人は 「納得する」 のは好きですが 「説得」 されるのは嫌いです。 ところが多くの人は、聞き手を説得しようとして失敗します。 聞き手が納得してくれるような話し方、納得してもらうための話し方のコツを紹介いたします。




 人に、納得してもらうのは、それほど難しいことではありません。
 人間にとって、納得することは快感だからです。 「納得できない」 というのは、不快なのです。 納得するのは好きですが、説得されるのは嫌いです。
 聞き手を納得させることのできない人は、なんとか “力ずく” で、聞き手を説得しようとしてしまうから失敗するのです。
 説得は、難しい。 でも、納得なら、簡単。
 話し手は、聞き手が納得するお手伝いをすればいいのです。 聞き手を力で引っ張るのではなく、聞き手の背中を支え、軽く押してあげるだけでいいのです。
 あなたの得意な料理は何ですか?
 では、その料理の仕方を説明してください。
 料理の仕方の説明を聞けば、その人の説得力がどれくらいあるかわかります。
 私は、料理が好きです。 私の父親も、料理を作るのが好きです。 テレビの料理番組に出る時など、料理の作り方を、電話で父親に聞いたりします。
 その時、父親は、必ずこういう教え方をしてくれます。
 「簡単じゃ。 Aして、Bして、Cするだけでええんや。 ただな、Dだけに、気をつけたらええんや。 簡単じゃ」




ここに、人を納得させるための、話し方の基本がすべてこめられています。
 まず、簡単であることを、聞き手に伝える。
聞き手は、簡単であると聞いて安心します。
「ちょっと、難しいけどね」 と言われると、聞き手は、話を聞きたくなくなります。
語尾も 「…しなければならない」 ではなく、 「…するだけでいい」 と言うのです。
説得力のない人ほど、 「…しないとダメ」 という言い方が多いのです。
 ポイントは、3つだけ伝える。
4つ以上になると、もう伝わりません。
3つのそれぞれの一つ一つも、簡略にまとめる必要があります。
聞き手の頭を整理する前に、あなた自身の頭を整理することが必要なのです。
 注意は、1つだけ付け加える。
説得力のない人は、最初から最後まで、注意だらけです。
注意は、1つだけだから、印象に残るのです。
注意された後は、聞き手は、 「大丈夫かな」 と自信をなくしますから、そこでもうひと言 「簡単ですよ」 というひと言を添えるのです。




 相手にどのぐらい納得してもらえる話し方ができるかどうかは、結婚式のスピーチをさせればよくわかります。
 結婚式のスピーチは、最悪事例の集大成です。 結婚式で退屈な時は、スピーチがなぜこんなに面白くないかという分析をしてみると退屈しのぎになります。
 結婚式のスピーチをダラダラやっている人は、ふだんお客様にも同じような話し方をしています。 日常生活でお客様にそういう話し方をしていることには、ご本人もまったく気がついていないのです。




面白くないスピーチのパターンは、次の6つです。
 長いこと。
まったく意味もなく長い。
言うべきことがないので、よけいに長くなります。
中身のない企画書ほど長くなるのとまったく同じです。
 言い訳が多い。
「突然のご指名」 であるわけはありません。
披露宴などでは、普通は招待状の中にスピーチ依頼状が入っています。
あるいは、新郎新婦がわざわざ2人で家まで挨拶に来て頼まれているはずなのに、なぜ 「突然のご指名」 と言い訳するのか。
文章を書かせても、こういう人は前置きが長い。
「私はそのほうの権威ではないので、はたしてどのように書けるかどうかわからないが ……」 のように前置きが長くなります。
前置きの長い人の話はたいていつまらない。
お客様に話す会話の中でもこういう人は多いのです。
 慇懃無礼。
「諸先輩方を差し置きまして、私のような若輩者が ……」、これは一見謙虚のようですが、ただの慇懃無礼です。
お客様のところへ行って広告代理店がよく言うのは、 「このたびはプレゼンテーションの機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。 精いっぱいやっていこうと思います」、こういう話はもう要りません。
時間のムダです。
早く結論を出すほうが先決です。
まわりくどい話よりドンと結論から言ったほうが、説得力はあるのです。
スピードが勝負の時代ですから、一番大事なことが一番先頭に来なければいけないのです。
「もう一軒行こう」 ではなく 「ホテル行こう」 のほうが、成功率が高いのです。
説得力のない人は、首位打者が9番の打順で打っているようなものです。
打てない打者から1番に出てくる。
これまでの時代は3番、4番、5番というクリーンナップに強力打線を配しました。
これはもう通用しません。
これからはゲリラ戦、ある意味では草野球の時代です。
草野球では一番よく打つ打者が1番バッターです。
よく打つ順番に1番、2番、3番と並べるのが草野球で勝つ方法です。
そういう時代には、慇懃無礼な 「諸先輩方を差し置きまして」 という言い方をしないことです。
失礼と感じるようだったら辞退しないといけません。
 会社の宣伝が長い。
結婚式か、会社の周年行事かわからない。
これは失礼な話です。
少なくとも新郎新婦か家族の話でなければいけません。
たいてい主賓には会社の上司が来ていますから、ふた言目から 「そもそも我が社は」 という会社の宣伝になります。
なぜなら、主賓は新郎新婦のことをよく知らないのです。
でも、何か挨拶をしなければいけない。
挨拶をする時には一番自分が知っていることを話そうとして 「そもそも我が社は」 となります。
新郎側の主賓が 「そもそも我が社は」 と言うので、新婦側の上司も負けじと 「そもそも我が社は」 という話になってしまいます。
社史を語ると、設立当時の話から新規事業の話まで綿々と話が続きますから、これは長いのは当たり前です。
会社のイメージダウンになっていることに、本人は気づいていないのです。
 ワンパターンの同じ話をする。
結婚式の話には、パターンはちょっとしかありません。
出席者は、そのちょっとのワンパターンの話を何回も聞かされるわけです。
出席しているほとんどの人が知っている話を、なぜあんなに繰り返すのか。
あなたがお客様で行っている時に誰かの挨拶で出てきた話は、どんなにいい話でも、もう多くの人が聞いているということです。
またこのワンパターンの話が、だいたい長くなるのです。
昔は 「3つの袋を大事にしてください」 と言っていました。
最近は7つや8つの袋になっています。
何か新しいことを思いついてみんな足そうと思うのです。
でも、同じ話です。
挨拶の苦手な人は原稿を準備してきますが、パターンが少ないので自分の前にそのネタをとられてしまうこともあります。
そうすると、もう変えられません。
その話をやめてしまえば少なくとも短くなるからいいのですが、やめないで、なんとか別のエピソードを足すようなことでその話をまた繰り返してしまいます。
打ち合わせの時でも 「またこの話?」 ということは多いです。
ワンパターンの同じ話をくどくどする人は、頭の中の老化が始まっています。
実際のワンパターンな話は、必ず昔話か自慢話になります。
上司が 「昔ね ……」 と言い始めたら部下は絶対聞いていません。
 2つ以上の話をする。
結婚式のスピーチは3つ以上のエピソードを話さないと話した気にならない、というのは大きな勘違いです。
話をする時には、エピソードは1つでいいです。
その1つのエピソードがしゃれていれば、それだけで 「おめでとうございます」 と言って下がるのが一番オシャレです。
ところが、話のヘタな人に限って最初から3つ話をしなければいけないという思い込みがある。
長い人に限って 「はなはだ簡単ではございますが」 と言います。
全然簡単ではありません。
「はなはだ簡単ではございますが」 と言う時間もムダなのです。





( 2012.04.06 )

 


 今年の “新人君” をはじめ、20代前半の若い人たちが陥りやすい落とし穴を、コンプライアンスの側面から述べてみる。


 最近のセミナーである警告をしている。 それは、新人君が初めて企業に勤め出してから帰省をした際に、旧友とお酒を飲んでついつい ―― 「実は今度、うちの会社がどうやら○○株式会社と合併するようだぞ!」 ―― 自慢話がエスカレートして上司から固く口止めされていたにも関わらず話してしまう。 そしてその後、インサイダー取引の疑いで逮捕されてしまう。 これは作り話ではなく、実際にあったことだ。 要するに、こういう事例がかなり多いのである。 新人君だからとはいえ、お酒という言い訳は通用しないし洒落にもならない。 立派なコンプライアンス違反である。

witter
 学生時代の感覚でTwitterで何か批判をしたり、Facebookで発言したりする場合は、その影響を十分に考えないといけない。 友達同士だからといっても、その発言の証拠は残る。 Facebookでは実名が “原則” だ。 デジタルの怖いところは、例えIDでTwitterに発言しても、その発言がきわどかったり、他人の中傷だったりすると、周りの人間が 「犯人探し」 をすることがある点だ。 実名や住所、勤務先をネットにさらされたりする ―― そう、懲戒免職までにならなくても、将来はもはやないと思って差し支えない事態になる。 ちょっとした気持ちの緩みからそうならないようにするには、脇をしっかり固めておく必要がある。 決していい気になって変な発言をしないことだ。 内容によっては明らかなコンプライアンス違反になると考えてほしい。


 会社での就業時間以外は自分の自由だと思っている新人君に注意してほしいのが、副業と飲酒運転だ。 副業は多くの企業で明示的に禁止している、もしくは、前例から出勤停止や降格処分にさせる企業もある。 明示的に禁止されていなくても、 「好ましい」 と思う企業はほとんどない( 一部では社則で認めている企業もある )。 本当に副業をしたいと考えているなら、コンプライアンス違反になるかどうか、必ず上司に確認すべきである。
 飲酒運転は世間からの風当たりが年々強くなっており、厳罰に処す企業が圧倒的に多い。 就業時間外とはいえ、コンプライアンス違反より先に違法行為である。 もし行えば、企業のイメージも損なわれる。 多くの企業が “一発即アウト!( 懲戒免職 )” としているし、そう考えている企業が少なくないので絶対に避けよう。 また同乗者も処罰の対象となっている昨今、同窓会などの帰りに自宅近辺まで車で送ってもらう場合は、絶対に飲酒していない友人の車に乗るなど、自己防衛に徹することも必要だ。 決して油断してはいけない。 そういう雰囲気になっても、せめて 「自分は電車で帰りたい」 と伝え、断固として乗車を拒否する。 そして、 「少しかもしれないが飲んでいるじゃないか! 車を運転すること自体、絶対に反対だ! 万が一事故を起こしたり、検問に見つかれば全員大変なことになるぞ!」 と話す勇気を持ってほしい。 強制してまで乗せようとは思わないはずである。


 社内メールの場合、学生時代と同じようにメールを送る新人が必ずいる。 セミナーなどで 「メールは最悪のコミュニケーション方法だ」 と話している。 相手の顔を見て面談する場合に比べ、情報量があまりにも少ないからだ。 メールは所詮テキストなので情報量としては、A4用紙1枚にぎっしり文字を書いてもその情報量はせいぜい2キロバイト程度。 面談なら相手の顔つきの変化、口元、目の瞳孔や体の姿勢、挙動など情報量がテキストの数千倍もある。 同じ文章でもテキストと比べると、その場面や前後の言動、振る舞い、目の動きや顔の表情などで何千種類のパターンに分類できる。
 新人の中にはメールを会話と同じように思い、ストレートな感情の文章を上司や同僚に送りがちな人がいる。 だがメールは会話と違って残る。 その感情が凍結され、何年たっても上司から 「君は以前、俺に反抗的だったからなあ」 とマイナスの見方をされかねない。 人間は機械ではないし、感情を持った 「生き物」 である。 だから感情をむき出しにしてメールを送ることは、コンプライアンスの精神で言えば 「やってはいけない」 ことなのだ。 必ず後悔するだろう。


 難しいかもしれないが、 「法律には触れないけど、社会的なルールやマナーではアウト」 という行為でぜひ心掛けてほしいのが、 「もし自分がそういう行動をとられたなら不快に感じるか?」 という想像を働かせることである。 コンプライアンスを意識した行動とは、他人からみて不快に感じない行動ということだ。


 ある工場で、製造ラインの近くにいたAさんの服の袖口がラインに引っかかりそうになった。 それを見ていた新人のBさん、ちらちらとAさんを見てはいたが、決して言葉を発することはなかった。 それを数分間見ていて、 「Aさん! 袖口がラインのコンベアに触れていて危ないですよ! 気づいていましたか?」 と声をかけました。 Aさんはびっくりして 「全く気づきませんでした。 このジャンバーは今日から着ていますが、支給されたサイズが一回り大きくて。 すぐに総務に話して別のものを発注してもらいます! ありがとうございました!」 と話していた。
 そのまま放置をしていたら、恐らく事故になるのは時間の問題だったと思う。 今の世の中、他人に感心を持たない方が上手に生きられると、多くの新人が思っているようだが、それでよいだろうか。 社内やそのリスクが生命に直結する工場などの現場では話は別だ。 全員が一丸となって事故を防止するように心がけ、細かい事象でも報告しなければ、それが基になって重大な事故が起こりかねないのだ。 コンプライアンスの考えでは絶対に、しかもその場ですぐに警告すべき事象である。


 実際に遭遇したことを挙げよう。
1.社内LANにつながっているOA端末にWi-Fi機器を取り付けた電子工学科卒業のD君
2.OA端末の壁紙を管理者に無断で雑誌の付録についていたDVDからコピーした画像に変えた数学科卒業のE嬢( 禁止行為であった )
3.USB接続自体は許可されている企業で自分が購入したソフトをUSBからインストールした法律学科卒業のF君
4.OA端末のActive Directoryの設定を勝手に操作しようとしていた応用工学科卒業のG君( Adminではないので未遂に終わった )
5.レジストリを変更しようとしていた物理学科卒業のH嬢
 いずれもが実際に現場で見たものだ。 この中で2については実際に壁紙が変更され、ある業務システムがフリーズして大変な騒ぎになった。 E嬢が言うには、 「私は自分の好きな壁紙に変更しただけ。 システムのフリーズとは全く関係ありません! 私はこれでもPCに詳しいから分かります。 無関係なはずです。 犯人にしないでください」 とのこと。 まずは壁紙変更が明示的に禁止されているので、立派なコンプライアンス違反だ。
 なぜ禁止されているのかを理解していたのだろうか。 この業務システムは 「○○.dll」 を以前のバージョンにしていないと動かないもので、現在は64ビット版に変更中。 それが完成すればフリーズはなくなるが、それでも壁紙禁止は継続するつもりだったという。
 「このDVDからインストールした際に同じdllが変更されたことは君は理解しているのか。 PCを調べたが、この壁紙の変更が原因なのは明らかだ。 大学では詳しかったのかもしれないが、ここではど素人だ。 プロならそのくらい理解しているはず」 とE嬢に話をすると、彼女は顔を真っ赤にして下を向いてしまった。 会社のルールの中には、実際には意味がなく理不尽なものもあるが、これは明確な意味があったケースである。 その理屈も理解できない新人は、まずは従うことだ。 そして理解し、どう対応すれば無意味な規則が修正できるかを学ぶべきである。


 コンプライアンス的な思考からすると、世間とはやや異なるかもしれないが、実は 「プロセス( 過程 )」 が大事になる。 そこに至るまでのプロセスにおいて、結果だけを求めるのではなく、胸を張れる行為を継続できたかどうか、結果第一主義で今まで大きな代償を払ってきた社会は、 「プロセス」 の重要性にだんだんと気が付きはじめている。 結果第一主義では 「今は少しの間、会社の金を借りているだけ、要するにこのFXで利益を得て、期日までに会社の口座に入金しておけば絶対にバレない。 ちょっとリスクはあるが、絶対に儲かるはず ……」 と安易に考える。
 こうして、いけない行為に手を染め、地獄の底に自ら入っていく若者が必ずいる。 プロセスにおいては絶対にしてはいけないコンプライアンス違反。 バレる、バレないではない。 犯してしまったか、どうか、である。


 コンプライアンスとはいっても、実際にどう対応してよいか分からないのが新人だ。 今、自分が仕事で行っている具体的な内容を基にして、コンプライアンスとしての考えやリスクマネージメントの初歩的な考えでリスクを洗い出ししておくと知識の整理につながる。 ぜひ実施しておいた方が良いと考える。

リスク:不正な小口請求による横領
対策:小口精算なら領収証は不要。 でも該当者の前例から逸脱している場合には、一度その使途や交通について話を聞く。 そうすることで不正の予防にもつながっている場合が多い。

 以上、誰でもがチェックできる内容を提示したつもりであり、素晴らしい人生の一助になれば幸いである。




 《 新人若手が育った環境とは 》
育った環境の変化により、現実対峙力は低下傾向
育った環境の変化 重要な経験の不足 現実対峙力の低下
少子化厳しい指導・叱られる働きかける力
都市化不条理我慢・軋轢逃げない心
経済的豊かさ挫折・失敗自己決定(本当の)自己信頼
教育・躾の変化与えられる思いどおり成長欲求
個性尊重非競争貢献欲求





( 2014.09.15 )



 人の心をつかむうえで必要なのは 「話し方」 だけではないし、 「聞き方」 だけでもない。 大事なのは、心が通じ合う 「受け答え」 だ。



 人間関係は、初対面の数十秒で決まると言われる。 好印象を持ってもらえたら、その後のコミュニケーションはスムーズにいく。 まず身だしなみ( 服装・髪形など )、次に態度( しぐさ・表情 )、そして会話がカギとなる。

 身だしなみは事前に万全の準備とチェックができるが、表情と会話はぶっつけ本番。 無意識にもお互い相手がどんな人物か探ろうとするし、失敗しまいと緊張もする。 なるべく早く、堅苦しい雰囲気を和ませたい。

 そこで1~2分、雑談をする。 とはいえ、初めて会った人と何を話せばいいのだろう?

 「名刺があるじゃないですか。 下の名前は何とお読みするのですか? いいデザインのお名刺ですね! このキャラクターかわいいですね …… など。 最近は凝った名刺も多く取っ掛かりには事欠きませんよ」 ( コミュニケーションスクール 「とも子塾」 主宰元アナウンサー 今井登茂子さん )


×
  ÷


 名刺を取っ掛かりに 「○○と言えば……」 と、話題を広げる。 広げられなければ 「ところで」 と転じ 「御社の商品、私も使わせていただいておりまして」 「新商品が話題ですね」 など、下調べしたネタを振る。 準備がなければオフィスを褒めておこう。

 相手から1ついい笑顔が引き出せれば目的は達成、スムーズに本題に入っていけるだろう。 あまり 「うまくやろう」 と意識しすぎないこと。 リラックスして自然体で臨むのがコツだ。


 初対面で相手の趣味嗜好がわからない
 ⇒名刺交換から話題を広げる

自分:はじめまして。 私、○×商事営業部の○○△△と申します。 よろしくお願いいたします。
取引先:はじめまして。 △□食品の○□です。
自分:頂戴いたします。 ○□様 …… あのぅ、こちらのマークは何でしょう?
◆ 名刺は 「取っ掛かり」 の宝庫。 最低5つはネタがあるはず!
 名刺は自己アピールの道具でもある。 社名、社章、部署、名前、住所、紙質、デザイン、etc。 何かしら話題にできることがあるはずだ。
取引先:マーク? ああ、それは 「Pマーク」 と言いまして、プライバシーのPですね。 個人情報保護の審査を通った …… というようなものです。
自分:なるほど、そうでしたか。 最近はこの手の情報管理は特に厳しくなりましたからね。 先日も顧客情報流出の大きなニュースがありました。
◆ 質問から話題へ。連想ゲームの要領でテーマを広げていこう!
 名刺ネタは 1つすれば十分で、そこから 「○○と言えば ……」 と話題を広げていく。 相手が乗ってきたらその話題を膨らませよう。
取引先:ええ、ああいうことがありますと大変ですから、こういうことはコストをかけてもきちんとしなければなりませんね。
自分:まったくです。
【 NGワード 】
 ・ 恰幅がいいですね?
 ・ どちらのご出身ですか?
【 POINT 】
 必ずしも名刺からでなくてもいいが、思わぬ地雷( 相手が聞いてほしくないこと )を踏まないように。 名刺には聞かれてマズイことは書いてないから、ここから始めるのが無難なのだ。 外見、出身、学歴、政治、宗教の話題は避ける。 もちろん相手が 「私は○○の出身でして」 と振ってきた場合には乗っていい。


 名刺から話題が広がらなかったら?
 ⇒オフィスを褒めて和やかに本題へ

自分:ところで、こちらはとても働きやすそうなオフィスですね。 居心地がとてもいいです。
取引先:そうですか。 それはありがとうございます。
自分:窓からの眺望もすばらしいですね。
取引先:晴れていれば遠くに富士山も見えますよ。
自分:本当ですか! それはどちらの方角になりますか?
取引先:ちょうどあの大きなビルの右側になります。
自分:私でしたら景色ばかり眺めて仕事にならないかもしれません。
取引先:すぐに見慣れてしまいますよ。 ちょっとした息抜きにはいいかもしれませんが。
自分:目の疲れには遠くを見るのがいいとか。
取引先:そうですね。 気をつけてやってみましょう。
【 NGワード 】
 ・ お家賃はいくらなんでしょう?
 ・ どこも経費削減には苦労します
【 POINT 】
 いつまでも名刺に目を落としていては話題が広がっていかない。 ほかの話題に発展させられなければオフィスを褒めておけばいい。 「受付の感じがいいですね」 「眺めがいいですね」 「居心地がいいですね」 「働きやすそうですね」 など。 褒められて悪い気がする人はいないし、多少的外れでもそれはそれで話題になる。


 他愛ないネタは出尽くした?
 ⇒2度目の会話は前回の続きから

自分:○□様、先日は大変ありがとうございました。 今日は天気がいいので、確かあちらの方角に ……。
取引先:富士山ですか? あのビルの右に見えますよ。
自分:見えました! 富士山も世界遺産に登録されて観光客が激増しているそうですね。
取引先:そうみたいですね。
自分:これからオリンピックもありますし、ますます外国からの観光客が増えるでしょう。
取引先:ええ、わが社もTOEICテストの受験が義務付けられたりして、遅ればせながらいろいろやってます。
自分:うちもです。 もう英語学習は避けて通れません。 おっと、お話が楽しくてつい長くなってしまいました。では、本題に入らせていただきます。
【 NGワード 】
 ・ 犯罪率が上がるかもしれません
 ・ リストラも多いですから
【 POINT 】
 意外と話題に困る人が多いのが2度目に会ったとき。 2度目は名刺交換もないし、まだそれほど親しいわけでもない。 1度目で無難な話題は出尽くした? ならば、その 「続き」 から始めればいい。 時間のギャップを一気に埋めることができ、また前回相手の話した内容をよく覚えていれば誠実さを示すことにもなる。




( 2019.02.02 )

  


「話す者」 より 「聞く者」 が勝つ

 交渉とはコミュニケーションである。
 お互いの主張や意見を伝え合いながら、利害を調整するのが交渉なのだから、当然のことである。

 ただ、ここで注意すべきことがある。 私たちは、コミュニケーションにおいて、 「相手に自分の主張をどう伝えるか」 ということに注目しすぎるあまり、 「聞く」 ことをおろそかにしてしまいがちだからだ。 なかには、相手を論破しようと躍起になるあまり、まったく 「聞く」 姿勢を失ってしまう人もいる。

 しかし、それでは勝てない。 交渉で優位に立つのは、相手からより多くの情報を聞き出す者である。 「相手の目的は何か?」 「相手が絶対に譲れないものは何か?」 「相手は何を恐れているか?」 「相手は何に困っているのか?」 ……。 そうした本音を知ることができれば、適切な対策を講じることができる。 「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」 という孫子の言葉があるとおり、 「彼を知る」 ことが勝つ秘訣なのだ。

 だから、交渉のコミュニケーションでは、 「話す」 よりも 「聞く」 ことを基本にするべきだ。 相手を説得するためにむやみと自分の主張を訴えるよりも、相手の話に耳を傾ける。 そして、相手により多くを語らせるのだ。 つまり、 「聞き上手」 をめざしたほうが、交渉に強くなると言ってもいいだろう。

 むしろ、弁舌巧みで饒舌な人は注意したほうがいい。
 「語るに落ちる」 という言葉があるが、まさにそのとおりで、交渉において自分から話をするときには、うっかりと秘密にしておくべきことまで口にしてしまうものだ。 トランプで言えば、自ら手札を見せているようなもの。 それでは、ゲームに勝てるわけがない。 トランプで勝つのは、相手の手札を察知した者なのだ。


交渉は 「フェイス・トゥ・フェイス」 が原則

 ちなみに、コミュニケーションはフェイス・トゥ・フェイスで行うのがベストだ。
 もちろん、いつもフェイス・トゥ・フェイスで交渉をするのは困難だから、メールや電話も併用する必要があるのは当然のことだ。 しかし、重要なテーマについてコミュニケーションを行うときは、できる限りフェイス・トゥ・フェイスで向き合うようにしたほうがいい。

 なぜなら、フェイス・トゥ・フェイスでのコミュニケーションが、最も情報量が豊富だからだ。
 人間は言葉だけでコミュニケーションを行っているのではない。 相手の表情、仕草、その場の空気からも膨大な情報を受け取っている。 相手の本音を探るためには、言葉だけではなく、そうした非言語的なコミュニケーションを取る必要があるのだ。

 だから、フェイス・トゥ・フェイスでコミュニケーションを取るのが難しいときには、メールではなく電話を選択すべきだ。 電話では、声の調子や息づかいから、相手の本音を察知することができるからだ。

 要注意なのがメールだ。
 メールはテキスト情報だけだから、そもそも情報量が少ないというデメリットもあるが、それ以上に問題なのは、メールを書くときには、お互いにフェイス・トゥ・フェイスでは言いにくいような 「強い要求」 も書きやすいことだ。 その結果、双方が態度を硬化させて、交渉が膠着状況に陥ってしまう恐れがあるのだ。

 あるいは、メールは記録がいつまでも残るうえに、そのまま第三者に転送することもできる。 いらぬ言質を取られて、不利な状況に追い込まれる恐れもあるのだ。 だから、私は、交渉においてはメールを慎重に扱っている。 こみ入った内容のときは、必ず、電話かフェイス・トゥ・フェイスでコミュニケーションを取り、メールを使うのは事務連絡のたぐいのときだけに限定している。


「質問」 で主導権を握る

 では、フェイス・トゥ・フェイスでどのようなコミュニケーションを取るべきか?
 すでに述べたように、交渉では 「話す」 より 「聞く」 ことが重要である。 そのためには、できるだけ 「質問」 を主軸にコミュニケーションを進めるべきだ。 「質問」 をすれば、相手はそれに答えざるを得ない。 もしも相手が答えるのを断ったり、ごまかしたりした場合には、それが相手の 「弱点」 なのだとわかる。

 また、 「質問」 によってコミュニケーションの主導権を握りやすいというメリットもある。 より多くを語るのは相手だが、 「質問」 によって話題を変えることができるからだ。 その意味でも、 「質問」 は交渉において重要な武器だと言えるだろう。

 そして、相手の真意を確認するのが 「質問」 の基本だ。
 相手が何らかの主張をしたときに、それを表面的に受け止めるのではなく、 「なぜ、相手はそれを主張するのか?」 を明らかにするのだ。 それが把握できれば、こちらもより適切な対応策を用意することができるからだ。

 ただし、 「なぜ」 という言葉は、ときに詰問と受け取られかねないから注意が必要だ。 そのためにも、対決姿勢で向き合うのではなく、あくまでも、 「私はあなたとともに問題解決がしたい」 というスタンスを明示すべきだ。 そのうえで、 「問題解決をするために、あなたが、なぜ、その主張をするのかを知りたいのだ」 という気持ちでコミュニケーションを取ることを心がけるのだ。

 たとえば、 「私は “NO” と言っているわけではない。 ただ、なぜあなたがそう主張しているのかを知りたいんだ。 詳しく説明してほしい」 とか 「その根拠をもう少し教えてくれれば、あなたの要求にもう少し応えることができるかもしれない」 などと質問すれば、相手も本音を話しやすくなるだろう。


「同じ量を話している」 と錯覚させる

 もう一点、注意すべきことがある。
 あまりに 「質問」 してばかりいると、相手も 「情報を与えすぎているかもしれない」 と警戒心を抱くおそれがある。 そのような警戒心をもたれないようにするために、私が意識しているのは 「同じ量を話している」 と錯覚させることだ。

 つまり、 「質問」 を主軸にしながらも、ときどき、こちらの情報も明かすのだ。 もちろん、自分にとって重要なことは伏せたほうがいい。 たとえ 「小さな情報」 であっても、こちらも相手と 「同じ量」 の話をしていると思わせることができれば、警戒心を和らげることはできる。

 たとえば、明らかに 「金額」 が重要な争点となる交渉において、 「この交渉はすごく時間がかかりそうだと考えている。 3ヵ月以内に解決すればいいと考えているけど …… どうだろう?」 などと、自分の考えを “チラ見せ” するイメージだ。

 この程度の情報でも、相手は 「胸のうちを明かしてくれた」 と感じて、さらに情報を与えてくれるかもしれない。 「小さな情報」 を出すだけで、 「大きな情報」 を得ることもできる。 「エビで鯛を釣る」 というわけだ。


ジョン・レノンはなぜ 『ロックンロール』 を作ったか?

 また、相手の真意を探るときに、常に念頭に置いておくべきことがある。
 それは、 「戦いを避ける方法はないか?」 という自問だ。 交渉は 「自分の目的」 を達成する手段である。 「自分の目的」 を達成できるのならば、できるだけ戦いを避けるべきなのは言うまでもないからだ。

 相手の真意がわかれば、そもそも対立点がなかったことがわかることもある。
 「オレンジ」 の話を知っている方も多いだろう。 姉妹が一個のオレンジの取り合いになって、どちらも譲ろうとしない。 しかし、両親が姉妹の話を聞くと、一瞬で問題は解決した。 なぜなら、妹はオレンジの果肉を食べたかったのだが、姉はオレンジの皮を使ってマーマレードを作りたかったからだ。

 つまり、姉妹は一個のオレンジを取り合って対立したが、お互いの 「目的」 は別のところにあったのだ。 お互いの真意を理解すれば、一個のオレンジを分け合うことで、双方の 「目的」 を達成することができることもあるということだ。

 もちろん、このようなケースは、現実のビジネスでは珍しいだろうが、可能性がないわけではない。 このようなイメージをもちながら、相手の真意を探ることは非常に意味のあることだと思う。

 あるいは、ひとつのアイデアで対立を解決することができることもある。
 たとえば、ジョン・レノンが1975年に発表した 『ロックンロール』 というレコードがそうだ。 ロックンロールの古典をカバーした全米6位を記録したヒット・アルバムだが、このレコードをつくるきっかけには 「盗作騒動」 があった。

 そもそもの発端は、ビートルズ時代にジョン・レノンが作曲した 「カム・トゥゲザー」 という曲にある。 この曲が、チャック・ベリーの楽曲の出版権者モリス・レヴィという人物から、チャックの 「ユー・キャント・キャッチ・ミー」 というヒット曲の盗作であると、訴訟騒ぎを起こされたのだ。

 数年にわたって揉めたようだが、最終的に示談が成立。 その条件が、モリス・レヴィが所有する楽曲をジョン・レノンがレコード化することだった。 ジョン・レノンのレコードはヒットするに違いない。 そのレコードに楽曲が収録されれば、モリス・レヴィに莫大な印税が転がり込むわけだ。

 これは、なかなかの妙案である。 モリス・レヴィの目的は金。ジョン・レノンは 「盗作問題」 での裁判沙汰は避けたかったはずだ。 その両者の目的をともに満たすアイデアだ。 しかも、そのレコードが売れれば、双方にメリットがある。 まさに、創造的な解決策だと言えるだろう。 ちなみに、ジョン・レノンは 『ロックンロール』 で 「ユー・キャント・キャッチ・ミー」 をカバー。 しかも、わざと 「カム・トゥゲザー」 に近い歌い方をしているのだから、面白い。

 このように、お互いの 「真意」 が明らかになれば、創造的な解決策が生み出される可能性がある。 そして、 「戦い」 を回避することができるのだ。 そのような可能性を念頭におきながら、交渉相手とのコミュニケーションを行うことを忘れてはならない。


「これ」 だけ押さえれば、交渉に負けない!
『交渉の武器』

 日本人は優しい。常に目の前の相手を思いやる。 争い事を好まず、穏便にものごとを解決しようとする。 これは日本人の美点であり、私が日本と日本人を敬愛する理由でもあります。 しかし、それゆえに交渉で不利益を被っていると感じることが多いのです。

 日本企業の多くは優れた技術をもつとともに、勤勉で誠実なビジネスを行なっています。 しかし、グローバル・ビジネスのプレイヤーたちは、日本人の優しさや思いやりの精神に付け込もうと躍起になってきます。 争い事を好まない日本企業をターゲットに訴訟をしかけてくる人物や企業が多いのです。 その結果、優れた事業を行なっている日本企業が損失を被っているとすれば、それを見過ごすことはできません。

 もちろん、私は、日本人の優しさに付け込もうとする姿勢が非常に気に食わないが、それを指摘して態度を改める相手ではありません。 相手がそのような存在であることを前提に、こちら側が交渉力を磨くほかないのです。

 そこで、世界中の企業とタフ・ネゴシエーションをしてきた経験を通じて身につけた 「交渉を有利に進める鉄則」 をまとめました。
「点」 ではなく 「線」 で考える
“Of course, but” を常套句とする
弱者がパワーを生む方法
「最も不利な事実」 から出発する
争点に囚われず、全体を俯瞰する
合意をゴールにしてはならない など


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