なにか会社でよくないことをしてしまった時、懲戒処分の一種にあたる 「戒告処分」 という処分をされることがあります。 これは他の訓告、などの処分と何が違うのでしょうか。 また、この戒告処分を受けてしまうと、今後のキャリアにどのような影響があるのでしょうか。
国家公務員法で定められる戒告
戒告処分とは国家公務員に定められた罰則の一つで、公務員に非違行為( 非法行為と違法行為のこと )があった際の注意もしくは警告としてくだされる戒めになります。 「国家公務員法」 第82条には、職員が職務上の義務に違反する、職務を怠ったときなどに懲戒処分として免職、停職、減給または戒告の処分をくだせることが定められています戒告は公務員にくだされる懲戒処分のうち、もっとも軽い罰になります。 戒告処分は、口頭で伝えられるほか、戒告書と呼ばれる文書で下されるものもあります。 就業規則で定められる戒告 1.戒告、けん責 2.減給 3.出勤停止 4.降格・降職 5.諭旨退職 6.懲戒解雇 1~6の懲戒処分のうち、番号がくだるほど重い処分となります。 そのため、一般企業の就業規則で定められる戒告処分も懲戒処分のうちで最も軽いものになります。 戒告処分の内容も公務員のものとほとんど同じで、口頭または文書による注意となっています。 ちなみに、けん責とは漢字では譴責と書き、戒告処分と同じく注意を求める内容となります。 戒告処分との違いは始末書の提出を求められることとなっていますが、法的な定義づけはなされていません。 どのような行為が戒告処分に相当するか 2017( 平成29 )年2月に福井家庭裁判所の書記官の男性が事務処理を1年以上行っていなかったかどで戒告処分を受けました。 また、同じく2017年2月に新潟県長岡市の消防士の男性が警察への虚偽の通報により逮捕され、同年3月に偽計業務妨害容疑で起訴されました。 以上のように職務を遂行できなかったり法律に抵触する行為を行ったときには戒告処分を受ける可能性がありますが、勤務中に全く関係の無いサイトを閲覧していたというささいなことでも戒告処分を受ける可能性があります。 また、無断欠勤、遅刻、素行不良など、普段の行いにおいても戒告を受ける場合があります。 会社のもを壊してしまった、紛失してしまった、なども戒告処分の対象に当たります。 |
公務員の戒告処分とは、 「本人の将来を戒める旨の申し渡しをする処分」 のことです。 おもに職務上の不手際を起こしたり、法律違反をおかした公務員の反省を促すためにくだされます。 会社員にくだされる戒告も反省を促すために出される点で同じです。 どちらの場合でも次に同じ過ちをおかせば、さらに厳罰がくだることも考えられるでしょう。 |
戒告と訓告の違いについて
戒告も訓告も職務上の違反についての注意という点では同じです。 しかし、 「国家公務員法」 第82条に定められた懲戒処分は戒告が最も軽いものとなっています。 それに対して訓告は法律の条文の中では定められていません。 慣例として、訓告処分は戒告処分よりもさらに軽い罰則となっており、戒告よりも軽い注意と見ることができます。 ちなみに訓告より軽い罰として厳重注意があり、これも法律では定められていません。 戒告書とは? 戒告を申し渡す際に作られる書類のことで、戒告の根拠となる非違行為や反省と戒めを求める旨が書かれています。 文書によっては、非違行為を行った本人のサインと押印を求めるものもあります。 |
公務員の場合は、国家公務員法で定められているとおり戒告も懲戒処分の一種に数えられています。 懲戒というと懲戒免職など他の罰則のイメージが強いためまぎらわしいかもしれませんが、戒告は懲戒処分という枠で定められた罰の一つになります。 |
戒告は口頭または文書で与えられる注意であることはすでに述べました。 では、注意を受けるだけですむのでしょうか。 実は、公務員の場合はさらに形をともなった罰が下りる可能性があります。 どのような罰がくだるかは法律でも定められてはいませんが、以下のような影響があるかもしれません。 その1 出世への影響 戒告処分を受けてしまうと、出世の可能性は暗くなってしまうかもしれません。 上司の覚えも悪くなりますし、処分を受けた人とそうでない人を比べると問題の無い人のほうが出世の望みは高いはずです。 いくら戒告処分はそこまで重くない処分に当たるとしても、会社で誰がそのような処分を受けていたかは覚えられてしまいますし、印象が悪くなってしまうのは確かです。 思わぬハプニングからくるものだったのであれば理解が得られるかもしれませんが、そうでなければ少なからずの悪印象はついてしまうことを覚悟しましょう。 その2 給与への影響 戒告処分は減給を伴いませんが、ボーナスなどへの査定に影響するおそれがあります。 公務員のボーナスは勤務態度などを反映して金額が決められるため、戒告処分が原因となってボーナスが減額されることは考えられます。 その3 退職金の影響 戒告処分を受けると退職金の減額を招いてしまうかもしれません。 「国家公務員退職手当法」 12条には 「当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響その他の政令で定める事情を勘案して、当該一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができる」 とあります。 つまり、懲戒処分のうちもっとも軽いものである戒告処分についても、減額がされてしまうおそれがあります。 その4 転職への影響 懲戒処分を受けてから公務員をやめ、転職活動をするときには気をつけなければいけないことがあります。 それは懲戒処分を受けた場合は履歴書の賞罰欄に書かなければいけないということです。 これは最も軽い懲戒処分である戒告処分を受けた時も同じことです。 もしも履歴書に虚偽の内容を書けば、のちのち不利な事態になるかもしれません。 もっとも、賞罰については面接時に聞かれた時に答える、もしくは履歴書に賞罰欄があった時には正直に答えなければいけませんが、自発的に言及する必要はありません。 つまり、面接時に聞かれなければ答える必要はなく、履歴書に賞罰の欄がなければ書く必要もありません。 公務員と一般会社員の戒告処分の違い 一般会社員の場合であれば法律で定められた罰ではないため、戒告処分は出世や給与、退職金に直接影響するものではありません。 もっとも、上司や人事部からの評価が悪くなった結果、不利益を招いてしまうことは考えられます。 |
公務員が戒告処分を受けた時にその内容に不服だった場合はどうすればよいのでしょうか。 そのような時には、公務員は 「不利益処分に関する不服申し立て」 を行うことができます。 この制度は不利益処分( 不利益を招く懲戒処分 )には従えないことを人事院の公平審査制度に訴えるものです。 申し立てとなる不利益処分審査請求を各都道府県に設けられた人事委員会の窓口に届け、その後委員会に受理されれば答弁書提出、審理を経て判定が下されます。 判定は処分の承認もしくは修正、あるいは取消のいずれかの形で出されます。 不利益処分審査請求は提出期限が設けられており、処分説明書受領日の翌日から起算して3ヶ月以内に行わなければならず、また処分があった日の翌日から起算して1年を経過した時は提出できません。 |
もし戒告処分を受けてしまったらどうすればいいのでしょうか。 公務員の場合であれば、出世が難しくなる場合もあるので、転職するのも一つの方法です。 会社員の場合であれば内容によっては仕事でこれから取り返すこともできるかもしれません。 いずれの道をとるにせよ、目に見えるペナルティが無い戒告処分くらいで済んでよかったと考えることもできます。 起きてしまったことはもうしょうがないので、自分のやってしまったことが、今後どのようにしたら起きないで済むのかを内省し、その反省をこれからの業務に生かしていけるようにしましょう。 そう前向きにとらえたら、過ちを真摯に受け止めて再発を絶対に防ぐつもりで今後の生活に臨むことが大切です。 |