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「このまま進むと太陽活動のピークが消えるかもしれない。 その可能性が、また少し高くなったと思います」ピークが消えると地球にどんな影響が及ぶのだろう。 「歴史的には、小氷期が訪れていますね」 という答えだ。 過去に黒点が激減したり、ほとんどゼロになった1790~1830年ごろ( ダルトン極小期 )や、1645~1715年ごろ( マウンダー極小期 )の地球は、気温が低下していたことが知られている。 ◇◇◇◇◇ 太陽は中心部で核融合反応が進む磁場の星。 黒点は磁力線が太陽表面を貫いている場所なので、その数には太陽の活動度が反映される。 安定期の太陽では、黒点数が約 11年周期で増減の波を繰り返す。 その増減をグラフに描くと、谷底から山の頂上( ピーク )へと上り詰め、再び谷底へと戻る波になる。 黒点の数は11年ごとにピークを迎えるのだが、その頂上がこの数周期にわたって、次第に低くなっているのだ。 各周期には、18世紀の半ばから通し番号が振られ、今は周期24のピークを過ぎたところだ。 このピークでの黒点数は約75。 約25年前に当たる周期22のピークでは約160だったので、半分以下への落ち込みようだ。 「 この変化を直線で見てみましょう 」。 研究者は周期22、23、24の頂上を結ぶ線を引いた。 右下がりの直線は、2030年を過ぎた所で、黒点数ゼロの横軸と交わった。 《このまま進むと太陽活動のピークが消えるかもしれない》 という予感は、ここから生じたものなのだ。 直線からは2026~27年ごろに訪れる周期25でのピーク黒点数は、25程度になると予測される。 ちなみに周期24での75という黒点数は、1906年の64に次ぐ少なさなのだ。 ◇◇◇◇◇ 黒点数の変化は、周期の長さにも表れている。 周期22までは谷から谷まで約11年だったのが、周期23では12.6年に延びている。 周期の変化は、頂上と頂上の間の長さでも読める。 周期22と23の頂上間よりも、周期23と24の頂上間の方が長く、14年になっていた。 ダルトン極小期のころの周期は13年、マウンダー極小期のころは14年になっていた。 《ピークが消える可能性が、また少し高くなった》 という、つぶやきの根拠は、最新周期24の情報が予測に反映されていることによるものだ。 今後、黒点数が増加に転じる可能性も残るが、趨勢としては期待しにくいだろう。 太陽の異変は、これだけでない。 最近、本来の南北2極に戻り始めたが、この3年間にわたって太陽の磁極は、赤道にも極を持つ4極構造になっていた。 マウンダー極小期の寒冷期にも4極構造が出現していたと推定されている。 4極構造の異変は日本が2006年に打ち上げた太陽観測衛星 「 ひので 」 によって確認された成果なのだ。 ◇◇◇◇◇ 月末には、2020年以降の世界各国による地球温暖化対策の取り組みを決める国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議( COP21 )が開催される。 究極の目標は、今世紀末の気温上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑えることだが、マウンダー級の極小期が再来すれば同等幅の気温低下が起きる。 温暖化問題が浮上した20世紀後半は太陽活動の極大期だった。 現在ほど太陽研究の強化が必要とされている時代はない。 |
![]() 太陽黒点の400年間の歴史。 黒点の数をウォルフ黒点相対数( en:Wolf number )の値で集計したもの。 1790年から1820年はダルトン極小期、1645年から1715年はマウンダー極小期 ★ 太陽黒点データセンター |
黒点がゼロの太陽(左)。今年は5月20日までの半数以上の日数を、こうした無黒点日が占めている。右は黒点が多く出現している太陽 |
近年、地球規模で続発する異常気象が気にかかる。 温暖化防止を目指すパリ協定開始が迫る中、今冬の米国は大寒波に見舞われた。 昨冬の北陸地方の豪雪では福井県内で大量の車が立ち往生している。 昨夏は国内で40度超の猛暑が続くなどして熱中症での搬送が過去最多を記録。 大型台風も相次ぎ、西日本豪雨では多くの命が奪われた。 炎暑は海外でも発生し、カナダやインド、ギリシャなどを熱波が襲った。 そのギリシャには今年1月、氷点下23度の寒波が押し寄せ、アテネに雪が積もった。 地球の寒暑が、両極端に向けて暴走している印象だ。 |
増加続く二酸化炭素 |
異常気象の背景には、二酸化炭素に代表される温室効果ガスの増加があるとするのが、科学界の大勢だ。 国連の 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」 がこの立場だ。 大気中の二酸化炭素は20世紀を通じて増え続け、1960年ごろに315ppmだった濃度が今では400ppmを超えている。 二酸化炭素には毛布のように地球を保温する力がある。 世界の平均気温は100年間で0.7度ほど高くなっており、二酸化炭素などの増加が原因と説明されている。 |
200年ぶりの低下 |
その一方で、太陽の活動は、この30年ほど低下中。 1800年ごろ以来の異変だ。![]() と言っても、太陽から地球に届く光のエネルギー量は、この間も安定していて変わっていない。 変化が確認されているのは太陽表面の黒点数だ。 中心部で核融合反応が進む太陽は、磁場の星。 その磁力線が太陽表面を貫いている場所が黒点なのだ。 だから、黒点数は太陽の活動度の 「表示目盛り」 となる。 多いほど活発だ。 黒点数には、約11年周期(サイクル)で増減を繰り返すという性質があるのだが、問題はその様子をグラフに描いたときの各サイクルの頂点が次第に低くなってきていることだ。 1980年ごろにピークを迎えたサイクル21に比べてサイクル22のピークは低かった。 そうした低下がサイクル23、24と連続して起きている。 現在は、サイクル24の終盤期。 2020年ごろから始まる次のサイクル25の規模が気がかりだ。 |
次周期も低調の予測 |
「私たちの研究チームの解析からは、サイクル25での太陽活動は、サイクル24と同程度か、さらに弱くなる可能性が高いという結果が得られています」 名古屋大学宇宙地球環境研究所の今田晋亮講師が教えてくれた。 2025年ごろにピークを迎えるサイクル25でも黒点数の回復は望めないのだ。 今田さんらは、太陽表面での磁場の輸送をコンピューターシミュレーションすることなどで次周期の太陽活動度の早期予測を可能にしている。 4月には米海洋大気局(NOAA)などの太陽研究グループも同様の予測を表明した。 |
70年代には寒冷化論 |
ピーク黒点数の減少で気になるのは、1645年からの70年間と19世紀初頭など、過去の太陽活動不活発期の気候は、いずれも寒冷であったことだ。 団塊の世代以上の人なら覚えているはずだが、1960~70年代にも豪雨や気温低下などの異常気象が続き、世界中で地球寒冷化が心配されていた。 1970年ごろにピークを迎えたサイクル20の黒点数は、サイクル19から一気に半減していたのだ。 だが、サイクル21で黒点数は復活。 それとともに80年代後半には気候に対する危惧も地球温暖化へと一変した。 |
多様な視点が必要だ |
太陽活動の低下による寒冷化と二酸化炭素による温暖化。 両者のせめぎ合いが当今の気候のような気がしてならない。 IPCCなどは地球に注ぐ太陽の光エネルギーが一定なことを理由に、気候変動に及ぼす太陽の影響を軽視しているが、それでよいのか大いに疑問だ。 黒点の観測が始まった17世紀以降の歴史記録は、地球の寒冷期と黒点減少期の見事な一致を示しているではないか。 平安時代は温暖だったが、そのころ二酸化炭素を排出する産業が活発だったのか。 気温が上昇した20世紀は大気中の二酸化炭素濃度が増加した時代だったが、全般的に太陽活動が活発な時期でもあった。 今のように太陽磁場が弱まると地球に注ぐ宇宙線が増加し、その作用で雲が増えて気温が下がったり、豪雨を促進したりするという研究報告もある。 二酸化炭素のみしか見ない気候変動対策では、天に唾する結果にもなりかねないと思うのだが ……。 気候変動は温暖化よりも寒冷化の方がはるかに怖い。 |