金銭教育


日本の家庭から完全に抜け落ちている 「お金教育」

◆ 欧米では、当たり前のように行なわれている

 周囲を見渡してみると、日本の子どもたちは、本当にお金と縁遠い環境で育っているなと思います。 親の保護下にある間に、お金に触れる機会がはたしてどれくらいあるでしょうか。 「 お店屋さんごっこ 」 のオモチャのお金では、話になりません。

 「 ごっこ遊び 」 もしないよりはいいかもしれませんが、せっかくなら、早いうちから 「 本物のお金 」 に触れさせてあげてほしいと思います。

 その点、アメリカの子どもたちは、もっとお金と親密です。

 たとえば、お小遣いが報酬制であるという家庭の話は、よく聞きます。 ゴミ出しをしたら何ドル、ベッドメイキングをしたら何ドル、ママの料理を手伝ったら何ドル、といったお小遣いの支給方法が、ごく普通の一般家庭でも行なわれています。

 ガレージセールで、年端もいかない子どもがレモネードやホットドッグを売っている風景も日常茶飯事です。 10代になりたてくらいの女の子が、近所の奥さんがちょっと出かける間にベビーシッターをして数ドルの報酬を得る、といった話もよく聞きます。

 日本では、アルバイトは高校生からとほぼ決まっていますが、アメリカの子どもたちは、こうして幼いころから 「 自分でお金を稼ぐ 」 という体験をしているのです。

 ほんの数ドルであっても、 「 自分でお金を生み出す 」 という体験は貴重です。

 家庭やご近所さんという小さな 「 社会 」 にかかわることで、お金のやりとりが生まれる。 この感覚は、将来、自分がもっと大きな社会にかかわることでお金を稼ぎ、自活していくということを、リアルに想像する源になります。

 また、そのわずかなお金を、使うのか、貯めるのか、はたまたそれを何かの元手とするのか。 それを考えることで、ごく自然に、お金を生む、貯める、殖やすという発想も生まれます。 こうしてアメリカの子どもたちは、日本の子どもたちよりずっと早くから投資マインドが育ちやすい環境にあるのです。

 日本では、お手伝いに報酬をつけることに賛否両論あるようですが、私は、とてもいい教育だと考えます。 自分の行動、もっといえば 「 貢献 」 によってお金が生まれるという体験は、ごく初歩的なお金の教養になるからです。 「 お金は降ってくるものではない 」 ということを子どものころから理解しておくのは、大切なことです。

 といっても、日本では月々、決まったお小遣いをあげることが一般的ですから、いきなりお小遣いを報酬制にするのは難しいかもしれません。 であれば、やはりまずは、日常の会話のはしばしに、 「 お金 」 というテーマを織り交ぜていくといいでしょう。

 そこで問題となるのは親の教養ですが、それ以前に問わねばならないのは、働く親がどれくらい子どもと接しているか、ということです。

 たとえば、銀行や証券会社など、金融ビジネス系の仕事をしている親ならば、かなりのお金の教養が備わっているはずです。 ところが、朝早く出かけて夜遅くに帰ってくる毎日で、一番よく見るのは子どもの寝顔 ...... なんて生活では、せっかくの知識や体験を子どもに伝えることができません。

 実際、大手の証券会社に勤めているけれど、子どもとはいっさい、お金の話をしたことがない、という話はよく耳にします。

 子どものほうは親の仕事の話を聞いたことがないから、関心を持たない。 当然、お金の教養が身につくはずもなく、親がくれたお金を、ただただ消費に回すのみ ......。

 せっかく親に豊富な知識と体験があるというのに、教育に生かしていないとは、なんともったいないことでしょう。

 もし、この親が週に一度でも早く帰ってきて、子どもとテーブルを囲みながら自分の仕事の話をしていたら、それだけでも、子どもはお金の教養をぐんぐん身につけていくに違いありません。

 いわんや、自分にはお金の教養がないと感じている親であれば ...... 厳しいことをいうようですが、よりいっそう意識を改め、家庭教育にあたらねばなりませんね。

 子どもの幸せのために、まず親がお金の教養を身につけること。

 と同時に、そもそも働いている親は、どれくらい家庭教育にかかわっているのか。

 こと 「 家庭 」 と 「 仕事 」、 「 子育てする親 」 と 「 働く親 」 を分けて考えがちな日本の風潮のなかでは、こんな原点から問いなおさなければいけないのかもしれません。

 お金の教養を身につけるというのは、いってみれば、親子でスイミングスクールに通うようなものです。 子どもに教えるために、親が少しリードしておく必要はありますが、子どもと接する時間をもっと増やして一緒に体験し、うまくできるようになっていけばいい。

 そんな意識で、お金の教育を始めていただければと思います。


1.幼児・幼年の子供に対して
金銭教育は、幼児時代からを始めることができます。幼児が△△が欲しいと言うと、そのためには、対価( 欲望の代償・お金 )が要る旨を、そっと教えます。次いで「 お金は、雨のように天から自然に降って来るものではない。お金を手に入れるには、それなりの努力が要る 」ことを年齢に応じて教えます。
人間は皆、父も母も、お金( 金銭 )を得るために、つらいことを辛抱して毎日毎日頑張っていることを、伝えることが非常に重要です。玩具や食べ物を欲しがれば、些細なことでも手伝いをさせ、躾( シツケ )教育をし、その後に与えます。
例えば、郵便受けまで新聞を取りに行かせる、玄関にある一家全員の靴を揃えさせる、電灯を点灯( 消灯 )させる、買い物カートから荷物を取り出し然るべき場所に運ばせる、両親の出勤・帰宅時には必ず玄関まで行き挨拶( 行ってらっしゃい・お帰りなさい )をさせる、他人からお金・物品を頂いた時は心からお礼を言う、等々日常のありふれた案件で充分です。
少し成長して小遣いを渡す年齢になると、金銭教育の大切さは一層増します。お金には、入り( 収入 )と出( 支出 )のバランスが肝要なことを、そっと教えます。子供は、受取った小遣いの範囲内でしか使えない、と先ずはっきりさせます。家計の基本は、入り( 収入 )の範囲内で、出( 支出 )を計画することです。
子供の時の金銭教育がしっかりしていれば、必ず金銭感覚の優れた青少年が育ちます。過大債務で苦労をする危険は、大幅に減少します。もちろん両親の見本が健全なことは、当然の前提条件です。
2.学齢期の子供に対して
幼稚園年長組・小学校入学頃になると、金銭を管理する感触を教えます。みんなが相応の苦労をして( 辛くとも働いて )、やっとお金を手に入れていること、楽をしてだまし取っては良くないこと、その場の欲望でなく、先のことを考えて効果的に使うこと等を、両親が見本を示し実践することが大切です。
お小遣いを管理するため、本人名義の預金通帳を作ってやり、基本は子供に任せ両親は忠告するだけに留めます。残高が増える喜びを体得させることが重要です。
家事でもお使いでも、幼い弟妹の世話でも、家族にとって役立つことを、加勢させて対価( 小遣い )を支払うようにします。ただ単に金銭を与えるのは、極力避けます。祖父母や親戚からの金銭プレゼントは、年に1度限りと減らすよう、事前打ち合わせをして、子供の金銭的自立を促します。
「 金銭は川 」、多すぎると管理できず洪水( 浪費を体験し、後で後悔 )となり、不足すると( 干上がって )飲み水・灌漑用水( 生活資金 )にもこと欠きます。「 分相応が一番大切だ 」と教えることです。日本の学校では、「 金銭 」を避けて通り、この面の教育がありませんので、家庭での金銭教育が絶対必要です。成人してからの金銭関連犯罪の素は、70~80%子供時代の金銭教育次第で決まります。
3.小学校・中学校の子供に対して
この年齢になると、お金の値打ち・有り難さが分かるようになって来ます。お金があると、当面の欲望を満足( 欲しいモノを手に )できるからです。でも、使い方の出発点を誤ると、将来にわたり、金銭がきっかけで失敗を繰り返すこことなりかねません。大人になって、金銭問題で悪に走る人の多くは、この辺に源流があると思います
本人名義の預金通帳を作ってやっていますが、「 何時・何に使うか 」を自己申告させます。できるだけ本人の希望を入れてやることが必要ですが、かと言って、金銭の使い方が、軌道に乗るまでは、本人の好き勝手は、絶対いけません。全く不適正であれば、断固止めさせる勇気が必要です。「 金銭は使い方によって、良くも悪くもなる 」からです。
「 金銭は欲しくなると、底がない性質を持っています 」ので、野放しに小遣いをやったり、欲しいモノを全部買い与えては、絶対にいけません。収支のバランス( 程合い・釣り合い )が、肝要である旨を、両親が家計簿を見せる等で、身をもって教えることです。
専らお金を貯める( 増やす )ことに、喜びを見いだす子がいます。この場合、「 金銭は、目的達成の道具( 手段 )の一つであって、道具に支配されてはならない。お金を貯めること自体を目的として追求してはいけない 」と教えます。「 お金は堆肥( 肥料 ) 」なのです。うまく使用すれば、翌年益々豊かになりますが、使わずに放置すると、腐って臭くなります。金銭は、有効に使って初めて活かせるものとなります。
一方、お金があれば、後のことは全く考えないで、全部使おうとする子もいます。「 お金を粗末にするのは絶対にいけない。世の中のみんなが、金銭を手に入れるのに、どんなに苦労( 上下左右に自己を殺して我慢 )しているか 」を教えます。金銭は、一歩間違うと、人生の落とし穴( 犯罪 )に結び付くのです。世の中の犯罪で、金銭と無縁の犯罪に限定すると、件数が激減( 革命的減少 )します。
人間と他の動物との最大の違いは、「 金銭の心配 」をするかどうかです。お金を卑しんだり、避けたりしないこと、上手に活用すれば、本当に強い忠実な下僕として、一生仕えてくれます。子供の時の金銭教育をしっかり叩き込んでおけば、きっと子供のためになります。
ちょっとした手伝いやアルバイトで、お金を稼ぐ喜びを味合わせるのは、とても良いことですが、学校の勉強に影響するに至りますと、逆効果でして、生徒としての本分が、最も重要です。  学校でやってくれない「 金銭教育 」を補完するのは、家族( 特に両親 )しかありません。日本の教育で一番欠けているのは、「 金銭教育・金銭哲学・金銭対処法 」なのです。
4.高校・大学の子供に対して
金銭のことは、相当分かって来ています。しかし、金銭教育を全く受けず、家庭での慣例もバラバラなため、自分なりに分かっている積もりで、好き勝手な方向に進んでいることが問題です。
お金が不足すると、親や家族が何とかして呉れることに、依頼・依存して( 甘えて )いる場合が極めて多いです。「 魚を欲しがっている人に、ただ魚を与えてはなりません。魚の釣り方を教え、自分で釣るようにし向けることです 」高校・大学の時期には、このような金銭教育が必要です。
最近女の子を中心に「 援助交際 」等と呼ばれている、快楽的・一時的アルバイト( ? )が流行しています。自分の身体を餌代わりにして、魚を釣るように「 お金を入手 」する、実に困ったことが発生しています。両親家族は、子供が収入に見合わない金銭を所持していたり、分に合わない使い方をしている場合は、よく観察して原因を確かめることです。頭ごなしの追求は、逆効果の場合が多いです。
金銭教育は、数学や理科の問題のように、確定的正解を求めることは極めて困難です。ところが、「 金銭の扱い方は、人生で最重要の課題である 」のは事実です。一途な金儲け主義( 分不相応な金銭の獲得願望 )は、その人の人生を損なうことが多々あります。棚ぼた式金銭入手( 宝くじ・賭博性のもの )は、有っても「 あなた限り 」とし、子供には絶対にお奨めできません。
本当に難しいのは「 使い方 」です。その家庭が貧乏なら、金銭を「 稼ぐ、儲ける 」ことを先行せざるを得ませんが、普通以上の家庭では、上手な「 使い方 」を考えることがより大切です。金持ちか貧乏人かが、直ぐに分かるような「 使い方 」は、よくありません。ただ単に金銭元本を減らしても、「 使った 」ことになりません。
人生の最後までに、どれ程沢山の金銭を有意義に使ったかで、「 金持ち 」の値打ちが決まります。そんなことを、子供と一緒に考える機会を作って、考え方を練っておけば、必ず将来の為になります。あなたの懐具合にかかわらず、ご家庭にふさわしい金銭教育を実施なさって下さい。