「 肩甲骨ストレッチ 」 という言葉を耳にします。 どんな効果があるのか探ってみました。
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 肩甲骨は、背中側の左右両肩の下方にある大きな三角形の骨だ。
 京都大医学研究科の小林雅彦講師( 整形外科 )は「 胴体と上腕をつなぐ重要な骨で、腕や肩の動きと密接に関係します。 周辺の筋肉は、背筋が伸びて胸を張った、いい姿勢に必要です 」 と説明する。
 たとえば、指先を真下に向けて腕を伸ばし、そのまままっすぐ前方に上げ、指先が天井に向くまで180度動かす。 この時、腕の上部の関節の動きで動くのは120度ぐらいで、残りは肩甲骨の動きによっている。
 肩甲骨周辺の筋肉が衰えたり、猫背だったりすると、両方の肩甲骨が開いて、前方に張り出す。 肩の骨も前方に張り出し、腕の上部の骨に触れて、炎症が起きる。 それが「 五十肩 」 の一種だ。
 五十肩の予防に役立つ「 肩甲骨ストレッチ 」 を習った。 「 まず十分に肩甲骨回りの筋肉をリラックスさせましょう 」 と小林さ ん。 肩や首のこりの緩和にも効果的だという。

両肩を2秒に1回ぐらいゆっくりと上下。 5~10回目に肩を上げた状態で5秒キープ。 3セット。
胸を張るように、左右の肩甲骨の内側を前方に押し出す。 2秒に1回ぐらい。 5~10回目に胸を張った状態で5秒キープ。 3セット。
手のひらを顔に向け、両手を体の前でくっつける。 ひじから先を地面に垂直に。
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両手を体の横までゆっくり開く。 手のひらは体の前面を向く。 10回。
両腕をまっすぐ上にのばし、両手を組む。 手のひらは天井に向け、組んだまま上下させる。 10回。
手を肩の上に置いたまま、腕をゆっくり前回し、後ろ回しする。 各10回。

 次は、周辺の筋肉、特に両方の肩甲骨の前側にある前鋸筋ぜんきょきんを鍛えよう。 肩甲骨の動きや姿勢が良くなる。 手軽な方法は腕立て伏せ。 できない場合、壁やテーブルに両腕をつき、両腕を曲げたり伸ばしたりするといいという。
 首と肩甲骨をつなぐ筋肉、僧帽筋や肩甲骨周辺の筋肉の緊張は、首や肩のこりの一因だ。
 「 特に、長時間パソコン作業をしていると、顔が画面に近づき、肩が前に出て、肩甲骨が両側に引つ張られて開きます。 その姿勢を長く続けると、肩甲骨周辺の筋肉が緊張してこわばり、肩や首のこりを引き起こします 」 と、東海大スポーツ医科学研究所の有賀誠司教授は説明する。
 予防・緩和には肩甲骨や周辺の筋肉を動かすストレッチ。 「 できればパソコン作業1時間に1回はやってほしい。 血行が良くなり、筋肉がほぐれます 」 と有賀さん。
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 肩甲骨周辺を特殊な生地で軽く固定し、肩甲骨がバランス良く動くように工夫したスポーツ着「 肩甲骨ウェア 」 も市販されている。
 小林さんは、ワコールの肩甲骨ウェアの効果を調べた。 ウェアを着て練習したバドミントンの選手約10入は、着用後5ヵ月で、ひじを曲げた状態での腕の可動域が約10度広がった。 着用していない選手約10入はほとんど変化がなかった。 ラケットを上から振り下ろす時の筋力は、面用したグループの方が2割弱増した。
 「 ウェアにより肩甲骨の動きが艮くなって姿勢が安定したためだと考えられます 」 と小林さん。 ただし、ダイエット効果まではなかったという。
 東海大の有賀さんによると、パソコン作業時は両ひじが胴体の横にくる姿勢がいいという。 「 両腕が胴体の横にあれば、肩や肩甲骨は自然な状態で、緊張が少ない 」 と説明する。
 富士通のサイトでは、パソコンを使うときの姿勢を解説している。
http://jp.fujitsu.com/about/design/ud/vdt/index_page3.html





原因不明の凍結肩 治療法は?
 痛み緩和後、気長にリハビリ


 突然、肩が上がらなくなる五十肩。 激痛に耐えられず、病院に駆け込む人も少なくない。 五十肩の原因は何なのか、どんな治療法があるのか ―。


「五十肩」 だが ……

 五十肩は医学用語ではなく、江戸時代から呼ばれている中高年特有の症状。 中年以降に起きる痛みを伴った肩関節周囲炎のほか、特別の原因がないのに痛みで動かせなくなり、時間とともに自然に治癒するが硬くなる凍結肩( 肩拘縮こうしゅく )などがある。
 関東労災病院( 川崎市中原区 )の肩の専門医、岩噌いわそ弘志・第2スポーツ整形外科部長は凍結肩について、「 関節包と呼ばれる肩関節を覆う弾力性のある組織が硬くなり、骨に癒着してしまう。 そのため、動きが悪くなって痛みを感じる。 重い物を持ったり、自転車で転んだりして痛くなるケースもあるが、原因がなく突然起きる 」 と説明する。 原因は不明だ。

 岩噌部長によると、凍結肩は3つの経過をたどる。
凍結進行期=痛くて腕が動かせなくなる。 特に後ろに回しにくく、夜、寝ていても痛い( 約3週間 )
完成期=痛みは和らぐが、動けない時期( リハビリ開始 )
解凍期=少しずつ肩が動くようになる
 ― だ。 発症から治癒までは平均8ヵ月で、血流の悪い糖尿病患者の場合は治癒までに平均2年かかるとされる。 ただ、糖尿病がなくても治癒までに3年かかったケースもあり、個人差は大きい。


ぬるめのお風呂で

 対処法として、凍結進行期では、痛みを和らげるために鎮痛剤を飲んだり、消炎剤入りの湿布を張ったりする。 完成期に入ったら、消炎剤入り湿布の上にカイ口を当てるなどして、しっかり温める。 痛いからといって動かさないでいると、筋力がどんどん衰え、動きが悪くなる。 リハビリとして、プール歩きやゴルフの素振り、テニスなどでよく動かすとよい。
 はり・きゅうやマッサージも個人差はあるが、効果がある人は多い。 ただし、整体などで無理やり動かすと、関節包が内出血を起こし、さらに癒着が悪化する場合があるので要注意だ。 岩噌部長は「 凍結肩の場合、医療機関への受診は不要。 気長に楽しみながらリハビリを続けることです。 ただ、まれに凍結肩だけでなく腱板けんばん損傷を合併したり、首の骨の異常から肩が動かなくなったりすることもある。 2~3ヵ月たっても痛みが進むときは受診した方がよい 」 と話す。
 予防法は、ストレッチがその一つ。 凍結した肩をほぐすときと同様、ぬるめの湯に入り、痛くない範囲で背中の後ろ側に腕を回したり、頭頂部と首の間辺りで両手を組めるように伸ばしたりする。 腕立て伏せの姿勢から右腕と左足、左足と右腕を交互に上げ、肩と肩甲骨けんこうこつの周囲を伸ばすと同時に、筋力を付ける方法も効果的だ。
 岩噌部長は「 五十肩の始まりは関節包での( 関節の可動域が制限される )拘縮。 毛細血管の血流が関与しているとみられ、周囲の 筋肉の血流を良くしておくことで予防できるのでは 」 とアドバイスする。


凍結肩以外の肩の病気

【 腱板損傷 】 関節包の上にある腱板に穴が開いたり、切れたりした状態。 手術で縫合する治療法がある。 人に手伝ってもらうと、腕を上げることができる。
【 石灰沈着性腱板炎 】 腱板の中に石灰がたまり、炎症を起こした状態。 激痛を伴う。 ステロイド薬の注入が有効。 超音波で石灰を破砕したり、摘出手術を行う治療法がある。
【 頚椎 症 】 首の骨や椎間板が変形し、肩へ向かう神経を刺激している状態。 首を傾けると肩に電気が走ったように感じる。






 “太もも” を中心とした下半身の強化を説いた健康法が、幅広い男女から高い支持を得ている。 静脈の血液を上半身に押し上げるポンプである “太もも” は 「第二の心臓」 と呼ばれ、健康や長寿の秘密が隠されている。 また “太もも” などの下半身の強化は、肩こり・腰痛・高血圧・糖尿病・狭心症・便秘・不眠などの症状の改善につながり、さらに太らない体質を作りダイエットにも大きな効果がある。
 腰痛を防いだり、改善するためには腰の筋肉を適度に刺激することが大切なので、30分程度は速足で歩きましょう。

 速足の目安は男性では1分間に100メートル以上、女性は80メートル以上歩くこと。

 ちなみにこのスピードで30分歩くと約180キロカロリーが消費されます。 つまり肥満の防止や解消にも効果があるのです。 肥満は腰への負担を増やす、腰痛の原因の一つ。 30分の速足は腰のマッサージと腰痛の原因となる肥満防止という両方の効果があるのです。

 重要なポイントは、30分程度続けないと、腰痛改善には十分な効果が発揮できないということです。

 歩き始めて約10分たつと心拍数が上がり、血行が良くなり、体温も上昇し始めます。 この状態になって初めて、身体が運動の効果をスムーズに受け入れることができるようになるのです。

 速足歩きだけでも腰痛退治に効果的ですが、速足歩きに 「 つま先歩き 」 を加えるとさらに効果が増します。

 つま先歩きは、健康を支える筋肉・遅筋繊維( 赤筋 )を鍛える運動です。 基礎運動として優れているだけでなく、腰痛のような中高年の方に多い悩みにもピンポイントで効くのです。

 ちょっとつま先立ちしてみてください。 ふくらはぎが引っ張られるような感じになりませんか? つま先立ちすると、ふくらはぎの筋肉が鍛えられるのと同時に、日常生活ではあまり使わない殿筋( お尻の筋肉 )やすねの前面にある前脛骨筋、さらに腹筋も鍛えられるのです。

 また、つま先歩きをしようとすると、自然と姿勢が良くなります。

 ねこ背などの姿勢が悪い人は運動不足で腹筋が弱くなっているため、前かがみになっている場合が多いのですが、前かがみでつま先歩きをしようとすると、重心が前よりになるので倒れそうになります。 そこで倒れないようにするため、自然と殿筋と太ももの後ろ側にある大腿二頭筋が働き、上体をまっすぐに起こし、正しい姿勢になるのです。

 椅子に座り続けることが多く、運動不足が続くと、腰の部分を中心に筋肉が衰え、背骨をしっかりと支えられなくなります。 これも腰痛を引き起こす原因となっています。 したがって、腰痛退治には姿勢を良くすることも大事なのです。

 なお、つま先歩きはくれぐれも長時間は行わないでください。 やりすぎると足首の筋肉や腱を痛めることもあります。 30分間の速足歩きの中に30秒ほどのつま先歩きを2~3回取り入れていただければ十分です。

 軽い腰痛ならこれらの歩き方を始めて1ヶ月で効果が出ます。 重い腰痛でも半年続けると大きく改善しますので、ぜひ、根気よく速足歩き+つま先歩きを続けてください。






  





 股関節こかんせつに関してしばしば思うのは、その名前はよく知っていても正確な位置や構造、しくみや働きになると、首を傾げてしまう人が多いことです。 他の関節に比べ、股関節はいくつもの大きな筋肉に囲まれていて見えにくいことも、そんな理由の 1つかもしれません。
 高齢化社会が進むに伴い、変形性股関節症など股関節疾患を抱える患者さんは、非常に目立ってきています。
 股関節疾患は、生命にかかわるものではありませんが、それだけに、たとえば痛みの度合いがどの程度生活に影響しているか、手術をするかしないか、どのような運動療法を受けるべきか、といったことで、患者さんご自身の考えや判断も非常に大切になります。 理論武装とまではいいませんが、やはり患者さんも股関節に関する一定の知識を備えることが必要です。
 病の正体がわかっていれば、日常のケアやインフォームドーコンセント( 患者が正しい情報を得たうえで合意すること )の必要性などに関しても、より的 確な対応ができるでしょう。
 まず、股関節は、骨盤の下部に位置します。 骨盤下部は両側の骨がくぼんでおり、これを寛骨臼かんこつきゅうといいます。 この寛骨臼に左右の大腿骨だいたいこつの頂点部分( 大腿骨頭 )がはまりこみ、股関節という、人体で最も大きな関節を形成しているのです。
 股関節は、体幹と下肢かし( 足 )とをつなぐ関節であり、直立し、さらに二足歩行を可能にした私たち人間にとっては、進化の象徴ともいえる重要な関節です。
 立ったり座ったり、歩いたり走ったり、飛んだりハネたり、体を曲げたりひねったり ……。 こうした他の動物にはマネできない、自在な動きを生んでいるのが股関節なのです。




 では、股関節はいかなるしくみによって、そうした動きを可能にしているのでしょうか。
 医学部の新人生たちに股関節のイメージを尋ねると、次のような答えがよく返ってきます。
「 軸部分が球形になっていて、どの方向にも回転するペンホルダー 」
 これでは、まだ60点の回答です。 確かに、ペンホルダーはあらゆる角度に動かすことができますが、実は股関節は、それ以上に自在になっているのです。
 そのカギを握っているのが大腿骨頚部けいぶと呼ばれる、いわば大腿骨の “首” です。
 左の図を見てください。 大腿骨上部の丸い部分が、大腿骨頭です。 骨頭と大腿骨は直接つながっているのではなく、その間には少しくびれた部分があります。 これが大腿骨頚部です。
 ペンホルダーにはくびれの部分がなく、まっすぐ軸受け( 股関節でいえば寛骨臼 )に接しています。 このちょっとした形状の違いが、股関節の動きをさらに自在にしているのです。
 最も特徴的な動きは、内旋ないせん外旋がいせん、内転・外転、屈曲・伸展です。 内旋・外旋は、足を内側や外側に回す動き。 内転・外転は、足を開いたり閉じたりする動き。 屈曲・伸展は、ひざを折り曲げて足を前方に上げたり、後方に伸ばしたりする動き。 これらは、ほかの動物には見られない、私たち人間ならではの、すばらしい機能なのです。
 老化や事故などで、こうした股関節のしくみが正常に働かなくなると、さまざまな故障が発症します。
 たとえば、代表的な股関節疾患の一つである変形性股関節症は、寛骨臼と大腿骨頭が接している部分の軟骨や骨が変形してきた結果、動きが悪くなったり、痛みが生じたりしてくるものです。
 こうした股関節疾患、とくに変形性股関節症の予防や改善には、ストレッチなど股関節を鍛える運動も非常に有効です。
 もちろん、鍛えるといっても、骨や関節自体を鍛えるわけではありません。 正確にいうと 「 股関節を支えている周囲の筋肉を鍛える 」 ということです。
 股関節は、腸腰筋ちょうようきん大臀筋だいでんきんをはじめとする、さまざまな筋肉によって支えられています。 これらを鍛えてその働きを高めれば、股関節の機能が少々悪くなっていても、大きな不都合は生じEません。 それだけでなく、筋肉が股関節の動きそのものをサポートしてくれるようにもなります。
 また、股関節とその支持筋肉の強化が、腰やひざの動き、あるいは痛みの改善につながることも少なくありません。
 本来、ひざや腰の動きは、股関節が支点になって連動しています。 ですから、股関節の働きが悪くなれば、ひざや腰にも悪影響を及ぼしますし、当然ながらその逆もあるわけです。
 筋肉強化には多少の時間がかかりますが、信頼できる医師や治療家などのアドバイスを受けながら、根気よく続けることが大切です。