位である名古屋市( 約220万人 )を凌駕するほどになっている。

 また、外国人人口の増加数の推移を見ると、2013年は東日本大震災の影響などからわずかにマイナスであったが、2014年以降は増加ペースが年々上がっている。 そのため、この増加ペースが続けば、外国人人口は市町村別人口第2位の大阪市( 約270万人 )をまもなく追い抜き、2020年代半ばには同第1位の横浜市( 約370万人 )に追いつく勢いだ。

 日本の総人口は、日本人の減少により2008年をピークに減少を続けている。 日本人の減少数は年々大きくなり、2017年は37万人に達している。 外国人の増加は日本の総人口の減少をなだらかなものにしているといえる。

 また、人口の構成を5歳階級別に見ると、外国人では20歳から39歳までで全体の半分程度を占めているが、日本人では同年齢層が2割程度にとどまっている。 つまり、外国人は日本人に比べて極めて若い年齢構成となっており、若い外国人の増加は日本の高齢化の進行を緩やかにしている。

 国立社会保障・人口問題研究所が2017年に発表した 「日本の将来推計人口」 によると、2060年の総人口は9284万人( 出生・死亡ともに中位推計を前提 )で、これは政府の目標 「2060年に総人口1億人」 よりもかなり少ない。

 一方、政府の提案する新たな在留資格による外国人労働者の受け入れ数の上限については、今後5年間で約34万人とされ、平均して毎年約7万人の増加が見込まれる。 2017年の実績である外国人の17万人増加に新在留資格による外国人労働者の年約7万人増加、さらに外国人労働者に帯同される家族の増加を考えれば、毎年25万人程度の外国人増加が実現可能性のある近未来といえよう。

 この25万人という数字は、前出の国立社会保障・人口問題研究所の推計の前提( 2015年までの外国人の動向をベースとしたもので、毎年の外国人の増加数は7万人弱と想定 )を大幅に上回っている。

 ここで国立社会保障・人口問題研究所の条件付き推計によると、外国人が毎年25万人増加すれば、2060年の日本の総人口は1億0411万人となり、日本人の出生率が高まらなくても政府目標が達成できることになる。

 さらに、新たに日本に来る外国人の多くが20歳から39歳までであることを考えると、外国人の増加は長きにわたって生産年齢人口の増加に直結する。 2060年の生産年齢人口は、2015年時点の外国人増加をベースにした推計では4792万人になるが、外国人が毎年25万人増加するケースでは5700万人に大きく上振れする。


 「移民政策ではない」 と言いつつ存在する 「事実上の移民」

 外国人増加の実態を探るために、法務省 「在留外国人統計」 から在留外国人数の在留資格別内訳を見てみよう。 2017年末で最も多いのは 「永住者」 で、75万人と全体の約3割を占めた。 これは近年の増加に注目が集まっている 「留学」 ( 31万人 )や、 「技能実習」 ( 27万人 )を大きく上回っている。

 永住者は、在留期限がないので在留資格の更新の必要がない。 就労の制限もほとんどなく、家族の帯同が認められている。 日本人の有する権利で永住者が有しないものは、各種参政権や一部公務への就労などに限定される。 永住者が 「事実上の移民」 とされるゆえんである。

 永住者の資格要件の1つに在留期間があるが、人手不足が深刻化したバブル期に受け入れた外国人への配慮などから、1998年に必要となる在留期間が原則10年に半減された。 これをきっかけに永住者は増加の一途をたどっている。

 現在、政府は今回の外国人材受け入れ拡大について 「移民政策でない」 ことを強調しているが、政府はすでに永住者の資格要件緩和などによって1990年代から受け入れた外国人の定着を容認する方向へ大きく舵を切っており、今や永住者という 「事実上の移民」 がすでに外国人の最大勢力であることを理解すべきであろう。

 永住者となるための在留期間は在留資格を変えても合計で10年に達すればよいので、滞在期限に上限がなければいずれ永住者になる可能性が出てくる。

 たとえば、日本での留学を終えて日本で就職する留学生の多くは留学という資格から技術・人文知識・国際業務という在留資格に移行するが、この資格は滞在期間に上限がなく更新が可能なので、近年増加中の留学生は日本での就職を通じて、永住者への道が開かれているといえる。 一方、近年増加しつつある技能実習の在留期間は徐々に伸ばされてきたものの、現在は最長5年で更新できないことが大きな課題となっており、今回政府はこの課題の解決に動いたといえる。

 そのうえで、滞在期間さえ満たせば無条件で永住者として認められるわけではなく、認定される前に犯罪歴がないことを確認され、かつ永住者として認定された後でも犯罪を起こせば出身国に強制送還される可能性が高いことも知っておくべき事実である。 日本で永住者に認定され、永住者として長く働いているということは、日本に貢献し続けている証左であり、そのような外国人により長く日本に貢献してもらえるよう便宜が図られるのは当然のことともいえよう。


 4月に新設される2つの 「移民」

 2019年4月から実施予定の新しい施策では、人手不足が特に懸念されている業種を対象に想定して、特定技能1号( 相当程度の技能 )、特定技能2号( 熟練した技能 )という在留資格が新設される。

 特定技能1号は在留期限は最長で5年で、業種ごとに定める技能水準と日本語能力水準に達しているかを判定する試験の合格を条件としている。 その日本語能力は、仕事において問題がなければよく、おそらく一定の期間学べば多くの外国人が合格できるレベルに抑えられるはずだ。

 その特定技能1号では家族の帯同を認められないものの、より高い専門性( 熟練した技能 )を有すると認められた者については在留期間の上限がなく( 更新は必要 )、本人が希望するかぎり日本で制限なく働き続け、家族帯同ができる特定技能2号へ移行できる。 この特定技能2号は永住者と似た在留資格ともいえるもので、現段階では受け入れのための試験が数年間行われない予定とされるものの、いずれもう1つの 「事実上の移民」 が増えていくことになる。

 また、注目すべきは現在の技能実習生は技能実習終了後、無試験で特定技能1号に移行できる予定であることだ。 技能実習で転職が認められなかったので、いわゆるブラック企業の存在が問題視され、 「不明」 という形での転職が横行していると思われる。 しかし、特定技能では同じ分野内での転職が自由である。 このような背景から、今の技能実習生のほとんどは特定技能1号に移行するであろう。

 さらに、近年増加している留学では、留学生に認められるサービス業を中心とする単純労働分野でのアルバイトを目的にした者も少なくなかったと思われるが、単純労働分野での本格的な就労が目的ならアルバイトより長時間の就労が可能な特定技能のほうが望ましいはず。 特定技能がサービス業の幅広い業種で認められるようになれば、留学よりも特定技能を選ぶ外国人が多くなりそうだ。

 今後、日本で働きたい外国人の多くは技能実習や留学といったやや遠回りな道を目指すよりも、まず特定技能1号の資格取得を目指し、さらにより長く働きたい外国人は特定技能2号への移行を目指すことになろう。

 この新たな在留資格の対象業種は農業、建設、宿泊、介護、製造業の一部などが有力といわれているが、この中で注目は宿泊であろう。 宿泊業は飲食、販売、接客、清掃などサービス業のさまざまな職種を内包しており、宿泊以外のサービス業にも外国人材の活用で大いに参考になるからだ。 また、宿泊業への技能実習生の受入は2017年から始まり、かつ日本において宿泊業に就職する外国人留学生は近年増加を続けており、宿泊業界は外国人の受け入れノウハウをすでに有しているといえる。

 したがって、今後は宿泊業での外国人労働者の新資格による受け入れが順調に進む可能性が高く、その際には宿泊業以外のサービス業でも新たな在留資格の適用を希望する声が大きくなることが予想される。 今回の制度改革は、サービス業に幅広く従事する外国人労働者を受け入れるきっかけになりそうだ。


 住民の過半数が外国人の自治体の誕生は時間の問題?

 今回の外国人材の受け入れ拡大は外国人の長期滞在者の増加につながり、日本の総人口の減少を緩和する効果もある。 その一方で、外国人の増加は、受入が拡大する業種や地域を中心にさまざまな影響を与えるであろう。 たとえば、外国人労働者の受入拡大が進む業種では、人手不足の解消が進むと期待される一方で、日本人労働者も含めた労働環境の改善が遅れる懸念がある。

 また、地域社会への影響も大きい。 すでに総人口に占める外国人の比率が10%を超える自治体( 政令指定都市の行政区を含む )は全国で10に上る。 外国人が毎年25万人増加すれば、2060年の日本の総人口に占める外国人の割合は1割を超え、中には住民の過半数を外国人が占める自治体も現れる可能性があろう

 そのため、外国人の増加は人口減少抑制の一助になる一方で、街づくりや行政などに外国人の声をどのように反映させるのかといったさまざまな課題に直面することにもなろう。

 前出の総務省の調査によると、日本人が減少している自治体の割合は市区の8割、町村の9割に上るが、一方で外国人が増加している自治体の割合は市区の9割、町村の7割に上る。

 たとえば、北海道夕張市は日本人減少率が市区でトップ( 前年比4.0% )である一方、外国人増加率がトップ( 同76.9% )となっている。 人口減少に悩む地方圏にとって、近年の外国人の増加は 「干天の慈雨」 であり、外国住民の受け入れ拡大が今後広がる可能性があろう。

 そのため地域社会では、外国人が家族も含めて暮らしやすくなるよう努力が必要になる。 地方圏の自治体は、外国人を雇う企業とも一体となってそうした対応を積極的に進めていき、政府もそれを支援していく必要があろう。





( 2018.11.15 )
 

 外国人労働者の受け入れを拡大するための出入国管理法改正案が審議入りした。

 政府は、来年度から5年間の受け入れを最大約34万5千人とし、初年度は最大約4万8千人とする見込みを示した。 業種別では介護が累計最大6万人などと説明した。

 だが、こうした数字は現時点での 「入り口」 の目安を示したにすぎない。 5年ごとに次の5年の見込み数を提示するというのでは、将来的に何人受け入れることになるのかが分からない。

 しかも、安倍晋三首相は人手不足が解消された場合について 「すでに在住する外国人の在留をただちに打ち切り、帰国させることは考えていない」 とも述べた。

 人手が足りないという理由で入国を認めるのに 「該当する仕事」 がなくなっても日本に住み続けることになる。 日本で別の仕事に就くことを認めるのならば、制度の趣旨そのものが根底から覆る。

 そもそも何を基準に人手不足やその解消を判断するのか。 産業の盛衰は世の常だ。 人口が増えていた時代でも、人材募集に苦戦した業種や企業は存在した。 人手が足りないというだけで、外国人を受け入れるのは安易に過ぎる。

 さらに問題なのが、日本人の雇用への影響だ。 産業界が外国人労働者に期待するのは 「安い労働力」 の確保であり、賃上げをしたくないという経営者の本音が垣間見える。

 政府は 「日本人と同等以上の報酬を雇用契約の基準とする」 としているが、各国をみれば、外国人に合わせる形で自国民の賃金水準が下がっているのが現実だ。

 安倍政権は経済界に賃上げを求めている。 安い労働力を大規模に招き入れることは生産性向上に資するのか。 政権全体としての政策にちぐはぐな印象を受ける。

 外国人労働者が母国に残した家族について、社会保障サービスを制限するための法改正は、通常国会以降となる。 こうした法改正は、外国人労働者の受け入れ拡大とセットにするのが筋だ。

 首相は国民への丁寧な説明を約束したが、制度上の課題やあいまいさは残ったままだ。 なぜ外国人を大規模に受け入れなければならないのか。 法案の目的は依然としてはっきりしていない。

 政府・与党は今国会での法案成立にこだわらず、土台部分をしっかり築き直すよう求めたい。





( 2018.12.06 )

   


 政府がゴリ押ししている入管法改正案が通れば、外国人労働者が大勢日本に入ってくる。 しかし、低賃金・長時間労働の劣悪業界に彼らを送り込むことは、徴用工問題や慰安婦問題に匹敵する、新たな人権問題を引き起こしかねない。
 このままの状況での外国人労働者の大量流入は、深刻な問題を引き起こします。人手不足なのは、そもそも待遇がブラックだから。そこに外国人を押し込もうという安易な発想は、国際的な人権問題に発展するはずである。

2025年の日本は地獄絵図!? 増える外国人は社会問題になる

 ある朝、目が覚めてテレビをつけたあなたの目に飛び込んだのは、もはや食傷気味となっていたいつもの話題だった。 建設現場で日本人上司から執拗な 「言葉の暴力」 を受けていたベトナム人の若者が、SNSに家族への遺書を残して自殺をしたというのである。

 先週は、福祉施設で働く中国人女性が、施設長から 「胸揉んでいい?」 「結婚しよう」 などと迫られ、それを拒否したら 「お前らのような外国人労働者はいつでも日本から追い出せるんだからな」 と脅された音声をウェイボー( 中国のSNS )にアップして大炎上したばかりだ。

 今回も、BBCやCNNをはじめ世界中のメディアが、 「日本がまた外国人差別」 なんておもしろおかしく取り上げるのは間違いない。 今や 「Black Company」 や 「sakusyu」 ( 搾取 )という言葉は、 「karoshi」 ( 過労死 )とともに世界に知れ渡ってしまっている。

 「外国人差別や低賃金労働を強いる国なんて他にもいくらでもある」 と、当初は欧米の理不尽なジャパンバッシングだと主張する評論家も多かったが、次第に皆 「あれ?そんなこと言ってましたっけ」 という感じで口をつぐんだ。

 日本中で無職の若者たちが無差別に外国人を襲う事件が続発し、 「外国人は出て行け!」 と声高に叫ぶデモも増え始めたからだ。 小学校では、 「日本の福祉目当てに来るな」 と外国人の子どもへのイジメが問題となっている。 大阪で万博開催を間近に控えているというのに、日本のいたるところで 「外国人への憎しみ」 が渦巻いているのだ。

 まったくどこのどいつだよ、 「外国人労働者」 で世の中が良くなるなんて言ってたのは。 いや、というより、7年前になぜ我々は、あの法案がどんな未来を招くのかということをもっと真剣に考えなかったのか ――。

 しょっぱなから一体なんの話だと戸惑う方も多いだろうが、これは2025年ごろ、あなたが目の当たりにしているかもしれない、日本社会の 「未来予想図」 である。

 現在、政府がゴリ押ししている入管法改正案は、低賃金労働の固定化や、社会保障をどうするのかなど、さまざまな問題が発生することが指摘されているが、実はその中で最も早く、誰の目に見てもわかりやすい形で顕在化してくることがある。

 それは、 「外国人労働者」 という弱い立場の方たちに対する、パワハラとセクハラの問題だ。


すでに外国人労働者へのセクハラ・パワハラは勃発している

 「認定外国人労働者第一号」 が来日をした当初は、雇用主たちも世間に注目されていることもあって、高度経済成長期の 「金の卵」 のように大事に扱うが、2年、3年も過ぎれば、日本の労働者に対しても行なっているようなパワハラ、セクハラがポツポツあらわれはじめるだろう。 そこに加えて、どの開催国でも起きている 「五輪不況」 によって、外国人労働者を受け入れた業界も苦境に陥ることで、かつての派遣労働者のように 「雇用の調整弁」 として、外国人労働者を 「雑」 に扱う企業が増えていく可能性が高いのである。

 なぜそんなことが言えるのかというと、冒頭の 「未来予想図」 のプロローグ的なことが、すでに日本のそこかしこで進行しているからだ。

 例えば、2014年6月に来日したガンボジア人の技能実習生は、東京都内の建設会社で配管工として働き始めたが、上司から 「アホ」 「死ね」 など暴言を吐かれたあげく、工具でヘルメットを思いっきり叩かれた。

 さらに、作業中に電気のこぎりで、左手人さし指の先端を切断したら、 「金欲しさにわざと切ったのだろう」 と執拗にディスられて、うつ病になり労災認定されている。

 茨城の大葉農家に住み込みで働いた実習生の中国人女性は、大葉を束ねる作業を 「内職」 とされ時給300円でこき使われたあげく、作業中に雇用主からお尻などのボディタッチをされた。また、 「結婚してくれ」 「子どもを産んでくれ」 などと囁かれ、入浴中に踏み込まれもした。

 もちろん、これは氷山の一角に過ぎない。 実習生の多くは、日本に来る際に渡航費などを借金として背負っているケースが多いので、どんな理不尽な目にあっても逃げられない。 貧しい寒村から身売りされた 「おしん」 のように、じっと耐え忍んでいるからだ。

 外国人留学生や技能実習生でさえ、まともな賃金と待遇で迎えることができないのが、今の日本の現実なのだ。 法改正によって外国人労働者の総数がドカンと増えれば当然、 「被害」 の声を上げようという人も増えていくのは、火を見るよりも明らかだ。


外国人労働者が増えるとブラック職場も増える理由

 なんてことを言うと、 「留学生や技能実習生の問題を解決するためにも、 『外国人労働者』 をしっかりと活用できるような法整備が待ったなしなのだ」 などと、もっともらしい反論をする方もいらっしゃる。 こうした方々は、 「労働者数が十分に増えれば、待遇は自ずと改善する」 という楽観論者でもある。 しかし、どんなに立派な制度設計をしようが、何十万もの労働者を受け入れようが、今の方向性では、100年経っても、外国人にパワハラやセクハラをする事業者を撲滅することはできない。

 一度でも、給料安くて待遇最悪、パワハラも蔓延みたいな職場で働いたことがある方ならばよくわかっていただけるだろうが、 「ブラック労働現場」 というのは、どんなに 「人手」 が足りてきたとしても、 「ホワイト労働現場」 に変わらない。

 大量の労働者が職場に流れ込んでも、賃金も低いし、待遇も悪いので、フットワークの軽い人は逃げ出すし、責任感のある人は潰れていく ―― という感じで、単に入れ替わりが激しくなるだけ。ブラックぶりはまったく変わらない。

 むしろ、職場環境は間違いなく悪くなる。

 ちょっと考えれば当然だ。 経営者からすれば、低賃金労働者がじゃんじゃん来てくれるのだから、賃金を上げる理由が見当たらない。 離職率が高いというのも裏を返せば、堂々と 「使い捨て」 にできるということだ。 つまり、労働者が増えれば増えるほど、福利厚生や労働環境の整備をする必然性がどんどん減っていくのだ。

 ここまで言えばもうお分かりだろう。 「外国人労働者」 という名の低賃金労働者がワッと入っても、人手不足に悩む業界がホワイト化することは断じてない。 むしろ、労働環境はより悪化して、彼らよりも弱い立場の留学生や技能実習生をさらなる苦境へと追いやることになるのだ。

 そして実はこれも、すでに発生している現象から容易に予想できる。それは技能実習生の 「失踪」 だ。

 現在、国会でも野党が追求しているが、外国人技能実習生が、受け入れ先企業と揉めて、姿をくらますケースが右肩上がりで増えていて、2017年には7000人を超えている。

 「真面目でよく働きます」 というのが謳い文句の彼らが、なぜ仕事をおっぽり出して逃げるのかというと、人間関係もあるが、最大の原因は 「雇用のミスマッチ」 が発生していることだ。

 現在の職場よりも、金払いのいい仕事があると聞いて、そちらへ流れていく。 つまりは、低賃金で辛い仕事に嫌気がさして、次の日から出社しなくなる日本の若者たちと、それほど変わらぬ力学が働いているのだ。

 これも冷静に考えれば当然だ。 国会や一部のインテリは、 「来るべき人口減少のためにも、外国人労働者の受け入れは待ったなし」 なんて感じで、外国人労働者のことを、日本人が思いのままに動かせる 「奴隷」 か 「部品」 のように捉えているが、彼らは我々となんら変わらない 「人間」 である。


外国人労働者受け入れの前にブラック業界の待遇を改善すべき

 人がやりたくないような辛い仕事はやりたくないし、低賃金でコキ使われるのは嫌に決まっている。 もっといい賃金、もっといい環境で働きたいと考えるのは当たり前だ。

 日本人は勝手に、賃金も低くて待遇も悪いがゆえに日本人の働き手が集まらない業界へじゃんじゃん送り込もうとソロバンを弾いているが、彼らにも職業選択の自由がある。 しょうもない低賃金で搾取したり、パワハラやセクハラが蔓延したりというブラック業界からは当然、どんどん離れていく。その動かぬ証拠が、7000人の失踪者だ。

 この雇用ミスマッチは、 「外国人労働者」 を何十万人受け入れたところで、なにも変わらない。 つまり、今回の法案をいくら気張って通したところで、 「人手不足」 は解消されず、不人気業界の 「ブラック化」 に歯止めはかからない、むしろ 「被害」 を訴える労働者はどんどん国際色が豊かになっていくので、冒頭のように、日本の労働現場における 「外国人差別」 を世界の隅々まで広めることにしかならないのである。

 こんな暗い未来が容易に想像できるのに、 「それでも日本人は戦争を選んだ」 というのと同じように、 「それでも日本人は外国人労働者の受け入れを選んだ」 と、避けられない運命みたいに格好良く押し通そうという人も多いだろう。

 ただ、太平洋戦争に負けるにしても、もっといい負け方があったように、外国人受け入れも、もっといい受け入れ方がある。 外国人労働者を決して受け入れるな、などと極論を言っているわけではない。 先ほども申し上げたように 「人手不足」 というのは、ブラック労働がもたらす雇用ミスマッチが大きい。 賃金アップや待遇改善という基本的な問題を、まずは国内の経済政策で解決しなくてはならないのだ。

 そこにまず着手をして、現在の留学生や技能実習生の賃金や待遇を上げてから、外国人労働者も受け入れようというのならばわかる。 しかし、ブラック労働という日本国内の問題をキープしたまま、労働力の頭数合わせ的に海外から受け入れても、必ずセクハラやパワハラという問題が表面化し、最悪、国際的な人権問題に発展する。

 つまり、受け入れるにしても、ちゃんと体制を整えてから受け入れなくては、我々の子どもや孫の世代にひどい負の遺産を残すといっているのだ。

 それを我々は歴史の教訓から、痛いほど知っているはずだ。


新たに徴用工や慰安婦問題に匹敵する国際問題を作りかねない

 ご存じのように現在、日本は韓国から徴用工問題を蒸し返されているが、 「外国人労働者の 『輸入』 が日本社会に100年の禍根を残す理由」 で述べたように、この朝鮮人労働者問題も元を辿っていけば、当時の日本企業が炭鉱採掘現場の雇用ミスマッチを解消できず、安易に 「労働力の輸入」 に頼ったからだ

 いまだに、何かにつけて政治的かけ引きにも利用される、 「従軍慰安婦」 の問題も同じだ。 「朝日新聞」 が担いだ吉田清治氏の嘘をいち早く指摘していた歴史学者の秦郁彦氏の 「慰安婦と戦場の性」 ( 新潮社 )によると、朝鮮半島には1910年代から日本人の芸妓、酌婦、娼妓という 「接客婦」 も多く進出していた。 しかし、戦況が悪化するにつれて 「日本人接客婦の減少を朝鮮人女性で埋めようとして」 ( 同書P42 )、貧しい山村から身売りされた朝鮮人女性を扱う朝鮮人女衒への依存度が増していったのだ。

 この構図は、日本人労働者が減少するブラック業界に、ベトナムや中国のブローカーが、貧しい村の人間をそそのかし、日本人の穴埋めをするかのように送り込んでいるのと、まったく変わらない。

 嘘だデタラメだ、といくら叫んでも、この2つの労働者トラブルが長い時を経て、いまなお日本を悩ます 「人権問題」 となっているのは、紛れもない事実だ。

 

  ―― 調70







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