( 2015.11.23 )


 有害な人間は、ものの道理とは無縁だ。 自分が周囲にどれほど悪影響を及ぼしているか気づかないおめでたいタイプもいれば、周りを混乱させたり他人を怒らせたりすることに歓びを見いだすタイプもいる。

 自分とは異なる人々との付き合い方を学ぶことは大切だが、本当の意味で有害な人に時間とエネルギーを割く価値はないし、彼らはじつに多くの時間とエネルギーを浪費させる。 有害な人は物事を不必要に複雑にし、争いを生み出し、そしてなによりもストレスを招く。
 もっとも、どういう人が有害なのかがわからなければ、彼らから距離を置くこともできない。 ちょっとイライラさせられたり、単につき合いにくかったりする人々と、真に有害な人間とを区別する必要がある。 あなた自身が有害な人間にならないためにも、是が非でも距離を置かなければならない有害な人々がこの世には存在しており、彼らは以下の 10のタイプ に分けられる。

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 「 偉人は考えを論じ、凡人は出来事について話し、つまらない人間は噂話をする 」 ―― エレノア・ルーズベルト
 噂話をしたがる人は、他人の不幸に歓びを見いだす。 他人の私生活や仕事上の失敗をのぞき見るのは、最初のうちこそ楽しいかもしれないが、やがて飽きて嫌な気分になり、他人も傷つける。 この世には有意義なことがたくさんあるし、素晴らしい人々から学ぶべきことも山ほどある。 他人の不幸を話題にするのは時間の無駄だ。

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 感情をまったくコントロールできない人がいるものだ。 そういう人は、あなたに感情をぶつけ、自分の思いをあなたに投影し、あなたのせいで気分が悪くなったと考える。 感情をコントロールできない人を見捨てるのは容易ではない。 なぜなら、彼らが感情的になっているのを見ると、気の毒になるからだ。 それでも、彼らはいざとなったらあなたを感情のはけ口として利用するのだから、なにがなんでも避けるべきである。

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 犠牲者を見分けるのはむずかしい。 最初は彼らの問題に同情してしまうからだ。 それでも、時間が経つにつれて、彼らは常に 「 困っている 」 ことに気づく。 犠牲者になりたがる人は、ほんの小さな障害を、超えることのできない巨大な山と見なすことによって、責任を回避する。 困難な状況を、学んだり、成長したりする機会と捉えるのではなく、言い訳の機会にするのだ。 「 痛みを避けることは不可能だが、苦しむかどうかは選択の問題だ 」 という金言がある。 これは、犠牲者になりたがる人の有害性を見事に言い表した言葉だ。 犠牲者になりたがる人は、苦しむことを毎回選択している。

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 自分のことしか眼中にない人は、他者から距離を置いて感情を動かさないことによって、あなたを落ち込ませる。 自分のことしか眼中にない人と一緒にいると、やがて一人ぼっちになったように感じ始める。 そんなふうに感じるのは、彼らにとっては、他人と真の絆を築くことになんの意味もないからだ。 あなたは彼らをいい気分にさせる道具でしかない。

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 嫉み屋にとっては、隣の芝は常に青い。 素晴らしいことが自分の身に起きても、彼らは満足しない。 自分の中に満足感を見つけるべきなのに、自分の幸運を世間の幸運と比較するために、けっして満足できないのだ。 自分よりもうまくやっている人間は、真剣に探せば、かならず見つかるのだから。 嫉み屋と長い時間一緒にいることは危険だ。 いずれあなたは自分の業績を、取るに足らないものと感じるようになるだろう。

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 他人を利用する人は、友情の名のもとで、あなたの時間とエネルギーを吸い取ってしまう。 彼らは友人のように接してくるために、扱いにくい。あなたがなにを好み、どんなことに幸せを感じ、なにを面白がるか、彼らは知っている。 ただし、彼らはその情報を、自分の目的を達成するために利用する。 他人を利用する人は、常にあなたからなにかを手に入れようとしている。 あなたから奪ってばかりで、与えることはほとんどしない。 あなたから絞り取るために、どんな手段を講じてでも、あなたを味方につけようとする。

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 J・K・ローリングの 『 ハリー・ポッター 』 シリーズに登場するディメンターは、人の魂を体から吸い取って抜け殻にしてしまう。 ディメンターが部屋に入ると、その部屋は暗くなり、人は寒気を覚え、忌まわしい記憶が甦る。 ローリングは、飛び抜けてマイナス思考の人々 ―― その人が部屋に入ってくるだけで、部屋から精気が抜けてしまう ―― からディメンターの着想を得たと言っている。
 ディメンターは、自身のマイナス思考と悲観主義を、出会う人みんなに押しつけることによって、その場から精気を吸い取ってしまう。 彼らは常に物事を悪いほうに解釈し、無害な状況に際しても恐怖心と不安を植えつける。 ノートルダム大学の研究によると、マイナス思考のルームメイトと同部屋になった学生は、そうでない学生と同部屋になった場合よりもはるかにマイナス思考になりやすく、鬱状態に陥ることすらあったという。

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 有害な人の中には、他人の痛みや悲しみに深い満足感を覚えるタイプの、悪意に満ちた人々がいる。 彼らは故意にあなたを傷つけようとしたり、嫌な気持ちにさせたり、あなたからなにかを手に入れようとしたりする。 そして、そうでない時には、あなたに対してなんの興味も示さない。 このタイプの唯一の美点は、すぐに見分けがつくために、あなたの人生からすみやかに追い出せることだ。

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 批判したがる人は、なにが評価に値し、なにが値しないかを、いちいち指摘する。 情熱の対象をあなたから奪い取り、あなたを惨めな気持ちにさせる。 批判したがる人は、自分とは異なる他人の価値を認めて学ぼうとするのではなく、他人を見下す。 なにかに情熱を燃やして思いを表現したいという、あなたの欲求を捻り潰す。 だから批判したがる人とは縁を切って、自分自身でいたほうがいい。

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 威張りたがる人は、あなたのすることを、ことごとく自分に対する挑戦と見なす。 だから、彼らとつき合うのは時間の無駄だ。 尊大さは自信の証明ではなく、不安を覆い隠す仮面にすぎない。 アクロン大学の研究によると、尊大さは職場においてさまざまな問題を引き起こすという。 威張りたがる人はパフォーマンスに劣り、気むずかしく、平均的な人よりも認知能力に多くの問題を抱えている。

有害な人を見つけたら、いかにしてわが身を守るか

 一緒に仕事をしていたり、一緒に暮らしたりしていれば、状況をコントロールするのは不可能だと感じる人が多いが、それは違う。 有害な人を特定できさえすれば、次第に彼らの行動を予測できるようになり、理解しやすくなる。そうなれば、いつ、どういう状況でなら我慢し、いつどういう状況でなら我慢する必要がないかを、論理的に考えることができるようになる。 境界線を引けるようになるのだ。 ただし、意識的に、能動的にやらなければならない。 自然の流れに任せたりすれば、厄介な会話にしょっちゅう引きずり込まれる羽目になるだろう。

 しっかり境界線を引き、いつ、どういう状況で、むずかしい相手に対処するかを決めてしまえば、混乱のかなりの部分を収めることができる。 大切なのは、相手が境界線を踏み越えようとした時には妥協せず、あくまで境界線を守り続けることだ。 相手はかならずや境界線を越えてこようとするだろうから。





( 2016.03.29 )


 入社や転職、異動などで人が入れ替わり、心なしか職場がざわつく季節。 多くの人が職場で一緒に働くのは、理解のある上司、気の置けない同僚、かわいい後輩ならいいのにと願っているはずだ。 そうは言っても世の中には、笑いながら傷つける言葉を吐いたり、周りに迷惑をかけたりするやっかいな人がいる。 仕事がらみだとどうしても言い返せず、 苛立 いらだ ちをためこみ心身に異常をきたすケースもある。 職場のやっかいな人たちから身を守る方法はあるのか。




 やっかいな人はどんな職場にもいます。

 そういう人に振り回されて、食欲不振、吐き気、動悸どうき、不眠、気分の落ち込み、意欲低下などの症状が表れたという方を長年観てきました。そこで、やっかいな人の心理について解説し、うまくかわしながら自分の身を守る方法を探っていきたいと思います。

 まず、具体的に職場にいるやっかいだと思う人を考えてみましょう。 どうでしょう? 1人や2人はすぐに顔が思い浮かぶのではないでしょうか。 うっかり口に出して名前を挙げると、それこそやっかいなことになりますので控えましょう。




 何げない会話の中で、こちらが傷つくことを平気な顔でズケズケと言う人がいますよね。 「 これを言ったら相手がどう思うのか 」 といった想像力が欠如している鈍感なタイプです。 暴言だなんてこれっぽっちも思っていない本当に鈍感な人もいますが、鈍感なふりをしている 「 知能犯 」 もいるので要注意です。 後者の場合は、相手が傷ついていることに気づかないふりをしながら、グサッと刺さる言葉の矢を投げつけます。 言われた側は 「 故意なのか、それとも悪気のない天然なのか 」 わからず、ただただ、思い悩んでしまうわけです。

 「 あれ、顔が疲れているね。 残業続きなんじゃない? 」

 ただのあいさつのようにも聞こえるこんな言葉。 いつも定時に帰っている後輩に投げかけられたらどうでしょう。 悪意が潜んでいる可能性もあります。



 いずれの場合でも、先輩の不用意な言葉で傷ついていることを気づかせることが有効です。 立場によっては、あまりきつい言い方はしにくいという場合もあるでしょう。

 「 心配していただいているようですが …… 」
 「 冗談のつもりかもしれませんが …… 」

 こうした “クッション言葉” を置き、 「 そんなこと言われると気分が落ち込みます 」 などと伝えてみてはいかがでしょう。




 先日、日本生産性本部が発表しましたが、2016年の新入社員は 「 ドローン( 無人航空機 )型 」 だそうです。 今後、さまざまな場面で活躍が期待できる一方、操縦を誤るととんでもないことになりかねないという意味が含まれているとのことです。

 電話が鳴っていても出ない、ファクスが届いていても取りに行かない、共有スペースのゴミなんて気にもしない。 雑用はまったくやろうとせず、 「 手伝いましょうか 」 とは決して口にしない。 職場のこんな後輩にイライラすることがあるかもしれません。

 こういう気が利かない人は、二つのタイプがあるように見受けられます。

 まず、 「 本当に鈍感で、気づいていない 」 タイプ。 自分の仕事だけで精いっぱい。 周囲に気が回らない人です。 「 言われたことをやればいい 」 という “指示待ちタイプ” である場合も多く、指示されていないことはやらなくていいとさえ思い込んでいます。

 もう一つのタイプは、 「 そんな雑用は自分の仕事じゃない 」 くらいに思い上がっているタイプです。 なんの根拠もない 「 オレ様 」 もいれば、 「 自分はちゃんと成果を出しているのだから、雑用なんかやらない 」 と天狗てんぐになっている 「 カンチガイさん 」 もいます。




 こういう後輩がいたら、「それも、あなたの仕事だからね」と根気強く教育するしかありません。オレ様やカンチガイさんになっているようなら、「社会人としてみっともない」ときちんと言う必要もあるかもしれません。




 さて、ベテランの方にもやっかいな方がいらっしゃいます。 振り回されている部下がたくさんいるのに気づいていますか。
 「 企画書を提出したところ、上司から何度も修正を命じられ、そのたびに徹夜で直していたのに、結局最初に提出したときの形に戻すことになった 」

 はっきりとした指針もなく、振り回された部下が指示通りに従ったがゆえに、心身ともにボロボロになってしまった朝令暮改の典型的なパターンです。

 そもそも、こういう上司の方はその能力に疑問符がつきます。

 また、うがった見方をすれば、自分は上司なのだから 「 自分のひとことで部下たちはどうにでも動く 」 などという 「 おごり 」 があるのかもしれません。 部下がどんなに時間を費やし、疲弊しようと、 「 大した問題ではない 」 と思っている可能性すらあります。




 こういう上司に対する防御策は、とにかく記録に残すことです。やりとりをできるだけメールや書類で行い、口頭の場合でも常にメモを残すことをお勧めします。「迷惑をかけたくないので……」「お手間をとらせたくないので……」などと、一応持ち上げるふりをするのも有効です。




 自分が指示しておきながらうまくいかないと、すべて部下のせいにします。 場合によっては、激しく叱責するケースもあるでしょう。 保身のことしか考えていないからです。 責任を他人に押しつけて自己正当化しようとしているのです。

 「 これ、前に教えたよな 」
 「 以前も同じ注意をしたはずだ 」

 まず、自分には非がないことを念押しします。

 「 なんでできないの? 」
 「 どうしたらこんなことになるんだ? 」

 問いかけになっていない非難を浴びせます。 言い訳を受け付けない方法です。

 しかも、こういうタイプは、反論しない相手に対しては、どんどん調子に乗る傾向があります。 フラストレーション解消のターゲットにならないように気をつけましょう。




 自分の立場を守ることしか考えていないタイプには、保身という 「 急所 」 をチクリと刺すしかありません。 「 私に責任を押しつけると、課長の損になってしまうかもしれません 」 と軽く揺さぶりをかけるのも一つの手です。




 こういうった女性( 実は男性版の 「 お局つぼね君 」 も大勢います! )は大迷惑です。

 噂話うわさばなしが大好きで、誰と誰が付き合っているとか、あの人は離婚協議中だとか、こういったたぐいの情報をどこからか集めてきてはしゃべりまくります。

 「 他人の不幸は蜜の味 」 というところがありますし、他人の生活をのぞき見したいという 「 窃視せつし願望 」 も強いようです。 私生活に欲求不満を抱いている人ほど、誰かをおとしめるようなネタを探さずにはいられません。

   「 あの人は、前の会社をリストラされたらしい 」
 「 不倫がばれて、前の職場にいられなくなったようだ 」

 職場の人間関係を十分に把握しきれていない新入社員や異動してきたばかりの人は注意が必要です。




 この手の話題が好きな人にはあまり深入りせず、興味がなさそうな素振そぶりをします。 「 人それぞれ、いろんな事情があるからね…… 」 と適当にあしらっておくのが賢明です。 へたに調子を合わせて、 「 へえ、そうなの 」 などと関心を示そうものなら、逆にプライベートをリサーチされ、噂話のネタにされてしまいます。





 「 本当は悪い人じゃない 」 「 きっと悪意はないのかも …… 」。 やっかいな人たちは、こんなふうに擁護されることがあります。

 一方、やっかいな人のターゲットにされていて、大変な目に遭っていながら 「 ちょっと考えすぎなのかも 」 「 気にしすぎだろうか 」 「 私が神経質なのかも 」 などと、自らを責める被害者もいます。

 これは、やっかいな人の多くが 「 自分は悪くない 」 と主張する自己正当化の達人だからです。 ですから、自責の念に思い悩むのはやめましょう。

 やっかいな人は、職場に限らず、学校にも、地域のコミュニティーにも、ときには親族内にもいます。 そこで、気持ちが楽になる3つのことを頭に入れておいてください。




 欲求不満、羨望、怒りなどの 「 負の感情 」 は誰にでもあります。 むしろ、あって当然です。 こうした負の感情が 「 やっかいな人 」 になっている要因の1つでもあります。 ねたみや嫉妬を、嫌みや暴言として吐き出さないようにするには、自らの境遇と向き合い、自分自身を認めてあげることが大切です。




 当たり前のことのようですが、これまで紹介してきた 【 対処法 】 は感情を小出しにするための方法なのです。 なんだ、そんなことかと思われることかもしれませんが、これは、感情をため込んだ結果、爆発して < キレる > という事態を防ぐためにこそ必要なのです。




 「 納得いかない 」 「 我慢できない 」 「 傷つけられた 」 という感情が沸き立つことが、多々あるでしょう。 それでも、 「 ちょっとクールに 」 ふるまうことをお勧めするのは、他人の性根を変えるのは至難の業だからです。

 その意味では、 「 あきらめる 」 ことにつながるのかもしれません。 「 あきらめる 」 ことにはネガティブな面だけでなく、 「 明らかに見る 」 という側面もあります。 つまり、目の前の現実を直視したうえで、上手にかわすということなのです。




 最後に、あなた自身がやっかいな人にならないために気をつけるべき2つの点を申し上げておきます。



 やっかいな人ほど、 「 自分では周りが見えている 」 「 相手のことを考えている 」 などと言い張ります。 自覚がないということが、周囲にとって 「 やっかいな人 」 になっている一因です。 「 人のふり見て、我がふり直せ 」 という言葉を座右の銘にしましょう。



 自分自身が鈍感な人にならないために、 「 どこまで許されるのか 」 を見極めましょう。 自分勝手な解釈を押し通していないか、常に自分自身を振り返るまなざしを持つことが大切です。 自分とはまったく異なる感じ方をする人もいるのだということをお忘れなく。


 





( 2016.10.23 )

     


 職場というのは奇妙な場所だ。 仕事の場であり、社会的な場でもあり、それぞれの側面が持つエネルギーが交錯する場だ。 私たちは同じ職場の人たちに対して友好的であろうとし、また率直であろうとするが、そうした中でもやはり、社会的なつながりではなく、仕事上のつながりという枠組みに縛られている。

 あなたにとっての上司は、人間として優れた人かもしれないし、素晴らしい指導者かもしれない。 ただ、それでもあなたと上司の間には、超えないことがあなたにとって最善の策だと考えられる一線がある。

 一緒に働くチームの中にあっという間に、そして確実に負のエネルギーを流れ出させるきっかけの一つになるのが、あなたと上司が友人同士になることだ。 あなたが仕事より友情を大切にする人で、上司との関係を保つためなら転職しても構わないと思える人でない限り、 「 上司の友人 」 の肩書は大抵の場合、それが生み出すトラブルに見合ったほどの価値はない。

 上司が賢明な助言者だったとしても、人間の恐怖心と信頼感は常に揺れ動いていることを覚えておかなければならない。 この人ほど格好が良く落ち着いた管理職はいないだろうと思うような上司でも、不安にかられた瞬間に、あなたを攻撃し始める可能性はあるのだ。 先行きの心配が生まれたその瞬間こそ、あなたが自分自身に関する情報を上司に与えすぎたことを、後悔する瞬間だ。

 上司との親しい関係の心地良さが忘れ去られたずっと後に、自分の発した言葉があだとなって返ってくるかもしれない。 そうなったときに、あなたがこっそり教えた自分に関する個人情報を上司が悪用しても、あなたは上司を責められない。 不安は人間にそういう行動を取らせるものだからだ。




 何があっても上司に教えてはいけないのは、次のようなことだ。
1.家計の詳細
2.今の仕事を辞めた後にどうするつもりか、などの将来のキャリアプラン ── 上司の支援が必要な場合もある社内での異動については例外
3.上司本人に関する否定的な評価や、いわゆるうわさ話
4.野心や願望 ── 上司が不安に駆られた行動に出る可能性がある
5.個人的な 「危機」 について ── 仕事に影響が出る話は例外
6.同僚に関する批判
7.今の仕事に対する不満や、辞める考えがあること ── 実際に退職するつもりなら、話は別だ
8.同僚、または上司に好意をもっていること ── 最悪なのは、上司本人にそれを伝えることだ
9.同僚がこっそり教えてくれたこと ── 上司が何らかの対策を講じるべき重大な問題なら例外
10.上司が精神的に弱ったときに、あなたを攻撃する材料として使い得るあらゆる情報
 あと1~2年は今の職場で働こうと思っているなら、上司がどれほどフレンドリーでも、こうしたことを話してはならない。

 上司も人間だ。 そして、人間は弱い。 簡単に恐怖に陥る。 その恐怖心の波は信頼感という波と共に常に私たちの周りでうねり、ぶつかり合っていることを、心に留めておく必要がある。





( 2016.10.24 )

     


 「 私、このたび青天の霹靂でまったく経験のない営業課長を拝命いたしました。 もともと製造畑ですので何もわかりませんが、皆さんのご協力を得て、業務をまっとうしたいと思います 」

 大変迷惑な話だが、定期異動の季節になると、こういう挨拶を聞くことになる。

 ジョブローテーション(*)は、 「 人材育成上、価値あることだ 」 ということになっている。 まったく知らない世界( 部署 )で異文化に触れ、これまでとは違うスキルを身につけ、幅広い見識をマスターすることができる。 それまで仕事の相手であった 「 向こう側 」 の業務のメカニズムを知ることで、自分が今までしてきたアクションがどのように受け止められるのかを肌感覚で知ることもできる。

 さらに、全社的にジョブローテーションを行えば、自然と人的ネットワークが広がる。 知り合いが増えるだけでも 「 頼みやすい 」 関係が生まれるし、たこつぼで 「 個別最適化 」 になりがちなところを、お互いの利害関係を整理した 「 全体最適化 」 につなげることができる。 すると、仲間意識が生まれ、会社としての調整力も上がる。 このようなメリットを見るならば、誰でもジョブローテーションは素晴らしいものだと感じるだろう。

 しかし、 私はジョブローテーションを基本的にあまり肯定しない立場である。 実際のところはどうなのか。 若手、中間管理職、経営幹部と、3つにわけて考えてみよう。
   ( * : ここでは、数年ごとに関連の少ない別の職務を経験させること、という意味で使っている )



 まず若手の異動の場合、たまたま配属された業務が適任であるのかわからないので、ジョブローテーションはいろいろな可能性を試す上でも良いだろう。 いろいろな経験を得ることも重要だ。 社内に様々な人的ネットワークを作ることができる点でも良い。 その業務だけを続けている人には後れを取り、専門性を極めるうえでは多少遠回りになるが、そこで負けないように頑張るのも能力アップにつながる。 つまり、若い人のジョブローテーションには意味があるといえると思う。

 次に経営幹部の場合、戦略とゴールを定めPDCAサイクルを方向づけるのが仕事だから、そこにいる管理職を使いこなすことができる人物なら、ジョブローテーションを有効活用することは可能であろう。 当該分野に対しての実務経験自体はなくとも、大局観と意思決定力があれば、機能する。もともと日々のビジネスは幹部が何もせずとも廻っていく。 他分野での知識や手法を持ち込むこともできるので、この人事異動もありえるだろう。

 困るのが、管理職のジョブローテーションである。 管理職はかなり実務的なレベルで、 “具体的” に何をどうするかを定め、問題があればどのように対応するかを “具体的” に指示し、誰に何をやってもらうかを “具体的” に定めなければならない。 その上で、状況を上に対して適切なタイミングで報告し、場合によっては必要な経営資源を獲得しなければならない。

 ところが、残念ながらジョブローテーションでやってきた上司は、着任後しばらくは具体的な話になると手も足も出ない。 必死で勉強すれば3ヵ月後くらいには “それっぽく” 話ができるようになり、半年後には管理職としてそこそこ機能するようになる。 しかし、一般的な管理職は、さらにその半年後には次の異動を考え始めるため、新しいことには積極的に取りくまなくなる。 そもそも、必死で勉強して機能する管理職など絶望的に少ない。 そして、2年~3年後には、また別のところにいってしまう。

 このような 「 腰掛け管理職 」 は仕事を進めていくうえでの障害でしかない。 にもかかわらず大手企業や役所では、いまだにこういったジョブローテーションが行われている。

 そして、この 「 腰掛け管理職 」 が来た部署は、間違いなく残業が多くなる。 内容をよくわかっている管理職なら20秒の立ち話でOKというレベルの話が、 「 ちょっと資料にして説明してくれる? 」 となり、基礎的な情報からレクチャーをしなくてはならない。 管理職がさらに上に報告をする場合などは、資料作成だけにとどまらず、上司が間違わないようにプレゼンの訓練につき合い、他者から質問を受けた場合のために想定問答集を作って手渡し。 それでも不安なので、その会議に補佐役として同席し、質問に立ち往生してしまった場合は、 “補足” という名目で代わりに質問に答える …… といったことまでやらなければならないのだ。

 自分ひとりではモノを決めることもできないから、いきおい会議で “衆知を結集して” 決めようということになる。 会議を開けば、その規模が大きければ大きいほど業務について知らない人も入ってくるため、全員にわかる資料を …… ということになる。 すると、資料はどんどん厚いものになり、図解なども入れる羽目になる。

 このように、ジョブローテーションで素人上司がやってきたら、しなくてもよい仕事が増える。 1つのOKをとるために、20秒が20時間になるくらいの差が出てしまうのだ。




 いま日本社会は、会社で長時間働くことをやめよう、という方向になっている。 そこで在宅勤務やフレックスタイムが取り入れられるのだが、これらが導入されてくると、 “社員同士が長時間オフィスで顔をそろえて一緒に仕事をする” という時間が格段に減ってくる。

 これまでなら、腰かけ管理職が多少矛盾したことを言っても、社員同士が勝手に話をして、調整して仕事を進めることができた。 近くにいれば、他人の仕事にも目がいくからだ。

 今後、社員同士が顔を合わせない時間が増えると、自動調整機能は働かないため、結節点にある管理職が適切に仕事を配分し、利害調整をし、危機管理を行い、さらにひとりひとりの能力開発をやらなければならない。 こうなった場合に、実務的知識がなく土地勘のない素人管理職にいったい何ができるのだろうか。

 また、皆が集まって大事なことを決める貴重な時間としての会議において、素人向けのレクチャーなどやる時間もない。 重要な議論は何なのか、何を争点として議論するのかをしっかりと把握して、どんどん会議を進めていかなくてはならないからだ。 それができない者に、管理職など務まりようもない。

 つまり、時短や在宅勤務とジョブローテーションは相性が悪い。 「 素人部長や素人課長は、新時代にはデメリットのほうが大きい 」 と声を大にしていいたいのである。

 ところが、 「 やっぱりジョブローテーションが大事だ 」 と譲らない “抵抗勢力” がいる。

 社長である。

 大手企業の社長は、だいたいジョブローテーションの中で、自分の知らなかった世界を知り、その分野の世界観や技術観を獲得し、それまで得意だった仕事の上に新しい知見を加えて統合して、 「 立派になった 」 のである。 彼らはその成功体験から、ジョブローテーションこそ自分の能力を上げてくれたものであると心の底から信じている。

 きっとこれは嘘ではない。 そして、こういった社長のような人はいる。 新しいセクションに異動したらすぐに猛勉強して、管理職として機能するための技術やスキルをあっという間に身につけ、適切に部下に質問ができるようになり、適切に上に報告できるようになる。

 さらに、過去の自分の経験や知識を新しい仕事に加味して、大きな成果を出すのである。 だからこそ、どんどん出世して社長や上級役員にまで上り詰めるのだが、こういう優れた管理職の出現確率はよくて2割、実際のところは1割以下だろう。

 あとの8割は “ただ居ただけ” である。 2年後には、いちおう仕事に必要な用語を覚え、社員との面識はできるだろうが、本当の意味でその業務を深く把握するにはほど遠い状態で去っていく。

 社長や上級役員は、ジョブローテーションが本当にうまくいっているのか、自分の経験を度外視して、実態を見るべきだ。 すると、部下にプレゼンの資料を作らせシナリオまで書かせているお荷物管理職の姿が見えてくるのではないだろうか。

 一つの答えとしては、一律なジョブローテーションは廃止して、社長と同様に新たな世界観を短期間に獲得し、成果を出せる “本当に能力の高い者” だけに絞って異動させることだ。 社内の人的ネットワーク構築については、別の手段を使えばよい。 普通の人にジョブローテーションをさせたところで、当人の実力アップにもつながらないし、時短の邪魔になるだけである。