( 2018.04.11 )

 


オトナのマネーの世界は 「汚い」

 4月も第3週に入った。 新社会人も少しオフィスに慣れた頃ではないだろうか。 今回は、特に新社会人の皆さんに 「オトナの世界のマネーのルール」 を教えたい。

 なお、漢字で 「大人」 と書かずに、わざわざカタカナで 「オトナ」 と書くのは、単に年齢と立場が成人なだけではなく、物事の仕組みが分かったずるくも賢くもある成人を対象にしているからだ。

 さて、社会人になり、自分のお金の扱い方を自分で決められるようになると、そのお金を狙って、多くのオトナがさまざまな誘惑の手段で近づいてくるようになる。 残念ながら、そうしたオトナの誘いに乗ると、あなたは大抵の場合、金融論的に明白な損をすることになるし、単に損なだけではなく、想定外のリスクを抱え込むこともある。

 残念ながら、オトナ同士がマネーをやり取りする 「世間」 とは、そのようなものだ。 はっきり言って、汚い。

 そして、特に金融業界に就職した場合、あなた自身が仕事の上で誘惑する側、つまり “加害者” の側に立つ場合もある。 それでもいいと思うかどうかは、人それぞれだ。 現実に、早々に金融業界を去る人もいる。

 振り返ってみるに、運用会社、証券会社、銀行、生命保険会社などに勤めてきた筆者自身は、明らかに加害者の側にいた。 顧客から不当に高い手数料を取ったり、余計なリスクを負わせたりするビジネスに、直接・間接双方の形で関わってきた。

 特に、マネーの世界にあっては、動く経済価値の単位が大きいし、意思決定・行動の損得が金銭単位で評価できる。 ミスを犯すとその影響が大きくなりがちであることと、ミスがことのほか悔しいことが、この世界の特徴だ。

 一方、顧客と金融マンの双方が、より幸せになる道は案外簡単に見つかる。 顧客の側が賢くなればいいのだ。

 顧客が単純なミスをしなくなれば、金融マンの方も仕事のレベルを上げざるを得ないし、これについてくることができない金融マンは脱落して、別の世界で働くことになるだろう。 それは、社会的にいいことだ。

 しかし、単純なミスをする顧客が多いのが現実である。


新社会人は 「マネーの三悪」 を避けよ

 具体的な話の方が分かりやすいだろう。 新社会人が犯しやすいマネーのミスを三つ挙げよう。

(1) リボルビング払い

 まず、カードのリボルビング払い、通称 「リボ払い」 である。

 給与振り込みの口座を銀行に作った場合、キャッシュカードにクレジットカード機能がついている場合があるし、クレジットカードのセールスを受ける場合もある。 この場合に、リボルビング払いを勧められなかっただろうか。

 リボルビング払いとは、カードを使って大きな金額を支払った場合に、月々1万円、2万円といった、あらかじめ決められた単位でこれを決済していく支払い方法で、未決済の残高はカード会社から借りる形になる。 問題は、その際の金利が、例えば14%といったひどく高いものであることだ。 また、同時に、こうした細かな借金は、借金生活への入り口でもある。

 新社会人では、14%という金利の評価ができないかもしれないが、年金基金のような機関投資家が使う株式の期待リターンが概ね5%程度でその3倍近いし、複利で増えることを放置すると、借金は5年でほぼ2倍になる利率である。

 銀行を始めとする金融機関は、お金持ちからは運用商品の手数料を稼ごうとして、貧乏人にはローンを負わせて金利を稼ごうとしている。

 例えば、預金口座を開いた銀行では、リボルビング払いを勧められなかっただろうか。 勧められたとしたら、その銀行及び銀行員は、あなたの味方ではなく、敵だと思うべきだ。

 もちろん、銀行口座を使わないわけにはいかないので、預金口座はそのままでいいが、カードの決済方法は 「リボ外し」 を徹底して、以後、その銀行の銀行員のセールスやアドバイスは一切受けないことを決意しよう。

(2) カードローン

 近年、金融機関、特に、銀行が力を入れているのは、無担保でお金を貸す 「カードローン」 だ。 実態は、消費者金融会社のローンと大差ないのだが、ネットで申し込んだだけで数百万円借りられるような、一見手軽に利用できるローンになっている。 だが、カードローンもリボルビング払い並みに金利が高い。 決して利用しない方がいい。

 消費者金融会社は、トータルで借り手の年収の3分の1以上貸してはいけないことになっているが、なぜか銀行はこの規制の適用外であり、今や、銀行のカードローン残高の方が、消費者金融会社の融資残高を上回るようになった。

 新入社員の初任給では厳しいかもしれないが、老後に必要な資金を計算すると、民間サラリーマンの場合、現役時代の手取り所得から2割程度を蓄えなければならない場合が多い。 そもそも、手取り所得を目一杯支出する状況は、自分の経済的な実力を超えてお金を使っている状態だと認識する必要がある。

 「借金」 について、場合によっては利用してもいい 「いい借金」 と決して利用しない方がいい 「悪い借金」 の区別の仕方をご説明しておこう。

 将来返せる原資の当てがあって、同時に金利水準が市中金利よりもひどくは高くない借金は、 「いい借金」 である可能性がある。 例えば、企業が十分に収益の見込める事業の資金を、銀行から借りるのはいい借金である可能性があるし、個人の場合でも、家賃収入の見込みに十分な余裕のある住宅ローンは借りてもいいかもしれないし、大学に行って収入が十分増える見込みがあれば、現在の金利水準なら奨学金もいい借金である可能性がある。

 しかし、リボ払いやカードローンの借金は、金利水準の一点だけから見ても、悪い借金だと断言していいだろう。

 新社会人になってまず目指すべきは、収支のつじつまが合う支出生活のペースを確立することだ。 間違っても、カードローンに手を出すようなことのないように生活しよう。

(3) 医療保険を含む生命保険

 独身の新入社員に、生命保険はいらない。 万が一あなたが亡くなっても、悲しむ人はいるかもしれないが、生活に困る被扶養者はいないからだ。 生命保険に加入することが社会人の常識だとか、若い頃に生命保険入っておくと保険料が安くて得だといった、保険セールスの口上を信じるのは愚かだ。

 生命保険が必要になるのは、十分な蓄えがない間に結婚して子どもが生まれた場合に、最長で子どもが成人するまでの期間限定で加入する、死亡保障のシンプルな定期保険だけだ。

 加入する保険は、掛け捨てに限る。 若い人は、おそらくネット生命の保険料が安いだろうし、年齢が上がってくると共済が安い場合もある。 外資系を含めて、セールスマン( あるいは、セールスレディ )が説明するような民間生保の保険料は無駄に高い。 貯蓄部分のある保険は、掛け捨ての保険に加えて、運用の商売でも手数料を払う分、ばかばかしいと理解しよう。

 死亡保障の保険がいらないと理解したとしても、病気が心配な人は、がん保険などの医療保険に加入しがちだが、これも止めた方がいい。 はっきり言って、がん保険に入ったからといって、がんにかかるリスクが低減するわけではない。 いざというときの医療費には、健康保険の高額療養費制度( 知らない人はネットで検索して調べてください )があるので、十分対応できる。

 死亡保障の保険にせよ、医療保険にせよ、民間の生命保険会社が提供する保険は、保険会社の運営費や利益が保険料にたっぷり含まれる、平均的に損な賭けなのだ。

 自動車を運転する際の自賠責保険のような、まれにしか起こらないが、起こった場合の負担が極端に大きいケースには保険という仕組みが適するが、老後、病気といったありふれた事態に備える目的に、保険は向いていない。

 「できるだけ避けるべき、損な賭け」 が保険の本質だ。 しかも生命保険には、契約者が支払う保険料のうち、3割から5割程度が、契約者に支払われる保障にも貯蓄にも回らない、実質的な手数料である商品が多い。

 保険会社が手間を掛けて熱心に売るのは当然だが、顧客はできるだけ付き合わない方がいいのもまた当然だ。 しかも、高額で複雑な商品であるにもかかわらず、保険料の内訳が開示されていないことは、消費者保護上大きな問題だ。 現在の金融行政の明らかな落ち度だと言っていいだろう。


オトナの世界のマネーの4原則

 リボ払い、カードローン、生命保険のようなありふれた商品やサービスにも、明白な 「不利」 が潜んでいることをご理解いただけただろう。 こうしたものを、ニコニコと微笑みながら親切そうに勧めてくるのが、オトナのマネーの世界なのだ。

 「三悪商品」 は身近で簡単な具体例だが、今後、新社会人の読者は、自分が持つお金が増えるにつれて、資金の運用などで不利であると同時に、もっと危ない話にも接することになるだろう。

 繰り返すが、お金の判断のミスは、損失の規模が大きくなりがちだし、大変悔しい。 以下、お金の判断ミスを避けるための一般的な原則を四つ挙げておく。


【 マネーの判断ミスを避ける4原則 】
(1)他人( 金融マンも、友人も )が確実に儲かると教えてくれる儲け話は、信用しない方がいい。 特に金融機関は、本当に有利に儲かるなら、他人に教えずに、その機会を自分で利用するはずだ。
(2)金融マンやロボアドバイザーのようなプログラムに、運用を 「お任せ」 したり、 「相談」 したりすることは、自分の状況を悪化させた上に手数料を払う愚行である。 自分で判断できないことは、やらないと決めておこう。 専門家に相談すると気が楽だという依頼心が隙を生む。
(3)少なくとも 「相談」 の相手と、 「商品を購入する」 相手を分けることが肝心だ。 また、金融マンでもフィナンシャルプランナーでも、プロの時間を使うと高くつく。 人間から運用商品を買うと幸せにならない。 彼らを、敬して遠ざけよ。
(4)自分のお金の状況に関して、金融ビジネスを含む他人に情報を持たせない方がいい。 特に、銀行はお金の動きを知っているので、銀行で運用商品を購入しないことが肝心だ。


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