( 2016.09.24 )
「息子の初体験は私が!」 暴走する “ムスコン” 母はなぜ生まれる

 夫との不仲が、妻の愛情を息子に向かわせる ――。 「 ムスコン 」 母の歪んだ愛情は、一歩間違えば、近親相姦、つまり虐待になりかねない危険性をはらんでいる。

 マザコン、シスコンといった造語に最近、新たな言葉が加わった。 「 ムスコン 」 とは、息子を異性として見て、溺愛して止まない母親たちのことだ。 一歩間違えば近親相姦、つまり虐待につながりかねない危険な風潮は、いったい何が原因なのだろうか?


● 増殖する 「ムスコン」 母の 仰天な言い分

「やっぱり男の子は可愛くて。 将来、変な女と関わるくらいならいっそ、私が息子の初体験の相手をしようかと … 」 ――。
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 このムスコンとは、子どもが母親に強い愛情を持つ 「 マザコン 」、姉や妹の場合だと 「 シスコン 」 という言葉から派生した造語だそうだ。 その発祥はフジテレビ系の情報番組からだという。

 東京都に住むアイコさん( 38 )もそんな 「 ムスコン母 」 のひとりだ。 6歳の娘と4歳の息子、2人の子を持つ母親でもあるアイコさんは、10歳年上の夫とは最初の子である娘の出産以来、ずっとセックスレスの状態が続いている。 息子は不妊治療の末、体外受精で授かった。 夫とはセックスをしたくなかったための選択だ。 決して健全な夫婦関係とは言えないが、家族仲はとてもいいという。

 だが配偶者である夫には異性としての魅力はもはや感じられない。 2人の子どものうち、娘は自分の分身のような存在。 だから夫にも娘にも、ついついキツく当たってしまうのだという。 その分、息子には溢れんばかりの愛情を注ぐのだとか。 その心情をアイコさんは次のように語る。
「私にとって息子は “全て” です。 例えて言えば 『 とても手のかかる年下の異性 』 です。 子育てでは毎日、彼、つまり息子に振り回されていますが、それも恋愛に似たドキドキ感があります」
 まだ息子が紙オムツをしていた1年ほど前の日のこと、オムツ替えの際、 「 遠い将来、どこの馬の骨ともわからない女に、この子の体を触られたくない 」 との思いがふつふつと沸いてきた。 息子は自分のものだ。 好きにしていい筈だ。 気がつくと当時3歳の息子の性器にキスしていた。 遠い将来、よく知らない女にそうされる前に、母親である自分がそうする権利があるとの思いからだ。

 しかし、その様子を見ていた夫からは、 「 お前は何をしているのだ 」 と激怒され、暴力を振るわれた。 それでもアイコさんは、 「 自分がお腹を痛めて産んだ子に愛情を表現して何が悪いのか 」 との思いで一杯だった。


● 3歳までなら許容範囲!? 母の持つ息子への疑似 「恋愛感情」

「これから彼が成長する過程をできる限り、共にしたいです。 できれば高校卒業くらいまでは一緒にお風呂に入って、話ができる関係を築きたいです。 彼がどう思うか? そこは彼の意思よりも、母親としての私の希望が優先です!」
 実のところ、このアイコさんにみられるような、母親の近親相姦的な愛着について、あるカウンセラーのひとりは、 「 特に目新しい話ではない 」 とした上で次のように語った。
「子どもの成長と共に、母親もまた成長します。 なので、息子が小さいうちはその可愛さから異性への恋愛感情に似たそれを持つことはあっても、いつまでも続くものではありません。 多くの母親は、息子の成長と共に感覚が健全になり、 『 子ども 』 としてみていくものです。 息子もまた、母親から 『 親離れ 』 していきます。 もちろん5歳を超えて性器にキスするようでは、ちょっと考えものですが、3歳くらいまでなら、まだ 『 ママも若かった 』 で済まされる範囲でしょう」
 元を正せば、母親の身体の一部だった我が子。 3歳くらいまでは、母子の一体感が恋愛感情と紙一重であっても 「 異常 」 とは言えないのだ。

 このカウンセラーは 「 目新しい話ではない 」 と言うものの、近年、アイコさんにみられる 「 ムスコン母 」 が目立ってきたのはなぜか。 その要因には、家庭における 「 父親不在 」 の状況があるという。
「父親不在というのは、何も離婚や別居により家庭内に父親( 夫 )が居ないという状況だけではありません。 家庭に父親( 夫 )がいても、夫婦仲が良くなく、その存在をないがしろにしている状況は、実質的に父親( 夫 )不在と同じです。 現在、この父親不在が多くの家庭で起きていることが、分かっています」( 前出のカウンセラー )
 ここでいう 「 父親( 夫 ) 」 は、セックスレスの状況でもある。 もし母親が夫とセックスの関係があれば息子に性的感情を持つことはない。 夫が難しい場合、夫以外の男性でも、ある程度の代わりにはなるだろう。 しかしそうした存在がない場合、母親はもっとも身近な異性である息子に性的感情を抱くことになるという。 前出・カウンセラーが続けて語る。
「妻や母親という立場をとても重く捉えていて、かつ性への嫌悪感が強い女性ほど、夫や婚外の異性の代わりとして、息子に近親相姦的愛着を持つ傾向が顕著だという印象です」
 この 「 性への嫌悪感 」 は2つのパターンに分かれる。 ひとつは先述のアイコさんにみられるような夫との不仲である。 しかし妻であり母親である立場を重んじれば、婚外で性的欲求を満たすわけにはいかない。 なので、息子に近親相姦的愛着が向けられるという理屈だ。

 そして、もうひとつはこれから紹介するミサキ( 35 )さんにみられるように、若い時分は性に奔放だったが、子を持ち母親となった途端に責任感や倫理観から性的欲求を封じ込めたため、そうした欲求が息子に向けられるというパターンである。


● 息子を 「理想の彼氏」 に育てる! 35歳シングルマザーの願望

 大阪府内に住むシングルマザーのミサキさんは5年前、同い年の男性と 「 授かり婚 」 したものの、嫁姑の関係に悩み3年間で離婚した。子どもは5歳になる息子がひとりいる。
「今は私の実家に戻っています。 両親の援助があるとはいえ、母子2人の生活は決して楽ではありません。 子どもの将来を考えると再婚も選択肢のひとつであるとわかっています。 でも、独身の頃とは違い、今は母親という立場と責任があります。 結婚するお相手は夫だけではなく、子どもの父親としてふさわしい方かどうかも考えなければなりませんから」
 学生時代から美人と評判だったミサキさんの20代は、男性に不自由することなどなく、常に何人かの男性が取り巻きとしていたいう。 そんな奔放な恋愛を楽しんでいたものの、不思議と結婚願望はなかった。 正社員として働いていた仕事が充実していたことが大きい。 だが、急な妊娠で、母親としての自覚と責任感が芽生えてきた。 妊娠を契機に何人かいた交際相手との縁は全て断ち、結婚した。
「予想外の妊娠でした。 でも、家庭は新婚当初からうまく行きませんでした。 そうなると夫には何も期待できません。 唯一の希望は息子だけです。 不思議と、母親となってからは他の男性に魅力を感じることもなくなりました。 散々、遊んできたからかもしれませんね」
 こう語るミサキさんは、5歳の息子を、 「 血を分けた、もっとも理想の彼氏 」 として育てているという。
「育てているというよりも 『 尽くしている 』 という感覚です。 まだ先のことはわかりませんが、もし息子が将来、彼女を連れてきたら、絶対に許せないです。 その彼女とやらはタダで済ませるつもりはありません! 人の男を取りやがって ―― そんな感じですね」
 最愛の息子とは、寝る前のハグと、幼稚園に行く際や帰って来た際の 「 お別れとお帰りのキス 」 を毎日欠かさない。 当然、お風呂も毎日一緒。 できることなら、 「 成人する20歳までは続けたい 」( ミサキさん )という。

 冒頭部で紹介したアイコさん、先述のミサキさん、その過程と背景は異なるものの、息子を 「 小さな異性 」 とみているところは一致している。

 こうした近親相姦的な愛着を持つ母親の心理とはいかなるものなのか。 発達心理学を専門とする関西学院大学の桂田恵美子教授によると、そもそも 「 愛着 」 という言葉の使い方が違うと指摘する。


● 「夫が構ってくれない」 から 母親が持つ、息子への歪んだ支配願望

「ともすれば愛着とは、べったりとした繋がりを連想しますが、本来は、もっと健全な関わりを指します」
 親子の健全な関係を築くには、親はあくまでも子にとっての 「 セキュリティーベース 」 となることが第一だ。 子どもが外で不便に思う何かがあった際に、帰って来れる場であること。 そして、これを親も子も自然に言葉にせずとも分かっていることがいい。

 しかし、子どもが成長するにつれて、いつしか親離れ、子離れをするのが健全な親子関係であり、繋がりだ。 そのため近親相姦的な 「 愛着 」 というのはあり得ないという。 前出・桂田教授が語る。
「母親が息子を性的存在としてみるのはなぜか? 同性である娘は自分と同一視できますが、異性である息子は同一視できないからです。 だから、息子を性的存在として見てしまう母親がいるのです」
 近親相姦とは、言うまでもなく虐待である。 実際にそれを行わずとも、そうした意識を持つことは、子どもを 「 支配したい 」 という感情がそこにはあると、桂田教授はいう。
「子どもが自分から逃げていくのを嫌がる、引き留めたいという母親の意識があるのでしょう。 本来、母親の持つ性的欲求は、当然ながら配偶者である夫に向けるべきものです。 それが息子に向くということは、夫が構ってくれない、もしくはそれが望めない状況にあるからではないでしょうか」
 さて、2014年9月に実施された日本家族計画協会による 「 第7回 男女の生活と意識に関する調査 」 によると、婚姻関係にある回答者のうちセックスレス状態にある夫婦は実に 「 44.6% 」 に上ることがわかった。

 このセックスレスとは、日本性科学協会の定義によると 「 特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意したセックスあるいはセクシャル・コンタクトが1ヶ月以上ない状態 」 を指す。

 意外に知られていないが、キスやペッティング、裸でのベッドインといった 「 セクシャル・コンタクト 」 を行っていれば、これはセックスレスではないということだ。

 夫が妻とのセックスを拒むのは、加齢による体力面での衰えに加え、仕事などのストレスといった要因が大きいようだ。 また当然ながら、充実したセックスの前提には、夫婦が互いの存在を認められるような、良質な関係性が必要になる。

 桂田教授やカウンセラーが指摘するように、子どもが育つにつれて、きちんと親離れ、子離れできなければ、健全な大人の男性になることはできない。 しかし、度が過ぎた 「 ムスコン母 」 は、子どもが育つ( =自分の元から離れる )ことが、堪え難いのだ。 そんな母親の元で育った青年の行く末は、単なる 「 マザコン男 」 では済まないだろう。 実際に近親相姦をしないまでも、常に母親からのそんな “空気” を浴びながら育つ息子に、心底同情を覚えた。

 そして、この問題は母親( 妻 )だけに責任があるのではない。 父親( 夫 )もまた、妻を守るだけでなく、息子を守るためにも、家族をないがしろにしてはいけないのだ。