41億年前、地球上に誕生した生命は宇宙から飛来したものなのか。 火星探査機や国際宇宙ステーションで謎に挑む試みが続いている。

 今から41億年前、地球上に生命が誕生したと考えられている。 2015年10月に米国の研究者グループが41億年前の鉱物内に生命の痕跡ともいえる炭素を発見したことがその根拠だ。 では、生命はどのようにして誕生したのだろうか。 地球上で誕生したという説と、宇宙からもたらされたという説の2の説がある。

 生命誕生にはタンパク質のもとになるアミノ酸が不可欠の物質である。 2説のうち、前者は、1953年に米国でミラーといラ大学院生が原始大気を模した気体の火花放電によってアミノ酸をつくりだしたこと、また後者は、69年にオーストラリアに落下した限石に地球外でつくられたと考えられるアミノ酸が付着していたことから、それぞれもっともらしい説として考えられるようになった。 このように、いまだに生命の起源が地球なのか宇宙なのかについては専門家でも意見が割れるところだが、15年にNASA( 米航空宇宙局 )の科学者の一人が、10年以内に地球外生命体の手がかりを、20~30年後にはその決定的な証拠を得られると予想したように、地球外に生命体がいる可能性はますます高まってきている。 46億年前の地球誕生からたった5億年で生命が地球上で誕生したと考えるのには無理があると考えている研究者も増えてきたということだろう。

 では、地球外生命体が宇宙空間を旅し、地球にたどり着いた可能性はあるのだろうか。 1908年、スウェーデンのアレニウス博士が著書 『 世界のなりたち 』 の中で、 「 生命の種子が太陽の光の圧力によって惑星間を移動している 」 とする 「 パンスペルミア説( 宇宙播種説 ) 」 を提唱した。 アレニウス博士は酸・塩基におけるアレニウスの定義をつくるなど学校教科書でもおなじみの人物で、1903年にはスウェーデンで初めてのノーベル化学賞を受賞したことでも有名だ。

 彼の説を直接的に証明することは困難だが、 ① 他の惑星から地球へと生命がやってきたケースがないか、 ② 他の惑星に生命がいた、もしくは現在もいるというケースがないか、 ③ 地球から他の惑星へと生命が出ていくことはないか、といった観点から検証していくことができるだろう。


① 他の惑星から生命がやってきた

 南極大陸で見つかった数万にも及ぶ隕石の一つに、アラン・ヒルズという場所で見つかった隕石がある。 この隕石はアランーヒルズ84001と名付けられており、火星から来たものだと推定されている。 96年にNASAのマッケイ博士が、隕石内部から直径20ナノメートル( 1ナノメートルは、1ミリメートルの100万分の1 )から100ナノメートルの鎖状の構造をした細菌の 「 ようなもの 」 を見つけたと 『 サイエンス 』 誌に発表した。 その後、 「 形態的特徴は生物由来のものだ 」 「 形態だけに注目して生物由来とは言えない 」 など多くの議論が巻き起こったが、現在のところ結論は出ておらず、火星から地球に生命がもたらされたのかについてはいまだ謎のままだ。


② 他の惑星に生命がいた( いる )

 ではそもそも火星に生命はいた、もしくは現在もいるのだろうか。 ここ数十年、人類はこの問いに真剣に取り組んできた。 その最初は、NASAが76年に行ったバイキング計画だ。 この計画では、さまざまな科学的な方法を駆使して生命の存在の検証を試みたが、結局のところ生命の存在は全ぐ確認できなかった。 とはいえ、全く成果が得られなかったわけではなく、過去に水が流れたであろう地形、地下に氷が存在するなどを突き止め、41億~45億年前には火星の地表に海や湖が存在したと推定することに成功した。 水の存在が確認できたことで、当然のことながら火星における生命の存在への期待が高まった。

 現在は、2012年に火星に降り立った探査機・キュリオシティが生命の痕跡を探して火星中を探査中だ。 すでに得られた成果としては、メタンガスの濃度が約60火星日( 1火星日は24時間39分 )で約100倍になったケースを観測したこと、すなわち火星においてメタンが放出されている可能性を突き止めたことがあげられる。 地球の場合、メタンのほとんどは生物から出されていることが知られている。 そのため、火星でメタンが放出されているとなれば、メタンを放出する生物( 地球におけるメタン生成菌に相当 )が現存するか、過去に存在したかの可能性が高まる。 もちろん、生物に由来しない方法でメタンが発生した可能性もあるため、これだけでは火星に生命がいる、またはいたという根拠としては弱い。

 火星における生命のさらなる追求のため、今後次々と火星探査機が送り込まれる計画がなされている。 欧州宇宙機関が18年に、ドリルで地下2メートルを掘って有機物の探索を行える探査機・エクソマーズローバーを火星に送り込むことを計画している。 また20年には、NASAがキュリオシテイよりも高性能な後継機を火星に送り込む予定だ。 将来のサンプルリターン計画に備えて採取した土を容器に入れ、火星上に保管することも計画されている。

 日本においても、20年代に火星探査機を送り込むミーロス計画が進行中で、有機物といった生命の痕跡だけでなく現存する生命の探査もできる高性能な検出器の搭載に向けて試験が続けられている。 現存生命探査ができる点が日本のウリだ。

 また、火星以外で言えば太陽系の氷天体にも生命の可能性がある。 木星の衛星エウロパやガニメデ、土星の衛星エンセラダスやタイタンなどがその候補だ。 すでにNASAと欧州宇宙機関が共同開発して97年に打ち上げた土星探査機カッシーニがタイタンやエンセラダスの観測を行ってきた。 さらに、NASAや欧州宇宙機関がエウロパやタイタンに大型探査機を送り込む計画を立てている。 もちろん、太陽系外の惑星にも目を向ければ、生命存在の可能性はもっと広がるだろう。


③ 地球から生命が出ていく可能性

 もしもパンスペルミア説が正しいのだとすれば、地球上の生命も、他惑星へ移動していることになるだろう。 このような発想で、高度400キロメートルを周回する国際宇宙ステーション上で、地球から出てくるかもしれない生物を捕らえようという試みが現在なされている。 具体的には、15年5月に宇宙を漂ラ微粒子を捕集するためのエアロゲルを敷き詰めたパネルが宇宙ステーションに取り付けられた。 山岸明彦・東京薬科大教授らが進めるたんぽぽ計画だ。 すでに成層圏( 高度約11~50キロ )では微生物が捕らえられており、成層圏を越えて宇宙空間にまで微生物が出てきているのかを確かめることが目的だ。

 宇宙空間に出てしまえば生物は生きてはいられないだろうと考えるのが普通だと思うが、すでにいくつかの実験から、条件さえ整えば宇宙空間に地球上の生物が出ていく可能性があると考えられている。

 その条件は、岩石内部に生物がいることだ。 岩石が紫外線を遮ってくれるおかげで、中の生物が死滅しないことが宇宙ステーションでの実験で確認されている。

 例えば、紫外線を遮断することでコケの一種やミジンコなどが約 1年半にわたって宇宙空間で生存し、オオムギの種にいたっては約 1年半後でも芽を出す。 ならば、微生物がたくさん集まる凝集体とよばれる状態でも紫外線を遮りながら宇宙空間を移動できるかもしれない。

 たんぽぽ計画では、まさにこのような仮説に基づいて、宇宙ステーションで微生物の凝集体を捕らえようとしているのだ。 捕集された微粒子サンプルは今夏中に地球に帰ってくる予定で、その後の詳細な検証結果が待たれる。

 生命が宇宙を旅しているかもしれないなんて一昔前まではSFの世界の話だった。 それが科学的に検証される時代がやってきているとは何ともワクワクさせられるものだ。

たんぽぽ計画とは
 「 TANPOPO 」 ( たんぽぽ )は綿毛のついた種子を風に乗せてまき散らします。 「 たんぽぽ計画 」 研究グループ( 代表:東京薬科大学 山岸明彦 )は、ISS-JEM( 国際宇宙ステーション・日本実験棟 )上での微生物と生命材料となり得る有機化合物の天体間の移動の可能性の検討と微小隕石の検出および解析実験を提案しています。 研究グループは、超低密度エアロゲルを用いることで、微小隕石やその他の微粒子を捕集することが可能であると考えています。 低軌道上で超低密度エアロゲルを一定期間曝露することで宇宙空間で微粒子を捕集します。 エアロゲル表面と衝突トラックの顕微観察の後、エアロゲルの様々な解析を行います。 衝突トラックの詳細な検討により、ISS周辺のデブリのサイズと速度が明らかにできると期待しています。 エアロゲル中に残存した粒子に関して、鉱物学的、有機化学的、及び微生物学的な検討を行います。 一方、宇宙環境下での微生物の生存可能性について検討するため、微生物を直接宇宙空間に曝露する実験も行います。 同様に、宇宙環境下での有機化合物の変性の可能性を検討するため、有機化合物の宇宙空間への直接曝露実験も行います。これらの実験を行うための装置はすべて受動的な装置であり、そのための装置の基本構造、装置回収後の解析法も、既に確立されています。


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 木星の衛星エウロパは、太陽系の惑星や衛星の中でも生物が存在する可能性が高いと言われる。 あのNASAが、エウロパについて驚くべき発見を発表すると告知したものだから、世界中が大騒ぎに。 映画の如く、巨大な海洋生物が棲んでいる可能性はあるのか。


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 そのニュースを聞いて、世界中のUFOハンターたちは色めき立つたという。
 NASA( 米航空宇宙局 )が、 「 木星の衛星エウロパについて驚くべき発表を26日( 現地時間 )に行う 」 と告知したのは9月21日のこと。 すると多くのウェブサイトやSNSで、こんな情報が飛び交ったのだ。 「 ついに宇宙人が発見されたか 」 と ──。

 むろん、NASAも騒ぎになることは御見通しである。 すぐさま、公式ツイッターで 「 ネタバレ注意 ─ エイリアンではない 」 と呟いたのだ。

 さて、実際に発表された 「 驚くべき発表 」 とは、どんな内容だったのか。
 ハッブル宇宙望遠鏡を使って1年3ヵ月にわたり調べた。 その結果、エウロパの表面から約200キロの高さまで水分が噴出する様子を3回、観測したという。

 すでに、水の噴出は2012年に確認されている。 山岸明彦・東京薬科大学生命科学部教授によれば、
「今回、噴出が3回確認されたことは、大きな進展です。 前回はオーロラの調査で水蒸気が出て来る様子が 1回見つかっただけで、どれくらいの頻度で水蒸気が出て来るのかは不明でした。 しかし、今回は木星に映る影を観測するという前回とは異なる方法で、3回も噴出が確認できた。 かなりの頻度で水蒸気が出ていることが明らかになり、エウロパをより詳細に調査する価値が裏付けられたのです。 今後、無人探査機で調査すれば、噴出している水蒸気から成分を分析し、粒子を地球に持ち帰ることも可能です」
 そもそも、エウロパと聞いてもピンと来ない方もいるはずである。 そこで渡部潤一・国立天文台副台長に解説してもらうと。
「木星にはたくさんの衛星がありますが、そのうちガリレオーガリレイが発見した、大きい4つの衛星をガリレオ衛星と呼びます。 エウロパはその中で、木星に2番目に近い第2衛星です。 表面は氷に覆われていて、クレーターが少ないのが特徴です」
 氷の下には海がある。 陸地はナシ。 言わば、星全体が北極のような状態と考えれば分かり易い。 地表の温度はマイナス 170度程だ。 『 生命の星・エウロパ 』 の著者、長沼毅・広島大教授によれば。
「ただし、氷の厚さは場所によって違うものの、数千メートルから数万メートルはあります。 氷の下に広がる海の深さは、100キロ程と言われており、地球上の海で一番深いマリアナ海溝でも 11キロですから、かなり深い海です。 エウロパ自体は、月より少し小さいくらいの大きさですが、星全体の水の量は、地球よりも多い」
 さすがにエウロパに人間が住むのは無理らしい。 しかし、地球外生命を探すという観点で言えば、非常に注目されているという。

 14年に公開された 『 エウロパ 』 という映画がある。 6人の宇宙飛行士がエウロパの探査に行き、巨大なタコのような海洋生物と遭遇。 この生物の画像が、宇宙船からの最後の通信となる。 飛行士たちは帰らぬ人となったが、地球ではこの生物の発見は歴史的偉業と称えられるという物語である。 これは、あくまで映画の世界の話なのだろうか。

 渡部氏が続ける。
「水が液体の状態で存在することは、ほぽ確実視されています。 表面を覆う氷の下に水があって、それが長い間安定している。 ですから、私も生物が存在する可能性はあると思います。 いるとすれば、多細胞生物まで進化しているのではないでしょうか。 魚だっているかもしれませんよ」
 長沼教授もこう言う。
「バクテリアかアメーバのような微生物はいるでしょう。 エウロパの海にどれくらいの酸素があるか分かりませんが、もし十分な酸素があれば、魚くらいはいるかもしれない。 ただ、クジラのような巨大生物はどうでしょう。 あれだけの生物を支えるには、その分他の生物が存在しなくてはならない。 エウロパにそれはどの生物がいるとは思えません」


チューブワーム

 一方で、意外な生物が棲息している可能性を指摘する。
「1979年、米国の惑星探査機 『ボイジャー 1号』 が、第 1衛星イオで火山の噴火を確認した。 イオで火山活動があるということは、第2衛星のエウロパでも同じような火山があると考えられました。 そして、奇しくも同じ79年、地球の海底火山で奇妙な生き物が撮影されました。 そこには太陽の光が届きませんから、まず植物ではない。 動物です。動物であるからには何か物を食べるはずだが、何かを食べている形跡が見つからない。 そこで調べてみると、海底火山から出る火山ガスをエネルギーにして生きていることが分かりました。 つまり、地球の中で、火山ガスさえあれば生きていける生物が発見された。 それが 『チューブワーム』 です」
 この生物の発見と、エウロパには海底火山がありそうだという発見が結び付いた。 そこから、エウロパにも生物がいるかもしれないという話が浮上したのだ。

 生物が誕生するためにはエネルギー源( 火山 )、水、有機物( 動植物体を構成している物質 )の3つが必要だというが。
「地球でも、太陽光に依存せず、水と海底火山からのエネルギーだけで生きている生物がいるのです。 エウロパには水と海底火山があることが分かっていますから、チューブワームのような生物がいても不思議ではありません」( 同 )
 現状でエウロパに何らかの生物がいる可能性は高い。 もっとも、どれくらいの量がいるかといえば。
「それはまだ想像もつきません。 というのも、それを推定するには有機物の量が分からないといけない。 エウロパの有機物の有無は未確認です。 生物の3条件が揃っているのは、太陽系の中では地球と、土星の衛星であるエンセラダスだけ。 しかし、エンセラダスは直径500キロと小さい。 生態系があってもそれほど大きくはないでしょう。 エウロパに有機物があれば、生物の存在に関しては、一気に最有力候補になります」( 同 )
 次こそは有機物の発見となるか。







( 2017.03.27 )
姿
  
    
      




空の果てがどうなっているか、少しずつ分かっていくかもしれない。
 この1年の間には、X線天文衛星 「ひとみ」 に悲劇的な事故が起きたり、113番元素がニホニウムと命名されたり、熱力学・統計力学の新たな法則が発見されるなどなど、驚きのニュースが相次ぎました。

 科学のニュースはいつでもどれでも驚きなのですが、実は私たちの宇宙観を変えるほど超重要な発見や衝撃的な報告が、この21世紀に入ってから相次いでいるのです。 16%が経過した21世紀に、どんな事件があったか、宇宙の姿がどう変貌したか、最近の件からさかのぼって思い出してみましょう。


2015年、重力波発見

 アインシュタインの一般相対論が予言する、時空のさざ波 「重力波」 は、検出が極度に困難なため、100年の間、検出は不可能でした。

 しかし2015年9月14日9時50分45秒( 世界標準時 )、巨大で精密な重力波検出装置LIGO( ライゴ )が、人類史上初めて重力波を検出することに成功しました。 太陽質量の36倍と29倍のブラックホールが13億年前に衝突・合体し、その際に放射された重力波が地球に到達し、LIGOをほんのわずかだけ振動させたのです。

 これにより、重力波とブラックホール両方の存在が疑問の余地なく証明され、同時に重力波天文学が創始されました。

 2017年現在、LIGOは2期目の観測を行なっています。 今回は何が飛び出てくるのか、楽しみに待ちましょう。


2014年、よその恒星の惑星が1000個を超える

 太陽系には惑星が四捨五入して10個ほどありますが、よその恒星がはたして惑星を持つのかどうかは、数世紀にわたって知りようがありませんでした。 なにしろ最も近い恒星でさえ、光の速さでも何年もかかる遠方にあります。 そこのちっぽけな惑星を検出するには、すさまじく高度な望遠鏡技術が必要です。

 しかし約500年のたゆまぬ技術開発のおかげで、1995年には太陽系以外の恒星の惑星( 系外惑星 )が初めて検出されました。 太陽系以外にも惑星が存在したのです。

 以来、系外惑星の数は年々増え、特に宇宙機 「ケプラー」 は、むちゃくちゃな勢いで新・系外惑星を検出していきました。 2014年、人類の知る系外惑星の数は1000個を超えました。

 この宇宙は惑星に満ちているのです。 中には生命を宿すものもあるかもしれません。 夜空を見上げる時、そのことを意識せずにはいられません。 星の王子様風に表現すれば、21世紀の星空が美しいのは、どこかに生命を隠しているからなのです。


2012年、ヒッグス粒子発見

 20世紀末から21世紀にかけて、素粒子物理学でも著しい発展がありました。

 「トップクォーク」 という重い素粒子が発見され、幽霊のような 「ニュートリノ」 が質量を持つことが確実になり、そして2012年には 「ヒッグス粒子」 がとうとう発見されました。

 ヒッグス粒子は、50年前に理論的に予言されて以来、検出が待ち望まれてきた素粒子です。 そのあいだ、建造される粒子加速器はどんどん大規模になり、世界最大の粒子加速器LHCは全周27kmという途方もない大きさになりました。 ヒッグス粒子を合成するのにはこの大きさが必要だったのです。

 これで、存在すると予想された素粒子はあらかた出揃いました。 これまでに発見された17種の素粒子は 「標準模型」 と呼ばれる素粒子理論で説明されます。 ここのところ見つかる素粒子は標準模型の予想におおむね従っているし、人類は宇宙のミクロな部分をほぼ理解し尽くしたのでしょうか。

 けれども、宇宙を満たす 「ダークマター」 や 「ダークエネルギー」 は、既知の理論と17種の素粒子では説明できません。 標準模型は近いうちに拡張する必要があるようです。


2011年、宇宙の加速膨張の発見にノーベル賞

 20世紀末から、どうも宇宙は加速膨張しているらしいという証拠が出てきました。

 138億年前のビッグバン以来この宇宙は膨張し続けていて、そのため、遠方の銀河を観測すると私たちの天の川銀河から高速で遠ざかっているのが分かります。 宇宙の膨張自体は90年ほど前に発見されていて、新発見ではありません。

 20世紀末に始まったプロジェクトは、50億光年以上という、訳が分からないほど遠くの銀河を観測して、距離と速度を精密に測定するものです。 そういうことを調べると、宇宙論にインパクトのある結果が出せるんじゃないかと思ってやったら、本当にインパクトがありました。 宇宙は加速しながら膨張していたのです。 ほとんどの研究者はこんなこと予想しませんでした。 ひっくり返るほどの驚きです。

 宇宙膨張は、一般相対性理論に従って起きます。 一般相対論の方程式をあれこれいじくると、宇宙の膨張を表す解が得られるのです。 そして加速膨張を表す解を得るためには、一般相対論の方程式中の 「宇宙項」 と呼ばれる定数項を0でない値に設定しないといけません。

 宇宙項は、宇宙空間を満たす 「ダークエネルギー」 を表すと解釈されています。 空っぽで真空の宇宙空間には、実は目にも見えないエネルギーが詰まっていたのです。

 一体このダークエネルギーとは何物でしょうか。 量子力学において 「零点エネルギー」 だとか 「スカラー場」 と呼ばれる代物が実在したのでしょうか。 どう扱えばいいのか、研究者も戸惑っている段階です。 この解決は21世紀の課題です。


2001年、ヒトの全DNAが読み取られる

 21世紀の初頭、ヒトの全DNA配列が発表されました。 ヒトの全DNAを読み取る 「ヒトゲノム計画」 は、当初は不可能ともいわれましたが、約10年かけて完了しました。

 ヒトのDNAは約32億塩基対、情報量にして 1ギガバイト弱です。 これは約2万~2万5000の遺伝子に相当すると思われますが、そのうち役割が判明し、きちんと解読されたといえるものはごくわずかです。 ヒトゲノム計画のおかげで、どういうDNA配列が書いてあるかだけは分かったものの、ほとんどはいかなる機能を持ち何の役に立つのかは不明な状態です。

 この理解は21世紀のサイエンスの主要なテーマであり、生物学、医学、薬学、工業など広い分野に革新をもたらすことは間違いありません。

 ヒトゲノム計画の過程で開発された新技術は、その後ますます磨きがかかり、現在では、ゲノムDNAのサンプルを与えると、その全配列を最短で数時間で読み取るまでになっています。 これは生物学の手法を変革しつつあります。 生物界におけるヒトの位置付けもどんどん変わっています。

 このように21世紀は、宇宙がどうなっているのか、それはどういうミクロな存在から構成されているのか、私たちヒトはどのような存在なのかといった、この世界を捉える観点が大きく変化している時代です。

 地球創生以来46億年経ちますが、21世紀は地球史( 宇宙史? )始まって以来の稀な瞬間です。 そういう革命のさなかに居合わせ、その目撃者になれることは、46億分の100ほどの大変な幸運なのです。