( 2017.06.20 )






 「話聞いてないオジサン」 とは、何かを始めようとすると、 「オレは話聞いてないぞ!」 と叫ぶオジサンのことです。 それを少しだけ縮めてみた呼び方です。 みなさんの職場にも、結構いるのではないでしょうか。

 地域でのプロジェクトでも、必ず現れるオジサンの「1種族」 が 「話聞いてないオジサン」 です。 何かを始めるときだけではありません。 事業がうまくいかなくなったときにも必ず 「オレは話を聞いてない」 という人が出現します。

 しかしながら、地域で新しい事業を立ち上げるときは、ただでさえヒト・モノ・カネが不足しがちです。 初期段階で、 “聞いてないオジサン” 全員に個別対応なんてしていたら、事業の失敗は間違いなしです。

 そのため、聞いてないオジサンを分析し傾向を把握したうえで、対策を講じておく必要があります。 実は、話聞いてないオジサンといっても、大きく2つに分類することができます。 また、 「話聞いてない」 という動機についても、かなり異なるので、対応も変える必要があります。

 2つの分類とは、以下です。

(1)組織的なライン( 責任のあるポジション )にいたり、利害関係者に含まれる人=責任をとりたくない人
(2)そもそも直接的に関係ない人=そのプロジェクトなどが気に入らない人

 まず(1)の組織的なラインにいたり、実際の事業に関与する人が 「オレ話聞いてない」 と言い出すときは、大抵はその責任範囲から逃れたいときです。 事業を立ち上げるときは、立ち上げて失敗した後の責任をとりたくない。 さらに、最初は賛成していたのに事業の雲行きが怪しくなってきた後に言い出す場合には、事後的に自分たちは逃げたいという話です。

 事業というものは、最初からうまくいかないものですし、最初はうまくいったとしても必ず壁にぶつかります。 それを乗り越えてこそ、事業は成長していくわけで、 「話聞いてない」 とか言うオジサンは、そもそも自分でどうにか道を切り開こうとする人ではないということになります。

 また、(2)のそもそも直接的に関係ない人が 「話聞いてない」 と言い出すことも、地域では多々あります。 資金を出すわけでもなく、別に隣近所であるわけでもないのに、急に脈略もなく 「話聞いてない」 と差し込んでくる人もいます。 この手の人は、大抵、その多くが 「やることなすこと、気に入らない」 わけです。 そのまま言うと幼稚だととらえられるので、建前で 「話聞いてない」 と言い換えています。 この場合、どんなに事業の説明をロジカルにしたところで、通じません。




 話聞いてないオジサンに振り回されてはいけません。 これには主として3つの理由があります。

(1)個別に時間を割くと膨大な時間がとられ、事業が失敗する
「膨大な時間をとられる」 とは前にも書いたとおりですが、たとえば1時間の説明を10人にするだけで10時間もかかります。 しかも 「聞いてない!」 というオジサンは1時間程度の説明を1度したところで、 「そうか」 などと言ってはくれません。 何度も何度も 「聞いてない」 と言い、呼び出されます。 そんなことをやっていたら、1週間どころか1ヵ月だってあっという間に過ぎていきます。

 結果として、本来なら事業開発や営業などに割くべき時間が少なくなり、 「失敗へ一直線」 になることが少なくありません。 それでは 「ほら、オレたちがいったとおりだ」 などということになり、聞いてないオジサンたちの思うツボです。
(2)話をしてもわかり合えず、さらに嫌われる
 人間、気に入らないことは、頭に入ってこないものです。 大抵は話を聞いていないのではなく、企画立案時には 「オレの納得するような話になっていない」 ということが多いのです。 また、状況が悪くなったときには 「オレは関係していない。 責任はない」 と言いたいがために 「オレは聞いていない」 と言っているわけです。 結局、どこまでいっても自分が納得するような結果にならないかぎりは、 「聞いた」 とはならないわけです。
 そのような中で、個別に説得を行えば、むしろ話はこじれ、 「生意気なやつ」 くらいの扱いになり、よりいっそう圧力をかけたりします。 ほとんどの場合、 「向き合い損」 なのです。
(3)聞いてないオジサンのほうを向くと、支持者がいなくなる
 そもそも協力者であったり、事業に取り組む支持者である人たちは 「話聞いてない」 なんて言わず、自分から聞きに来てくれます。 「最近どうだ?」 「うまくいっているか?」 「困ってないか?」 「人、紹介しようか?」 と、必要なリソースを提供してくれる彼らこそ、事業立ち上げに欠かせない人たちです。
 にもかかわらず、 「声だけは大きい聞いてないオジサン」 に振り回され、彼らの言うままに妥協などしていると、そのうちせっかくの協力者や支持者から愛想をつかされます。 向き合うべきは支えてくれる協力者であり、話聞いてないオジサンではありません。 しかも、何より、 「その他大勢の人」 は無関心です。 話聞いてないオジサンよりも、そちらのほうがはるかに問題なのです。
 私の場合、話聞いてないおじさん向けの対応策をいくつか講じています。 代表的な対策は以下の3つです。




(1) 説明会や情報提供を徹底的に実施して、 「聞いてないほうがおかしい」 という状態にする
 地域での新規事業の際には、あまりに聞いてないオジサン対策として、 「ここまで機会をつくっているのに聞いてないほうがおかしい」 という状況をつくることがあげられます。
 過去には、1年間、毎月複数回、ひたすら各商店会長や町会長らといった会長クラスを集めて勉強会を開催したことがあります。 ときには平日・土日で日中と夜に一気に説明会を開催したこともありました。 個別対応よりはよっぽど楽ですし、何より、関心を持った多くの人が説明会などに参加してくれますし、結果として協力者も増加するという 「よい副産物」 もあります。
(2)「話を聞く場」 と、 「事業の意思決定の場」 を分ける
 とはいえ 「人の意見を聞かない( 聞く耳を持たない )」 というだけで、なんとなく人間としてダメみたいな風潮は、いまだに強く残っています。 そのため、私は 「協議会的な組織」を立ち上げて、そこに地域のさまざまな人に入ってもらい、定期的に事業報告などを行ったりします。 年次報告書を出したりする場合もあります。
 しかしながら、それはあくまで協議組織。事業会社側はちゃんとリスクを負って、事業に取り組む少数の関係者で立ち上げ、経営します。 「意見は聞くけど、採用するかどうかは経営判断」 というスタンスが、いちばん事業をスムーズに動かします。
(3) 勝てば官軍。 成果を急いで、手柄を渡せ!
 まぁ何をやっても、聞いてないという人は減らないです。 いちばんの対策はこれかもしれません。 急いで小さくとも成果を生み出し、その手柄を 「聞いてないオジサン」 におすそ分けするのです。 大抵の場合は、うまくいき始めると 「オレも最初からあれはうまくいくと思ってた」 「オレが最初に支援してやった」 といったようなオジサンはたくさん出てきます。
 つまり、話聞いてないオジサンにあまり気をもむ必要はないのです。 事業を軌道にのせて官軍となれば、あとはどうにかなることばかりです。 そのときに話聞いてないといっていたオジサンに、 「いや〜◯◯さんのおかげですよ」 という話をして、マスコミ取材などの一部をその人にもしてもらうように段取りをつければ、 「私は今後とも応援していきます」 とかコメントして協力者になってくれることが多くあります。

 あまり初期の段階で 「聞いてないオジサン」 と対立し、 論破でもしようものならば、 さらに溝が深まります。 最初は効率的な説明会や意思決定では関与しないように程よく付き合い、 早急に事業の成果を生み出し、 その手柄を分ける、 それがいちばんの処方箋です。 実は手柄なんて一銭にもなりませんので、 あげられるものはあげてしまうのがいちばんです。