( 2019.03.12 )



 「91.4%」。 これは去年JAFが全国の道路で、ある交通違反の調査をしたところ9割以上が違反車両に該当したという衝撃的な数字です。 もしかしたらみなさん知らず知らずのうちに違反しているかもしれません。 その違反は、死亡事故につながってしまうケースも。 その違反とは。

 JAFの調査によると、信号機のない横断歩道で、歩行者が渡ろうとしているのに一時停止をしない車が、全国で 「91.4%%」 もあったといいます。
「横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいる場合は、止まって、通行を妨害してはならない」(愛知県警交通総務課 沢田章夫 警視)
 信号の無い横断歩道を渡ろうとする歩行者がいる場合、車は、一時停止しないと違反になります。

 しかしJAFの調査では、該当する横断歩道で、一時停止した車の割合は、愛知県「22.6%」、岐阜県「2.2%」、三重県「1.4%」と、驚くほど少なかったことが分かっています。
「(愛知県では)3月は、交差点や交差点付近における “横断歩行者妨害” の違反の死亡事故が多い」(愛知県警交通総務課 沢田章夫 警視)
 そこで、朝8時の名古屋市内の信号のない横断歩道に向けて、30分間定点カメラを設置しました。

 すると、画面左側から歩行者が横断歩道にさしかかりますが、なかなか車はとまってくれません。 すると1人が意を決して、車の間を縫うように横断しました。

 さらに、ずっと待っている男性。 この男性が道路を横断できたのは、6台もの車両が通り過ぎたあとでした。

 今回、30分間の定点撮影で、45台も違反車両が映る結果になりました。

 街の人に聞いてみると。
「ほとんど止まらない。止まらないのが普通ですよね」
「タクシーにひかれそうになった。名古屋駅の前で」
「止まってくれるかなと思ったら、止まらず(車が)来るので」
「車優先の意識があるのかもしれない」
 一方、普段、車を運転する人たちに聞いてみると。
「減速はしますけど、道によって減速の速度が違うかなと思います。いっちゃうかもしれないですね」
「やっぱり横断歩道は止まらなあかんわ。習慣にしないと、止まらないのが普通になっちゃう」
 こうした調査結果を受け、愛知県警では、横断歩道での取り締まりを強化。 去年は、全国で一番多い、38000件以上の検挙数があったといいます。


道路にある “ダイヤマーク” の意味知っていますか?

 車を運転する際に気をつけたいのは、横断歩道があることを事前に知らせる、道路にあるダイヤのマークです。
「(前方に)横断歩道がある場合、その手前、約50メートルの地点に『横断歩道あり』という標示の“ダイヤマーク”が設置されています」(愛知県警交通総務課 沢田章夫 警視)
 しかし、街の人に “ダイヤマーク” の意味を知っているか聞いてみると。
「右折レーン? ちょっとわからないです」
「速度を落とすとか?」
「横断歩道が近くにある? なんだったかな、忘れちゃった」
 今回、 “ダイヤマーク” の意味を聞いてみると、分かったのは10人中2人だけでした。
「(ダイヤマークを)チラシなどで広報はしてるんですけど、まだまだ不十分。今後も引き続き、広報や横断歩道の通行方法については周知していきたい」(愛知県警交通総務課 沢田章夫 警視)

 





( 2019.03.17 )

 
  


 朝の通勤時間帯、信号のない横断歩道なんて無視するかのごとく、ガンガン突っ込んでくる車たち。 会社員のマサヒコさんは、歩行者が不便を強いられていることが許せず、車がスピードを落とさずに突っ込んできても、平然と横断歩道を渡る。

 驚いた車は慌てて一時停止するが、運転手の表情はどこか不満げ。 マサヒコさんは、 「朝だから急いでいるのかもしれないけど、信号がない横断歩道なんだから、ちゃんと停止してほしい」 と話している。

 ただ、一つだけ気になるのが、事故が起きてしまった時の責任だ。 マサヒコさんは車が迫ってきていることを把握して渡っている。 横断歩道とはいえ、事故が起きた時の責任は車が100%ということにならないのだろうか。 平岡将人弁護士に聞いた。


 信号のない横断歩道で一時停止をする車は8.6%
「JAFが2018年に行った『信号機のない横断歩道における車の一時停止率』の全国調査によると、一時停止をした自動車は全体の8.6パーセントしかなかった、という結果がでています。 ほとんどの車両は、信号機のない横断歩道で一時停止をしていないのが残念ながら我が国の実態といえます。
道路交通法38条1項は、 『車両等は、横断歩道又は自転車横断帯に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路前方を横断し、又は横断しようとする歩行者があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない』 と規定しています。
つまり、歩行者が横断歩道を渡ろうとしているときは、車両は一時停止をして歩行者が渡り切るのを待たなければならないので、実はほとんどの自動車は38条1項違反なのです」
 では、歩行者の動きについては、法律でどう定められているのか。
「歩行者に対しての道路交通法上の規定を見てみると、12条1項は、 『歩行者は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の附近においては、その横断歩道によって道路を横断しなければならない』 としています。 マサヒコさんの場合は、横断歩道上を横断しているので、歩行者に道路交通法上の違反はありません」

 基本的に歩行者の過失は問われないが…

 もし、車が迫っていることを知っていて、それでも横断した場合の責任はどう判断されるのか。
「ご質問の過失割合の点ですが、横断歩道を通過する自動車には重い注意義務が課され、反面歩行者は絶対的に近い保護を受けます。 したがって、基本的には横断歩道上の事故であれば歩行者のマサヒコさんの過失は問われません。
ただし、自動車から発見が容易ではなくなる夜間の場合、幹線道路のような交通量が多く広い道路の場合などは歩行者も安全注意義務が問われ、また道路交通法13条1項で歩行者は車の直前・直後で道路を横断してはならないと規定されていますので、直前横断などの場合には歩行者にもわずかながら(5%)責任を問われてしまいます。
マサヒコさんのケースですと、場合によっては、直前横断に該当しうる可能性はあると思います」
 横断歩道については、どのような心構えが求められるのか。
「歩行者としては、絶対的な保護を受けうる横断歩道を横断する場合でも、いったんは立ち止まり、左右の安全確認をした上で渡り始めるのが良いでしょうね」
さて、冒頭述べたJAFの調査結果を受けて、各都道府県警は、自動車の横断歩道前での一時停止を促す方向で動き始めることが予想されます。
自動車対歩行者の事故は、大きな負傷、場合によっては生命を失う事故につながる可能性が高いものです。 大けがを負った被害者や大切な人を亡くしてしまった遺族が、どのような苦痛を受けるか、運転手は想像してほしいと思います。
警察の動きがあるから、ではなくて、自動車を運転する責任として、道路上のルールを厳守し、安全に配慮した運転をしてほしいと思います」

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