( 2018.11.03 )

  


 体と心の疲れは 「食」 で予防・回復することが可能です。 そんな 「滋養食」 の中から、高血圧予防や整調作用など数々の健康効果が認められるのが、あの食品「お酢」です。

塩分を控えるよりも酢を毎日とるほうが効果実感


体と心の疲れが消えていく「滋養食」 お酢
 お酢には数々の健康効果が認められています。

 もっとも有名なのは高血圧予防です。

 お酢の酢酸には、血圧の上昇を抑える働きがあるのです。 酢を大さじ1杯( 15ミリリットル )を、毎日とると血圧が下がることが確認されています。 大さじ2杯とれば、その効果はわずか数日で現れます。

 ただし、酢をやめてしまうと、血圧はもとの状態に戻ってしまいます。 少し大変ですが、毎日大さじ1~2杯をとることが大事です。

 「高血圧対策には塩分を控えなさい」 とよくいわれますが、酢を毎日とったほうが、目に見える効果が実感できるでしょう。


酢は腸内環境を整え腸の働きをより活発にする

 また、血中の総コレステロール値が高い人を対象にした実験でも、酢の健康効果が実証されています。 酢を毎日大さじ1杯とった人はそうでない人に比べ、血中の総コレステロール値が低下していたのです。 さらに、酢をとることでカルシウムの吸収率が高まるので骨粗しょう症予防にもなります。

 私がとくに注目しているのは、お酢の腸内環境を整える効果についてです。

 私たちの腸には、約200種100兆個もの細菌がすんでいます。 彼らは仲間の細菌たちと集団をつくって生息しています。 その姿はまるで色とりどりの花が咲き誇るように美しいことから 「腸内フローラ」 と呼ばれています。

 腸内細菌は、その働き方から便宜上 「善玉菌」 「悪玉菌」 「日和見菌」 と分類されています。 腸内フローラは 「日和見菌7割、善玉菌2割、悪玉菌1割」 が理想のバランスです。

 腸名フローラが理想のバランスに保たれていると、腸内環境は整います。 短鎖脂肪酸をたくさんつくり出せるので、腸の働きがより活発になります。

 お酢には、ビフィズス菌のエサになる 「グルコン酸」 が豊富です。 ビフィズス菌は善玉菌を代表する仲間の一種で、嫌気性という酸素を嫌う性質を持ちます。 よって、酸素の少ない大腸内に多く存在します。

 お酢に含まれるグルコン酸を大腸に送ってあげることは、善玉菌の繁殖力を高める効果があるのです。 じつは、大腸内は、もともと悪玉菌が繁殖しやすい環境にあります。 悪玉菌は大便をエサに繁殖していくからです。

 悪玉菌が優勢になると、大腸内での腐敗が進み、有害物質をつくり出します。 有害物質は腸壁の働きを滞らせ、腸のなかを汚します。 そうして悪玉菌たちは、自分たちがすみよい環境をつくっていきます。

 しかし、ビフィズス菌のような善玉菌が大腸内で繁殖していると、悪玉菌は異常増殖できなくなります。 善玉菌優勢に腸内フローラが整うと、短鎖脂肪酸の生成量が高まるからです。

 短鎖脂肪酸は酸性の性質を持つため、善玉菌が増えれば腸壁が酸性に整います。 悪玉菌は中性からアルカリ性の環境を好み、酸性の場所では増殖力を停滞させます。 反対に、善玉菌は酸性の場所を好み、増殖力を高めるのです。

 こうした理想の腸内環境を築くうえで、お酢のグルコン酸はとても有効なのです。


1日1杯のリンゴ酢お湯割りで腸は驚くほど元気に

 ただ、お酢がいくら腸の健康によいといっても、原液のまま飲んではいけません。 酸が強いあまり、口の中や食道、胃の粘膜などを荒らしてしまいます。

 酢の物にして摂取しますが、ドリンクにして飲む人もいるでしょう。 最近は 「そのまま飲める酢」 も多く流通しています。 ただ、市販で売られている 「そのまま飲める酢」 は飲みやすいように、食品添加物や合成甘味料が加えられていることがあります。

 それならば、添加物を含まないリンゴ酢などのフルーツ酢に、大さじ1杯のハチミツを加え、お湯で割って飲んではいかがでしょうか。

 お湯で割ると腸が温まり、蠕動運動も活発になります。 1日1杯、リンゴ酢のお湯割りを飲むだけでも、腸は驚くほど元気になってくるでしょう。








塩分を控えるならパンよりごはん

 40歳から74歳の日本人の2人に1人が高血圧と言われています。 ですが、このうちどれほどの人が危機感を持って食事に気を配っているでしょうか。 赤信号、みんなで渡れば怖くない、といった様子で、みんなも同じなら怖くない … と楽観視してしまいがちなのが高血圧かもしれません。

 血管は栄養と酸素を運ぶ大事な役割を果たしていますが、血圧が高い状態が続くと、その大切な血管を傷つけてしまいます。 そして、いうまでもなく、高血圧は動脈硬化を招き、動脈硬化がすすむとさらに血圧が高くなるという悪循環に …。 脳卒中、心臓病、腎不全などを引き起こす要因ともなります。


高血圧&予備軍かどうか、分かる!5つのチェックリスト

「薄味好き」と自分では思っていても、知らず知らずのうちに濃い味に慣れている方も少なくありません。 今は血圧の数値に問題がない方も、次の項目にひとつでもチェックがついたら黄信号です。
□ ラーメンの汁を飲み干せる
□ 外食をした後に喉の渇きを感じることがない
□ ドレッシングがかかっていないサラダなんて食べられない!
□ 一口食べる前にとりあえずソース( しょうゆ、マヨネーズなど )をかける
□ お皿にのっていたソースは全部きれいになくなる
 本当に薄味が好きな方、普段から自炊が多い方からすると、上記の項目にチェックがつくような食べ方はかなり “キツイ” はずです。 短い時間でランチを済ませ、手頃でおいしいと思えるお店や料理を選んでいるうちに、いつの間にか濃い味に慣れてしまうのも自然といえば自然なことでしょう。 でも、その期間が長いほどに減塩する大変さもより深刻になってしまいます。 濃い味に慣れていることに気がついたら、血圧という数字に表れる前に、選ぶものを変えていきたいものです。


かけすぎ注意!あの調味料の塩分量は?

  「日本人の食事摂取基準」 ( 2015年版 )によると、1日の食塩摂取目標量は男性で8g未満、女性で7g未満です。 すでに高血圧だという方の食塩摂取目標量は、それよりもさらに少ない6g未満。 この目標量を達成するのは、実際の食塩摂取量との開きが大きい分だけ難しくなります。 平成25年の国民健康・栄養調査によると、平均食塩摂取量は、男性は10.9g、女性は9.1gですから、目標量を達成するには、男性であれば2.9g、女性であれば2.1gの減塩を意識しなければなりません。

 では、食塩1gに相当する量を調味料別に見てみると、どのくらいなのでしょうか。

 まず、ランチタイムでの使用頻度が高そうなとんかつソースは、大さじ1杯で食塩1gを含んでいます。 とんかつ自体にすでに下味で塩味がついているのに、そこへさらにとんかつにもキャベツにもソースをかけて、お味噌汁やお漬物まで食べていたら、たった1食で1日の摂取量の2分の1を超す勢いです。 せめて添え物のキャベツはソースなしでいただくくらいでないと、揚げ物のセットメニューは気をつけた方が良い選択といえるでしょう。

 一方、カロリーは高いですが、マヨネーズは大さじ3と3分の2弱で食塩1gと、思ったほどには高くないという印象を受けるかもしれません。 そして、濃い口しょうゆは大さじ3分の1強、薄口しょうゆなら大さじ3分の1で食塩1gと、少量でも多くの塩分を含んでいることがわかります。

 しょうゆやソース、マヨネーズなどは、お料理に直接 “かける” のではなく、添えるようにおいて、 “つけて” いただくようにするだけでも摂取量が変わってきます。 とんかつにソースをかけるとき、点、点、点 … と少しずつかける方はなかなかいないですよね。 線を描くようにかけてしまうものだからこそ、 “かけるのではなくつける” を鉄則にしてください。

 もしも自炊をすることが多いのであれば、しょうゆをおだしで割るようにすると( 1:1くらいに )おいしく減塩ができるでしょう。

 他にも自炊で注意してほしいのはコンソメなどのスープの素。 コンソメは2分の1個で食塩1g分です。 簡単においしく仕上がるのでスープに限らず、炒めものなどにも使いたくなりますが、一度クセがつくとなんでも少し足すように …。 その分、他の塩分を控えるのであれば問題ありませんが、そうでない場合には、献立全体でメリハリをつけるのはどうでしょう。 たとえば、 「今日は肉野菜炒めだけ!」 というときには普段通りの感覚で使用するけれど、 「今日はお肉も焼いて、他に副菜やスープもあって…」 と何品もあるときには、メイン料理以外の味付けを控えめにする、という具合にです。

 その他の調味料では、塩分1gに相当するのが、米みそなら大さじ2分の1弱、ポン酢しょうゆなら大さじ3分の2、ケチャップなら大さじ2、オイスターソースなら大さじ2分の1弱、焼き肉のたれは大さじ1弱など。 思ったよりも塩分が少なかったもの、高かったものがあるかもしれません。 よく使用する調味料は塩分量を把握しておくとよいでしょう。

 食塩相当量( g )はパッケージなどに書かれている栄養成分表示のナトリウム量を参考に、以下の計算式でわかります。

 ナトリウム量( mg )×2.54÷1000


塩分を控える裏ワザとは?“朝の定番メニュー”に要注意

 塩分を控えめにすると物足りなく感じる方は、味に奥行きや広がりを持たせるために、カレー粉、生姜、わさびなどの香辛料を使ったり、しそやねぎ、パセリなどの香味野菜を使うのもひとつの手です。 しょうゆをだしで割るのが大変であれば、これから旬を迎えて国産のものが出回り始めるレモンで割るのもおすすめです。

 また、カロリーを意識する必要がないときには、ごまや砕いたピーナッツ、香りのある油などをかけるのも良いでしょう。

 外食や中食の利用ではどうしても塩分が高くなりがちなので、なるべく自炊で調整しましょう … と言えたらよいのですが、それをするのが大変だから外食や中食に頼ってしまう、というのが現実ですよね。

 そういうときは、中食と一緒に、パックになった千切りキャベツやちぎるだけでいい水菜などを買って、添える、もしくは和えるようにして食べるのがおすすめです。

 野菜や果物に多く含まれるカリウムは、ナトリウムを体外に排出する働きがあるので、出来合いのものばかり食べていて自分では減塩ができない、という方は、排出する働きのある野菜をより積極的に食べるとうにしましょう。

 また、意外かもしませんが、パンにも思いがけない量の塩分が含まれていることがあります。 4枚切りの食パンなら1枚あたり1g前後、バゲット1本には4.0g … こちらに有塩バターをのせて、ベーコンやソーセージやチーズを1枚づつでも添えたら … ラーメンの汁まで飲み干したくらいの塩分( 食パンだと合計2~3g )を摂ってしまっている可能性もあります。

 朝は同じスタイルのお食事をなさることが多いと思うので、普段食べているものの塩分は把握しておきましょう。

 朝は職場のデスクでコンビニで買ってきたもので済ませる、という方もいらっしゃるかもしれません。 おにぎりやサンドイッチも具材によってずいぶんと塩分量が異なるので、食べる頻度が高いものの塩分量は要チェックです。

 高血圧にならないために今できること。 まずは、習慣化している朝食や普段よく使う調味料の塩分量を知って、目標値と現状との差を認識すること。 それが面倒であれば、もう、即行動しかありません! “腹八分目” ならぬ、 “調味料八分目” を心がけて、ちゃんと青信号で一歩を踏み出すようにしましょう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~