最近学校とナイフの問題が報道されています。 学校と刃物の問題は20年程前にもありました。 鉛筆を削るのに刃物を持っていると、鉛筆を削るときに怪我をする危険があるのとの理由から、刃物追放の運動がありました。 教室や家庭に手回しや電動の鉛筆削り器が行き渡りました。 子供の周りから刃物を無くすことが、問題の解決方法とされて採用されました。
 その以前から一部のナイフ愛好家が主にアメリカのカスタムナイフや、それと同じようなもので国内で製作されたナイフを購入することが行われてきました。 これらの殆どは狩猟用のハンティングナイフと、武器やサヴァイバル用としてのファイティングナイフの形状をしています。 レジャーとしてのアウトドアー生活への関心が高まったこともあり、次第に、これらのナイフに対する関心が一般化し大量に供給されるようになってきました。 狩猟の実態や、戦争の実態の無い日本では、ハンティングナイフやファイティングナイフの出番は100%ありません。 家の中に置いて眺めたり、手入れをしたりして楽しむべきもので、外に持ち出すものではありません。 ましてや人や動物に刃を向けるものではありません。 この様な物を大量生産して供給することも問題です。

 本来刃物の使用は、火の使用と共に人間の能力を飛躍的に大きくして他の動物に対して人間が君臨出来た大きな要因でした。 刃物は大変有用なものである反面、大変危険な物です。 昔から刃物は用途を明確にして、それに適する形に製造され、必要な人のみが所有し、注意深く使用し、人間の肉体労働の辛さを軽減し、労働効率を飛躍的に向上させて来ました。 労働の種類に対し刃物の形状は特有の形状に発達して来ました。 農業には鎌、林業には鉈、猟師はハンティンナイフ( こより、まきり )、大工は各種の大工道具、板前や台所には包丁、髪結いに剃刀、仕立師に鋏と針、武士に刀と言うように、その他いろいろの作業について、特有の形状の刃物が作られ使用されて来ました。 万能の刃物と言うものはありません。 あるとしたら、それは間に合わせでしかないのです。 折り畳みナイフ( フォールヂングナイフ )でも、電工ナイフやマリンナイフ( 帆船の乗組員が使う )のように使用目的に特化して危険性を減らし、必要な機能を備えているものもたくさんあります。 しかもこれらの職業に関係した刃物は、長期間にわたり、使用方法や、手入れ方法や、危険性を親方や先輩にしっかり教えられ、実地での経験も十分つんであるため、危険性を最小限にして、効果を最大限にしているのです。
 本来、刃物は貴重で神聖な物であるのです。 今の学校とナイフの問題はこれらの刃物の利用の原則を無視している所に多くの原因があるようです。 所謂バタフライナイフの原形はフィリッピンの武道に使用されいた物と本に載っていますが、形状はまさにファイティング用であり、現代社会では全く用途のない刃物であります。 目的もなく、手入れ方法も知らず、使い方も知らず、危険性の認識もなく、雰囲気だけで持っているのは、厳しく避けなければなりません。 分別ある人が趣味として家に置くのが限界です。 刃物との付き合いをさせないようにして来た教育現場の問題でもあります。

 刃物と衣服とは大変似ている所が在ります。 衣服を買ってきて着続けることは、まずないと思います。 汚れたら洗濯し、ボタンが取れたら付け直すなどいつも手入れをして、良い状態にして着ているはずです。 刃物も同じように、使用したら汚れを落とし研ぎ直して、良い状態で使うようにしたいものです。 刃物と衣服とは大変似ている所が在ります。 良い衣服は何時も着用されて、何回も洗濯されそのうちにあちこちが傷み出しぼろぼろになって捨てられます。 刃物と砥石も使い易いものは何時も使われ砥ぎ減らされ摩耗してそのうちに使用出来ないほど小さくなって捨てられます。 悪い衣服は着用されることなくたんすの肥やしになって残っており、使い勝手の悪い刃物や砥石は使用されることなく形を変えずに何時までも物置の隅に残っています。


姿

幼少の時から刃物と接する様にしたいと思います。 最初は先の尖っていない鋏がよいと思います。 よく調整された鋏は刃は鋭利でなくてもよく切れ危険は少ないものです。
刃物を手渡しする時は必ず把手を相手側に向け、刃を手前にするようにしつけましょう。 こうしてどんな時でも絶対に刃を人に向けない様に教えましょう。
刃物は何時も研いで使う物であることを、実際に砥ぐ所を見せて教えましょう。 切れない刃物は危険で大怪我の原因になります。 切れない刃物を使うとどうしても力を入れます。 しかも切れない刃物は切る物への食い付きが悪く滑るのでこの時に思わぬ怪我をするのです。
刃物と砥石は一体の物で、その刃物に適した砥石を買い求めて時々砥いで刃物と砥石を何時も良い状態に保つようにしましょう。
刃物は使用目的に合った物を使いましょう。 間に合わせの物で済ませようとすると、自分も苦労するし、作業の出来も悪いし、時間も掛かるし、刃物を壊したり、場合によっては怪我をすることさえあります。 切れない刃物も同じです。
例えば、レジャーとしてアウトドアー活動するとき、ハンティングナイフは格好は良くても使い勝手は良くありません。 小さな包丁と鉈の組み合わせの方がはるかに使い勝手がよく安全にきれいに仕事が出来ます。
小学校高学年や中学校で使う刃物としては、切り出し小刀や肥後守ナイフが適していると思います。 切り出し小刀は片刃で木を削るのに適しており、肥後守は両刃で竹を割るのに適しています。 しかし学校では刃物を使用する前に、刃物の取り扱いの基本をしっかり教えなければなりません。 まず、先生の教育が先かもしれません。
刃物は家に置いとく時でさえケースや鞘等に収めて定めた所に収納しましょう。 家の外に持って出るときには使用する時まで二重にケース等に入れて運搬しましょう。 ポケットに入れて持ち歩いたり、腰に下げて持ち歩いたりすることは絶対に止めましょう。 職人さん達も必ず二重に何かに収めているようです。 道具を大切にすると同時に安全に配慮していると思います。
刃物を大切にすれば、刃物は本当に良く働いてくれます。 可愛がって良く働いてもらいましょう。 正しく使えば刃物は危険でなく、安全で有用なものです。