球は46億年前に誕生し、月はこれから1億年遅れて45億年前に誕生しました。 アポロ計画で月から持ち帰られた最も古い岩石は約45億年前のものでした。 「 地球史 」 をひもときながら地球と人類のよい関係を考えてみます。
 月は地球から飛び出して形成されました。 現在の火星ほどの超巨大な天体が地球に衝突。 それによって地球の表面は非常に高温になり、破片が四方八方へ。 宇宙に飛び出した最大の破片が、地球の引力によって、地球の周囲を回り出します。 これら破片が集まってできた最大の物質が月なのです( 図参照 )。
 このような成因はジャイアントインパクト説と呼ばれ、1984年に提唱されました。 本当に破片が集積して月が形成されるかどうかシミュレーションが行われ、1ヵ月から1年で月が地球を周回することが確認されました。 地球も衝突の後に現在とほぼ同じ大きさになりました。
 月は同じ面だけを地球に向けながら回り始めます。 月も地球も自転しますが、勝手に周回してもよさそうなものなのに、正確にシンクロしています。 すなわち月が自転する周期と、月が地球を1周する周期がまったく同じなのです。 そのため月は満ち欠けをしようとも、地球からは表側しか見ることができず、裏側は隠れたままです。 人類は人工衛星を打ち上げてから初めて月の裏側を見ることができました( 写真参照 )。




がつねに表を向けている原因は、内部を構成する物質にあります。 地球に見せる側には重い物質、裏側には軽い物質がたまっているのです。 表側には 「 玄武岩 」 と呼ばれるマグマが固まった重い岩石がたくさんあり、裏側には 「 斜長岩 」 という軽くて白っぽい岩石があります。 玄武岩は黒い色なので、望遠鏡で月の表面を見たときに黒っぽく見えます。
 表面の玄武岩を主体とする重い部分が地球に引き寄せられた結果、月が地球を回る公転周期が月の自転周期と一致し、月はいつも表側を地球に向けるようになったのです。
 さらに、地球から重力を受けた表側では、地下にある高温のマグマが吸い出され、月の表面に絶えず噴出。 黒い溶岩流となって表側の表面を覆いました。 現在、月の表側は39億年前から32億年前までの溶岩に覆われています。 その表面にはたくさんのクレーターができており、ガリレイは400年前に世界で初めて望遠鏡で観察しました。 これらのクレーターは、月の表面に隕石が落下して形成されました。
 月の周回は地球環境に大きな影響を与えました。 月は質量が地球の100分の1、直径が地球の4分の1にもなる巨大な衛星です。 太陽系のほかの惑星を回っている衛星と比べても、最大の衛星なのです。
 月は毎年3センチメートルずつ地球から遠ざかっています。 それは地球の自転速度を遅くするという重要な働きをしています。 月が誕生した当時の地球は、現在よりももっと速く自転しており、1日は4~6時間ほどでした。 一方、地球が太陽を回る公転速度は変わらず、当時の1年は1500~2000日ほどであったことになります。 今より4~6倍の速さで1日が終わり、四季は4~6年でやっと巡ってくるというわけです。
 40億年以上もかかって地球の自転速度を遅くしたのは、地球と月の間で働く引力です。 地球上の海では潮の満ち引き、すなわち潮汐が起きま した。 海水が潮汐で大量に移動すると、海底との間で摩擦を起こし地球の自転にブレーキをかけます。 その結果、地球の1日はしだいに長くな り、現在の24時間となりました。
 では、もし月を持たなければ地球はどうなったでしょうか。 筒淳平著 『 人類が生まれるための12の偶然 』 ( 岩波書店 )に興味深い予想があります。 月が飛び出なかった場合の地球の1日は約8時間になるとの計算があるそうです。 この場合、地球上では、東西方向に絶えず強風が吹き荒れます。 同じ状況は木星や土星の大気に見られますが、大型ハリケーンが何百年も続いている様子です。
 強風は生物の生き方を大きく変えてしまうでしょう。 メーン大学のカミンズ教授はこう予想しています。
 「 植物は風から身を守るために地中深ぐ根を張り、太陽エネルギーを効率的に受け取る葉が進化する。 動物は強風の中でも呼吸を維持し乾燥から身を守るため、特別な器官を発達させる 」。 その結果、人類も現在とは異なる進化を遂げていたでしょう。




の誕生による大きな影響は、もう一つあります。 地球が自転するとき、地軸が傾いたのです。 ジャイアントインパクトの際、それまで太陽を回る公転面に対して垂直方向であった地球の地軸には、23.4度の傾きが生じました。 この結果、地球には四季の変化が訪れました。 北半球で夏が暑く、冬が寒いのはこの地軸が適度に傾いているためです。 もし地軸が公転面に垂直であれば、赤道上はいつも灼熱の夏で、極地はつねに氷に閉ざされた厳冬です。 いずれも、季節のない単調な気候です。
 一方、地軸の傾きが90度なら、どうなるでしょうか。 極地域では6ヵ月の夏と6ヵ月の冬が交代し、そのほかの地域でも灼熱の夏と極寒の冬が目まぐるしく変わる、極めて不安定な気候となります。 現在の地軸の傾きは安定した環境を生み出すためにたいへん重要な要素だったのです。
 45億年前の月の誕生は、地球上で生命が進化するための条件を整えてくれました。 地球環境の成り立ちを大きなスケールで考えることも、人 類が持続的社会を作るために大切なのではないでしょうか。

まとめ ~



LRO PDS Release
With LRO's wide angle camera, scientists can create a global catalog of the mountains, craters, and rilles on the moon.








さんが今までに乗ったことがある最も速い乗り物は何ですか?

 飛行機?新幹線? …それとも自動車?

 いやいや、宇宙規模で見てみると、皆さん実はこれよりもはるかに速い乗り物に乗っているんです。

 その乗り物とは一体何でしょうか? そして、そのスピードはどれほどなのでしょうか?


地球の自転速度はどれくらい?

 私たちが住む地球。
 その地球は日々どれほどの速さで動いているのでしょう。

 そこでまずは、地球の自転速度から考えてみたいと思います。

 地球1周の長さは、赤道上でざっくり計ると約40,000km。
 これを24時間で1周すると考えれば、40,000( km )÷ 24( 時間 )= 1,667( km/時 )となります。

 ちなみに、日本付近( 北緯30度 )で同じように計算してみると、時速1,450km程度となります。

 これでも十分、飛行機よりも速いという計算になりますね。

 ところで、時速1,450kmは秒速に直すとおよそ400m/秒ですので、仮に自転の影響から外れて1秒間ジャンプしたとすると、400m離れた地点に着地することになります。

 でも、もちろん実際には慣性の法則が働きますので、そんなことは起きません。
 電車の中でジャンプした場合と同じですね。


地球の公転速度はどれくらい?

 それでは、次に地球が1年で太陽の周りを1周する速度( 公転速度 )について見てみましょう。

 地球は太陽の周りをほぼ円に近い楕円だえん軌道で回っています。
 ( ここでは便宜上、完全な円軌道として考えてみたいと思います。 )

 地球と太陽との距離はおよそ1億5,000万kmですので、その円軌道1周の長さは1億5,000万( km )× 2 × 3.14=9億4,200万( km )となります。

 1日あたりで進む距離は、9億4,200万( km )÷ 365( 日 )= 258万( km/日 )

 時速に直すと、258万( km )÷ 24( 時間 )= 10.7万( km/時 )、秒速で見てもおよそ30km/秒となります。

 皆さんがいるこの地球は、毎日こんなにも速いスピードで宇宙空間を移動しているのですね。


自転周期は長くなる

 このように地球はとてつもないスピードで自転や公転を繰り返していますが、そのスピードは永久に変わらないのでしょうか。

 いいえ、そんなことはありません。

 月の引力の影響により、地球では潮の満ち引きが起こりますが、地球の自転周期は 「 潮汐摩擦(ちょうせきまさつ) 」 と呼ばれる、この潮の満ち引きをもとにした海水と海底との摩擦の影響により、少しずつ長くなっています。

 具体的に地球の自転周期がどれほど長くなっているのかと言うと、100年間でおよそ1~2ミリ秒( 1000分の1~2秒 )であるとされています。

 ちなみに、地球が誕生したころの自転周期は5時間ほどであったと考えられています。


時には短くなることも ……

 一方で、2011年3月に起きた東日本大震災の影響により、地球の自転周期が短くなったとされる研究発表もあります。

 NASAの地球物理学者リチャード・グロス博士によると、東日本大震災の影響で地殻が動き、地球内部の質量分布が変化するとともに、地軸がわずかにズレたことで、地球の自転周期、つまり1日の長さが1.6マイクロ秒( 1000万分の16秒 )だけ短くなった可能性があるそうです。

 なお、同様の現象は、2004年のスマトラ島沖地震や2010年の南米チリ地震など、過去の大地震でも同様に見られたとされています。

 このように、地球の自転周期は一定ではなく、さまざまな要因で常に変化しているわけです。


まとめ ~
 







しも自転が止まったら、このような穏やかな状態ではいられない。 巨大な慣性力による津波や暴風、温度差、宇宙からの高濃度放射線で、地球は完全に崩壊することになるだろう。


-47Gの破壊力

球は北極上空から見て反時計回りに自転している。 1日をちょうど24時間、赤道1周を40,000kmとすると、赤道上に立った人間は、宇宙から見れば時速1,667kmで移動していることになる。 1秒間に463m。 とんでもない速さだが、大気を含め周囲の物体も同じ速さで移動しているので、その人は速度を感じない。 走っている電車のなかと同じで、飛び上がっても後ろに着地することはない。

 地球の自転が止まればこの人も止まるのは自明の理だが、減速時に強い慣性力が生じるので、止まり方が問題だ。 満員電車で急ブレーキがかかると、乗客はなだれのように進行方向に流されるのと同様に、短時間で減速するほどに強い慣性力が生じるのだ。 この慣性力はGであらわされ、1Gは自分の重さを意味する。 体重60kgの人は、2Gなら120kg分の力が加わることになる。

 赤道上の人は秒速463mで等速直線運動していると考え、自転が完全に停止するまでの時間( 秒 )から慣性力( G )を計算すると、
1秒47.20G
10秒4.72G
60秒0.79G
 となる。

 1秒では自重の47倍の慣性力が生じる。 減速よりも衝突と呼ぶのがふさわしい状況だ。 慣性力は建物や山を崩壊し、津波を発生させる。 万が一にでも地面から離れてしまうと、猛スピードで地表を転げまわることになるので注意しよう。 もっとも、地面もいっしょに吹き飛ばされているだろうから、しがみついても役に立たないだろうが。

 4.72Gは “F-1”、0.79Gなら “乗用車” のフルブレーキ相当なので、これならなんとかなりそうだ。 そう信じて何かにしがみつき、完全に停止するまで必至で耐えぬこう。 ただし大気にも慣性が働きすぐには止まらない。 地表が静止すると速度差で突風が生じ、物体を巻き込んで土石流の体を成す。 努力むなしく押し流され、風と共に去りぬ。

 もしも自転の停止が予測できたら、北極か南極に避難しよう。 その場で回転しているだけの地軸上なら、強烈な慣性力を受けずに済むからだ。


地磁気の減少で放射線にさらされる?

転が止まった地球は、昼夜2つの半球に分かれる。 地軸のように、太陽とは無関係に一定方向を向いたままなら1年に1回自転するのと同じになるが、これでも半年ずつの灼熱しゃくねつと極寒を繰り返すにすぎない。 気候はもちろん陸地や海洋も、現在とはかけ離れた過酷な星へと生まれ変わる。

 太陽風の存在も忘れてはいけない。 放たれるプラズマが人体に有害で、現在は地磁気に守られているものの、自転が止まれば地磁気もなくなる可能性が高いからだ。

 地磁気の発生はまだ完全に解明されていないものの、もっとも有力なのは地球ダイナモ理論だ。 この説では地球のコアの回転によって電気が生じ、磁力を発生させているという。 鉄を主成分とする高温で流体のコアは半径約3,500km、そこに流れる電流は30億アンペアに及ぶと考えられている。

 この説は地球を発電機に見立てた理論だから、コアを回転させるエネルギーが必須となる。 それは地球の自転とコアの対流によると考えられているので、自転が止まれば発電量の減少はまぬがれず、最悪ゼロになる。 地磁気の消失は太陽風の進入を許し、地表が電磁波やプラズマにさらされることを意味する。 オーロラが各地で見られるようになったら終焉の始まりだ。

 同時に、地球をドーナツ状に取り巻くバン・アレン帯も消失する。 バン・アレン帯は地磁気にとらえられた陽子 / 電子などの高エネルギー粒子に満たされ、地表の自然放射線の1億倍以上強いことから放射線帯とも呼ばれている。 地球を放射線から守るためのバリアーといえよう。

 もし地磁気がなくなりこのバリアーも消失すると、高濃度の放射線は容赦なく地表に降り注ぐ。 電磁波/プラズマに放射線が加われば、地球は無敵の殺人マシンと化す。 放射線は太陽からとは限らないから、夜半球に逃げても効果はない。 さよなら人類。


まとめ ~
 ./
 






 …… のかもしれないが、人間の方は星のことはほとんど何も知らない。
 ここで言っている 「 星 」 は我々の太陽のような自ら光を発する星( ものすごく遠くにある星 )であるが、ここでのお話は我々の身近にある星、火星や金星などの太陽系の中にある星( =惑星 )の話しである。
 よくある入門書っぽい本には 「 まず、最初にガスがあって、それが渦巻になり固まって星になった 」 とか書いてあるが実際には細かいことは何にも解ってないのである。
 基本的に、最初に小さい星が一杯あって、それがお互いに衝突して合体しながら、徐々に大きくなっていった、ということは解っているけど、今ある太陽系の様な形態、つまり、地球くらいの大きさの惑星が太陽のそばを回っていて、木星のようなガスでできた巨大惑星が太陽から離れたところを回っていると言う構造が、どうしてできたか、とか、こういう風になるのは必然なのか、あるいは、単なる偶然なのかちっとも解ってないのである。

シューメーカーさんとレビーさんが見つけた 彗星シューメーカー・レビー彗星が木星に激突 した時、あれほど大騒ぎしたーつの理由は、派手なイベントと言う他に、 「 惑星がどうやってできたか 」 という問いに答える絶好の機会だったからだ。 つまり、木星はああやって衝突を繰り返しながら大きくなったと言うわけである。

 こんなことさえ解らなかった最大の理由は、研究手段が何もなかったからである。
 今の太陽系の様に真中に大きな星があってその回りを小さな星が( 太陽に比べて、と言う意味。 木星の直径は地球の直径の8倍くらいある )ぐるぐる回っていると言うのは簡単に解くことができる。
 しかし、まだ、星ができていなくて太陽系全体に小さな星がちらばっていてお互いにお互いの重力で引き付けられながら運動している、と言う状態は全然、解けないのである。
 解けない理由は簡単。
 今の太陽系には太陽を入れて10個しか星がないが、その前の状態では数千個、いや、数万個、あるいはそれ以上の数の小さな星があった。
 それらの運動をきちっと解くなんてできはしない。
 それでは、 「 どれくらいたくさんなら解けないか? 」
1.1000個
2.10兆の10兆倍
3.3個
 「 解り切ったクイズを出しているな。 数千個で解けないと書いてあったばかりだから、2ではない。 3のわけないから、1が答え 」 と思うかも知れないが、実は答えは3である。
 「 うそつけ、太陽系の星の数( =10個 )なら解けるといったじゃないか 」 と言うかも知れないが、太陽系が10個でも解けたのは太陽だけがずば抜けて大きくて、他の星が小さいから。
 その大きさの差があまりに大きいので惑星同士の及ぼし合う重力は無視できる。
 だから結局、太陽と惑星の間の重力による運動を解いているだけなので実際に解いているのは2個なのである。

 「 それでも、3個はおかしい。 機動戦士ガンダムに出てきたラグランジエ・ポイントはどうなるんだ 」 とか突っ込んでくれる人がいると嬉しくて涙が出てしまうが、まあ、そういう人はいないだろう。
 「 機動戦士ガンガム 」 というのは僕が高校生のころはやったアニメーションだが要するに、地球、月、そしてその回りを周回する宇宙ステーションの間で戦争をする話しである( こう書くと、身も蓋もないが、熱狂的なファンの方、ごめんなさい )。
 ただ、宇宙空間だと困ることがーつある。
 別に、 「 上下がないから 」 とかいう単純な理由ではなくて、お互いがお互いの回りをくるくる回っていたのでは拠点攻略戦ができない。
 戦争と言うのは、陣とり合戦だからせっかく占領したところが位置関係が変化していつのまにか敵のまっただ中、というのでは困るわけだ。
 「 ガンダム 」 ではここがうまく解決されていて、地球と月からの重力がうまくつりあった点に宇宙ステーションがあって、月、地球、宇宙ステーションの位置関係が変わらないようになっている。
 地球、月、宇宙ステーションで星が3個。
 3個は解けないのにおかしいではないか!

 「 宇宙ステーションは星ではない 」 という答えもあるが実際にはそうではなくて、やはり、月や地球に比べて宇宙ステーションが小さいと言うことが大事なのである。
 同じ大きさのものが3個、となると、ラグランジエ点とかは不安定になってしまってすぐに位置関係がグテヤグチヤになり、陣とり合戦ができなくなって戦争もない、というわけだ。( あ、この方が平和でいいかな? )

 このグチヤグチヤはカオスと呼ばれている。
 カオスが生じると方程式自体に不確定性がなくても未来が予測できなくなってしまう。
 そして、このカオスは前世紀末にポアンカレと言う偉い数学者によってコンピュータなどない時代に既に発見されていたのである。
 どこで発見されたか? というとまさに今問題になっている3つの星の運動にみつかったのである。
 勿論、グチヤグチヤな動きをする星なんて実在しないから、ポアンカレがみつけたカオスは滅多に起きない病的な現象として無視されてしまった。
 だが、今ではカオスが生じる方が普通だと解っている。
 星の運動においてさえも。
 振り返るに、ニュートンが力学を作った時、大きな驚きを持って迎えられた理由のーつはニュートンの力学が地球の外の惑星の運動をきれいに記述した点にある。
 だが、ここで述べたように10個も星があって、円軌道( 正確には楕円軌道 )を描いて運動すると言うのは星の運動としてものすごく例外なのである。
 もし、ニュートンの力学が星の運航を説明できなかったらどうだろう? ニュートンの力学が正しくてもカオスが出現する( むしろ、一般的な )状況だったらコンピュータがない当時としては星の運航を予言できない。
 それでも、人々はニュートンの力学は熱狂をもって迎えられただろうか? 力学が近代科学の父と呼ばれただろうか? ひよっとしたら、力学がそのような評価を得ることはなく、そして、現代科学の歩みが全然変わってしまったかも知れないと思うと興味深い。

 ニュートンの力学は正しいけど、運動が複雑な場合の太陽系を描いた有名な短篇SFに 「 夜来る 」 というのがある。
 この世界では太陽が幾つもあるために人類が住んでいる惑星上はいつも昼のままで、1000年に一度だけ、夜がやってくると言う設定である。
 だが、これは実際には起きないであろう。
 同じ位の大きさの星が3つあっただけで運動はメチヤクチヤになる。
 太陽になるような星が7つも8つもあったら、その運動は目も当てられないほど無茶苦茶で周期的に1000年に一度、夜が来るなどと言うことはあり得ない。
 だから、 「 夜来ない 」 というのが正しいのだ。

 まして、同じ位の大きさの小さな星がたくさんある( 何万個もある )原始太陽系の振舞いなど予測不可能どころの話しではない。
 太陽系の起源がしれなかったのはこれも大きな原因なのである。
 それでは、太陽系の形成は永遠に謎のままなのかというと、そうでもなくなりつつある。
 その救世主はコンピュータ。
 人間の頭では3個で既に解けなくなるが、コンピュータなら数十個、数百個くらいなら計算できるのである。
 いま、多くの惑星科学者がコンピュータを使って小さい惑星が合体してIO個の惑星になるかを計算し始めている。
 僕は専門の研究者でないが、そういうのに興味もあるから、今、手を出そうかどうか迷っているところである。
 そして、きっと、手を出すとなったらその計算のために一台、専用の計算機を買うだろう。
 そして、その候補の中にはパワーマックもしっかり入っている。
 いまや、マルチメディア用のコンピュータで物理の研究ができる時代になった。
 マルティメディアのハードウェアに対する要求はそれほどまでに苛酷なのである。
 いまや、科学計算用のコンピュータより、マルチメディア用の計算機の方が早がったりする時代なのだ。
 どうです、―つ、お宅のAVマックでノーベル賞でも狙ってみますか?





( 2015.11.16 )



Pluto's Blue Sky
 冥王星の山々や氷の平原や谷が日没の光にほのかに輝き、かすんだ空も光を放っている。 氷に浮かぶ山、破れた外殻、予想もつかない動きをする衛星 ……

 冥王星はきわめて小さな天体だが、流れる氷河、興味深いくぼみのある領域、かすんだ空、多くの色を持つ風景など、信じられないほど多様な特徴が見られる。 溶岩ではなく氷を噴き出す 「 氷の火山 」 や氷に浮かぶ山々があり、さらに衛星は予想もつかない動きをしているようだ。

 2015年7月に冥王星へのフライバイを成功させたNASAの探査機 「 ニューホライズンズ 」 の科学者チームは、11月9日、米国天文学会惑星科学部会の年次総会で新たな観測結果を発表した。 観測データが示す冥王星は、事前の予想とは全く異なる天体だった。

 ニューホライズンズの主任研究者であるアラン・スターン氏は、 「 探査の成績は 『 優 』 ですが、予想の成績は 『 不可 』 です 」 と自己評価する。 「 冥王星系には驚かされてばかりです 」。

氷の火山

 冥王星の南極付近にある2つのくぼみは氷の火山のカルデラかもしれない。 2つのくぼみは、それぞれライト山とピカール山という巨大な山の上にある。 どちらの山も、高さは数kmで、裾野の直径は100km以上ある。 これはハワイの楯状火山に似た形と大きさだが、冥王星の火山から噴出するのは灼熱の溶岩ではなく氷のようだ。 おそらく、氷の下の海から上がってくる、窒素、一酸化炭素、あるいは水の氷が混ざった、どろどろしたものだろう。

 NASAのエイムズ研究センターのジェフ・ムーア氏は、学会発表の際に、現時点ではこれらが本当に火山であると結論づけることはできないが、 「 その可能性は非常に高い 」 と語った。

 もしそうなら、これらは太陽系外縁部で初めて発見された火山になる。 研究チームは、さらなるデータによりこの発見を裏づけることを計画しているが、一部のメンバーはすでに強い確信を持っている。
 同じくエイムズ研究センターのオリバー・ホワイト氏は、 「 頂上に穴がある大きな山を見たら、ふつう考えられることはただ 1つです 」 と言う。 「 私には火山にしか見えません 」

氷に浮かぶ山

 冥王星の山々は、地球のような山より海に浮かぶ氷山に似ているようだ。 ムーア氏によると、冥王星の山々の正体は水が凍った氷の塊で、おそらく窒素が凍った氷の 「 海 」 に浮いているという。 一部の領域では、こうした山はロッキー山脈ほどの大きさになっているが、窒素や一酸化炭素の氷の海に比べて密度が低いため、海面から顔を出して浮かんでいられる。 ムーア氏は発表で、 「 冥王星で最も大きい山々でさえ海に浮かんでいるのかもしれません 」 と述べた。

 スプートニク平原と呼ばれる氷原の西の端近くでは、巨大なシート状の水の氷がひび割れて配置が変わり、ムーア氏いわく 「 無秩序な領域 」 ができている。 形成されてから日が浅いなめらかな平原の近くに、幅40km、高さ5kmもある角ばったブロックが乱雑に連なり、無秩序に広がる山々を作っているのだ。 新たな分析によると、スプートニク平原は形成されてから1000万年しか経っていないらしい。 スターン氏は、 「 昨日生まれたばかりと言ってもよいくらいです 」 と言う。 「 小さな天体が、形成から数十億年後になっても大きなスケールで活動していることが分かったのは大発見です 」

巨大な裂け目、内部の海

 冥王星の表面には、スプートニク平原のように、信じられないほどなめらかな領域があるが、他の場所は、穴だらけだったり蛇革のようなうろこ状になっていたりする。 スプートニク平原の西には、バージル・フォッサ( Virgill Fossa )などの巨大な裂け目がいくつもある。 こうしたひび割れは、冥王星が膨らんで外殻が破裂したような見た目で、実際、そのようなことが起きた可能性がある。 米ワシントン大学セントルイス校のビル・マッキノン氏は、 「 外殻の下でゆっくり冷えて凍ってゆく海が膨張したのかもしれません 」 と言う。 科学者たちが推測しているように冥王星の外殻の下に液体の海が隠れているなら、この海がゆっくり凍って膨張すれば、外殻が破裂したような巨大な裂け目ができる可能性がある。

少なくて冷たい大気

 ニューホライズンズによるフライバイの前まで、科学者たちは、冥王星には窒素を主成分とする大気が大量にあり、その量は冥王星の体積の7~8倍もあるかもしれないと予想していた。 しかし、その大気はどんどん失われているとも考えられていて、冥王星が誕生してからの46億年間に表面から厚さ 1km分の氷が昇華して失われたと推測する科学者もいた。

 ニューホライズンズの科学者たちは、こうした予想はほぼ完全に間違っていたと言う。 冥王星の大気は予想ほど多くなかったし、大気が失われるペースも予想ほど速くなかった。 米サウスウェスト研究所のレスリー・ヤング氏は、 「 今回明らかになったペースなら、これまでに失われた氷は15cmほどでしょう 」 と言う。 冥王星の窒素の大半は、冥王星の近くにとどまっている。 奇妙な観測結果だが、これは、冥王星の大気中の高いところにシアン化水素があることにより説明できるかもしれない。 そんなに大量のシアン化水素が見つかるとは誰も予想していなかったが、シアン化水素が大気の温度を大幅に下げて、冥王星のまわりにとどめるのに役立っている可能性がある。

予測不能の動きをする衛星

 冥王星の4つの小さな衛星ステュクス、ニクス、ケルベロス、ヒドラの姿がついに明らかになった。 冥王星系に関するほとんどの事実がそうであったように、これらの衛星も科学者の予想を超えて奇妙な天体だった。 現在、欧州宇宙機関( ESA )のロゼッタ探査機が周回して探査しているアヒル型のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星と同様、ケルベロスとヒドラも2つのさらに小さい天体がゆっくり衝突して融合したように見える。 米SETI研究所のマーク・ショーウォルター氏は、 「 過去には、冥王星の小さな衛星は4つ以上、少なくとも6つはあったのです 」 と言う。

 さらに奇妙なのは小さな衛星の自転の速さだ。 一番速いのは10時間に 1回のペースで自転しているヒドラだが、すべての衛星が予想より速く自転していた。 「 こんな衛星系は見たことがありません 」 とショーウォルター氏は言う。 その上、ニクスのある面には赤みがかかった奇妙なクレーターがあり、科学者たちはそれをしっかり説明することができずにいる。 また、小さい衛星の中で 1つだけ黒い色をしていると予想されていたケルベロスは、実際にはほかの3つの衛星と同じ程度の明るさだった。




( 2016.11.21 )

 




➤ はじめに

 青くて美しい人類の母性、地球。 しかし、普段からそこで暮らしている分、外から見た姿や位置関係をきちんと知っている人って、意外と少ないのではないでしょうか?
 地球からどんどん離れて宇宙の一番遠くから眺めた時、地球はいったいどこに位置しているのか、そしていったいどんな場所にいるのか、宇宙での “住所” を探す旅に出かけてみましょう。


➤ 地球の住所はどこ?
  太陽系から宇宙の果てへ


まずは動画でイメージを掴もう

 まずはこちらの動画を見て、地球が宇宙のどこに位置するのか、イメージを掴んでみましょう。
 地球、太陽系、銀河系 …… と遠ざかっていく様がよく分かったかと思います。 では、地球が属している太陽系や銀河系といった場所は、一体どういった場所なのでしょうか?


➤ 太陽系

( image by Solar System - Wikipedia )


( image by Solar System - Wikimedia )

 まず地球が属しているのは、太陽を中心として水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の8つの惑星が公転している 「太陽系」 です。
 太陽系には、こういった惑星だけではなく、惑星から外されてしまった冥王星などの準惑星が5つあり、その他に軌道が確定しているだけでも21万個以上の天体があると言われています。

 ちなみに、太陽系の惑星の軌道は綺麗な平面上にあるわけではなく、地球から見るとそれぞれ違った角度の軌道上を公転しています。

 地球は、太陽から3番目の位置にいる星( 太陽系第3惑星 )です。




➤ 天の川銀河

( image by Milky Way - Wikipedia)
 「銀河」 とは、1000万~100兆個の星々を持つ巨大な天体です。
 太陽系の属する銀河は、「天の川銀河( 銀河系 )」 と呼ばれる直径約8~10万光年の棒渦巻銀河です。 棒渦巻銀河とは、普通の渦巻銀河と違って、渦の中心であるバルジを貫くような棒状構造を持っていることが特徴です。
 恒星の数は約2,000~4,000億個、全質量は太陽の1兆2600億倍という途方もない数値になり、銀河系を直径130kmに縮めた場合、太陽系はなんと約2mmほどの大きさになってしまいます。 ちなみに、地球からはこの天の川銀河内で輝く恒星しか見ることができません。
( image by 2013 in science - Wikipedia )
 太陽系は、天の川銀河の渦の中の少し外側の方にある 「オリオン腕」 と呼ばれる場所の内側に属しています( 画像内の黄色の丸印が太陽系の位置 )。 中心からの距離は約2万8,000光年ほど離れているので、天の川銀河の中の 「ベッドタウン」 的な場所に地球はいるのかもしれませんね。

 地球は天の川銀河の中のオリオン腕の内側にある太陽系の第3惑星です。





➤ 局部銀河群

( image by Local Group - Wikipedia )

 「銀河群」とは、50個程度の銀河を含む、比較的規模の小さい銀河の集団のことです。 ちなみに、銀河は重力で結びつき、集団を作る傾向があるため、このような銀河群が生まれるのです。

 天の川銀河は、アンドロメダ銀河などの大小およそ40個以上の銀河の存在が確認されている 「局部銀河群」 と呼ばれる銀河群属しています。 大きさは半径数百万光年にも及び、天の川銀河から最も遠い銀河である 「GR8」 はなんと約800万光年も離れています。

 天の川銀河の位置関係は右の画像の通りです。

 地球は、局部銀河群の中の天の川銀河の中のオリオン腕の内側にある太陽系の第3惑星です。





➤ おとめ座超銀河団

( image by virgo supercluster - Wikipedia )


 「超銀河団」 とは、銀河群や銀河団( 銀河群より規模の大きなもの )が集まって、1億光年以上の広がりをもつ集団です。
 局部銀河群は、約100個の銀河群と銀河団からなる、おとめ座銀河団を中心とした直径2億光年の 「おとめ座超銀河団」 に属しています。 位置的には、グループの外れの方に位置しています。

 地球は、おとめ座超銀河団の中の局部銀河群の中の天の川銀河の中のオリオン腕の内側にある太陽系の第3惑星です。



➤ 超銀河団を超えた先には何が広がっているのか?



 右の図は、おとめ座超銀河団を中心に置いた時、観測できる範囲の宇宙の中での超銀河団の広がり方を示しています。
 今まで、宇宙の中にはまんべんなく銀河が散らばっていると考えられていましたが、観測してみるとそうではありませんでした。
 実は、それぞれの超銀河団は、 「銀河フィラメント」 と呼ばれる平面上の壁のような位置関係で分布していて、それぞれの銀河フィラメントの間には何も無い空間( 超空洞=ボイド )が1億光年も広がっていることが分かったのです。 つまり、何も無い球状の超空洞を、平面上に伸びて分布している超銀河団が薄い壁のように包んでいる形をしていたのです。
 その様子は、石鹸を泡立てた時にできる幾重にも折り重なった泡の構造に似ていたため、 「宇宙の泡構造( 宇宙の大規模構造 )」 と呼ばれます。


( image by Void( astronomy )-Wikipedia )

 泡の表面が銀河フィラメント、泡の内部の空洞が超空洞を指しています。



➤ おわりに

 つまり、泡状に広がった宇宙のどこかから地球人へ手紙を書きたい時は、
 おとめ座超銀河団 局部銀河群 天の川銀河 オリオン腕 太陽系第3惑星 地球 
 と宛名を書けばいいのですね。

( 2019.09.28 )


 太陽系がある天の川銀河は、1000億個以上の恒星とそれ以上の数の惑星などで構成されている。

 人類が住む天の川銀河では、さまざまな恒星系を超えて地球以外の文明が広がっている可能性があるとする新たな研究論文が発表された。

 この研究は、地球外に住む知的生命体との接触の痕跡が見つかっていないことをめぐる 「フェルミのパラドックス」 に関して、新たな視点を提示するものだ。

 論文の著者たちは、 「宇宙人は存在しているが、人類とコンタクトを取っていない」 という可能性について、さまざまなシナリオを提示している。 例えば、宇宙人はかつて地球を訪れたが、人類が気づくようになった 「最近」 は訪問していない可能性があるというのだ。

 さらにこの研究では、恒星系を渡り歩こうとする宇宙人は居住可能な恒星系が距離を縮めるタイミングを伺っているのかもしれないという。

 天の川銀河には、地球外生命体による多様な文明が満ちあふれている可能性がある。 ここ1000万年ほどは宇宙人が地球を訪れていないため、我々がそれに気づいていないだけなのかもしれない。

 地球外の知的生命体は、各恒星系の動きを利用した、より負担のかからない形で宇宙を航行しており、時間をかけて天の川銀河の探索を行っている可能性もあるという研究論文が、2019年8月に学術誌 『アストロノミカル・ジャーナル』 に発表された。

 この研究は、 「フェルミのパラドックス」 という名で知られる疑問に対する、新たな回答と言える。 このパラドックスは、地球外文明の存在の可能性が高いと考えられるのにもかかわらず、そのような文明との接触の証拠が存在しないように見えるという矛盾を指す。

 このパラドックスはその名の通り、物理学者のエンリコ・フェルミ(Enrico Fermi)が1950年に最初に指摘したものだ。 フェルミは 「みんな、どこにいるのだろう?」 と尋ねたと言われている。

 フェルミがこの時の疑問の本題は、恒星間航行は実現可能かということだった。 だがその後、地球外生命体の存在自体に対する疑問を突きつけるものへと、意味合いを変えていった。

 宇宙物理学者のマイケル・ハート(Michael H. Hart)は1975年、この問題を考察する論文を発表した。 ハートは、天の川銀河が形成されてから約136億年が経っており、この間に知的生命体が同銀河を植民地化する時間はふんだんにあったにもかかわらず、そうした働きかけは地球上の記録には残っていないと指摘した。 この点からハートは、天の川銀河には人類以外に高度な文明を持つ生命体はいないはずだと結論づけた。

 今回発表された研究成果は、この問題に新たな視点を提供するものだ。 地球外生命体は、時間をかけ、戦略的に探索を行っているだけかもしれないと、論文の著者たちは考えている。

 この研究論文の主著者で、コンピューター科学を専門とするジョナサン・キャロル=ネレンバック(Jonathan Carroll-Nellenback)はBusiness Insiderの取材に対し、以下のようにコメントした。
「恒星の動きを考えに入れないとすると、残された結論は、自らが生まれ育った惑星を離れた生命体はいない、あるいは、この銀河系で高度な技術を持つ文明は我々人類だけ、という2つだけだ」
 天の川銀河に属する恒星(と、その周囲を回る惑星と衛星)は、銀河の真ん中を回転軸として、それぞれ異なる軌道と速度で周回している。 そのため、時にはある恒星系が、別の恒星系のそばを行き過ぎることがあると、キャロル=ネレンバックは指摘する。 そのため、地球外生命体は、探査目標が自分たちに近づくタイミングを待っている可能性があるという。

 その場合、宇宙に高度な文明が広まるのに必要な時間は、1970年代にハートが推定したときよりも長くなるだろう。 そうであれば、異星人はまだ地球を訪れていないか、あるいは、訪れたとしても人類が今のように進化するはるか以前であった可能性はある。

恒星間航行に関する新たな概念

 これまでも研究者は、フェルミのパラドックスに対して答えを出そうと、さまざまなアプローチを採用してきた。 地球外生命体が、惑星の地表よりも低い海の中で育まれている可能性について調査した研究もあるし、恒星間航行が可能になる前に、文明が存続不可能になって崩壊したという仮説を立てた研究もある。

 また、 「動物園仮説」 と呼ばれる考え方もある。 こちらは、天の川銀河内の知的生命体からなる諸社会が、我々人類には干渉しないという取り決めを交わしている、という仮説だ。 その理由は、ちょうど人類が、自然保護区を設けたり、外部とのコンタクトがない地域先住民への保護を実施したりするのと同じことだ。

 一方、2018年にオックスフォード大学の研究チームが発表した論文では、天の川銀河内で人類が唯一の知的生命体である確率を40%、さらには、全宇宙で唯一の存在である確率を約33%と見積もっている。

 だが、今回発表された研究論文の著者たちは、こうした過去の研究について、天の川銀河に関するある重要な事実を見逃していると指摘する。 それは、銀河内で恒星が動いているということだ。 恒星の周囲を惑星が回るのと同じように、各恒星系は、銀河の中心を回転軸として回っている。 例えば、人類が住む太陽系も、2億3000万年周期で天の川銀河内を周回している。

 仮に、知的生命体による文明が、他の文明から遠く離れたところで興隆した場合(銀河内の辺鄙な場所で発生した地球の文明もこれにあたる)、居住可能な恒星系が自分たちに近づいてくるまで待つことで、恒星間航行の距離を短くすることもできると、新たな論文は指摘する。 異星人は、新たな恒星系に辿り着いたのち、さらに別の恒星系までの航行距離が自分たちにとって最適になるまで待ってから、その恒星系に移るというわけだ。

 その筋書きでは、地球外生命体は、天の川銀河の中を高速で移動しているわけではない。 自らが居住する恒星系が、居住可能な環境を持つ惑星を従えた別の恒星と近づくのを、長い期間かけて待っていることになる。

 「この 『長い期間』 というのが10億年単位であれば、これはフェルミのパラドックスに対する1つの答えになる」 と、キャロル=ネレンバックは指摘する。
「居住可能な条件を備えた天体は非常にまれなため、そうした天体が再び航行可能な距離にまで近接する前に、文明は滅びてしまうのかもしれない」
天の川銀河は地球外生命体が住む恒星系で満ちている可能性も

 研究チームは、地球外生命体が存在するというシナリオをさらに探求するため、数理モデルを用いて、ある文明が銀河系内に広がる速度をシミュレーションした。 その際には、架空の文明から新たな恒星系までの距離、恒星間航行に使われる探査機の種類や速度、さらには探査機の打ち上げ頻度といった様々な要素が勘案された。

 今回の研究チームは、地球外生命体の動機や、その社会的背景を探ることはしなかった。 これらは、フェルミのパラドックス解明の試みにおいて、研究者が陥りがちな罠として指摘されている。 「我々はできる限り、(異星人の)社会に関する想定が少なくてすむモデルをつくるように努めた」 と、キャロル=ネレンバック氏は述べている。

 とはいえ、 「地球外文明が銀河系内に伝播する速度」 をモデリングする上での問題として、我々の手元にあるデータは1つだけ、すなわち人類のものしかない、という点が挙げられる。 すべての推定は、人類の行動に準拠しているのだ。

 しかし、こうした制約の下でも、今回の研究は、天の川銀河が、人類がまだ知らない、生命体の住む恒星系で満ちている可能性があることを明らかにした。 地球外生命体が用いる恒星間航行の速度および頻度について、かなり悲観的な推計を用いても、この可能性には現実味があるという。

 「すべての恒星系は、生命体が居住可能で、実際に住んでいる可能性もある。 だが、彼らが地球を訪れないのは、距離が遠すぎるからかもしれない」 と、キャロル=ネレンバック氏は指摘する。 その上で同氏は、この仮説が現実である可能性はあるとはいえ、その確率が高いと言うわけではないと釘を刺した。

 現時点で観測されている太陽系外惑星は約4000個にのぼるが、生命体の存在が確認されたものは1つもない。 とはいえ、探索活動はまだまだ不十分だ。 太陽系が属する天の川銀河だけでも、少なくとも1000億個の恒星が存在するとされており、惑星の数はさらに多いとみられる。 最近の研究では、こうした惑星のうち、地球型である可能性があるものは、最大100億個に達すると推計しているものもある。

 そのため、今回の研究論文の著者たちは、これらの惑星にまったく生命体が存在しないと結論づけるのは、海洋のほんの一部を探索して、イルカがなかったことを根拠に、海洋全体にイルカがいないと決めてかかるようなものだと書いている。

地球外生命体が、過去に地球を訪れているかも

 地球外生命体に関する議論に関しては、もう1つ、重要な要素がある。 これはマイケル・ハート氏が 「事実A」 (Fact A)と呼んだ問題で、現在、他の恒星から生命体が地球を訪れている形跡はなく、また、過去についても訪問の証拠がないという点だ。

 しかし、だからと言って、地球外生命体が地球を一度も訪れたことがないとは言い切れないと、今回の研究論文の著者たちは主張している。

 論文の著者たちは、文明を持つ地球外生命体が数百万年以上前に地球を訪れていたとすると、彼らの訪問の証拠は現時点ではもう何も残っていないだろうと指摘する(地球が誕生したのは45億年前)。 そこで著者たちが目を向けたのが、過去の地球外生命体による地球訪問の証拠を見つけられないかもしれないとした、過去の研究成果だ。

 さらに論文の著者たちは、地球外生命体には 「すでに生命体が生息している惑星を訪れたくない」 という意向があるのかもしれないと述べている。 異星人が、生命のある惑星を訪れたいはずだという思い込みは 「居住地拡大」 を 「征服」 と同一視する人類の傾向を素朴に当てはめる試みだと、著者たちは述べている。

 著者たちは、これらの要素をすべて考えに入れた上で数理モデルを作成し、文明を持つ地球外生命体は、自らが遭遇する居住可能な天体のうち、ごく一部にしか定住しないという前提に立って計算を行った。

 それでも、居住可能な天体が十分な数存在すれば、地球外生命体は天の川銀河全体に広がっていてもおかしくないと、論文の著者たちは述べている。

さらなる調査研究が必要

 現時点で地球外からの働きかけがまったく検知されていないからと言って、がっかりする必要はないというのが研究チームの見解だ。

 「それは人類がひとりぼっちであるということを意味するわけではない」 とキャロル=ネレンバック氏は述べる。
「生命体が居住できる条件を備えた惑星はおそらく稀なものであり、簡単にはたどり着けない、というだけだ」
 地球以外の、生命が居住可能な惑星を検知・観測する能力は、今後数年のうちに飛躍的に向上するとみられている。 現在、新しい望遠鏡が建設中であるし、すでに宇宙に打ち上げられている望遠鏡や探査衛星も複数あるからだ。

 2009年に打ち上げられた系外惑星探査衛星ケプラーは、天の川銀河内の、生命体が居住している可能性がある系外惑星の探査に関して、飛躍的な進歩をもたらした。

 ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)やトランジット系外惑星探索衛星(Transiting Exoplanet Survey Satellite:TESS)は現在も軌道上から、系外惑星の探査を続けている。

 また、NASAが現在開発中で、2021年3月に打ち上げが予定されているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)では、さらに探査可能な空間が広がり、ビッグバンのような時間の彼方まで観測できると期待されている。

 人類がこの宇宙で唯一の知的生命体かどうかを推定しようとする研究者たちの能力を向上させるものは、 「恒星間航行が可能な宇宙船」 の速度や航行範囲に関する、より多くのデータだ。 仮説上の 「地球外生命体の文明」 が、どのくらい存続しうるのかということに関するより良い理解も、役に立つことだろう。

 「我々には、いくつかのデータポイントがまったく足りていない」 と、キャロル=ネレンバック氏は述べている。

[原文:Alien civilizations may have explored the galaxy and visited Earth already, new study says. We just haven’t seen them recently.]





( 2018.09.01 )

  


木星の一部(左)とガリレイが発見した4つの衛星の合成画像。
衛星は上からイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト
 地球は月という1個の衛星を従えている。 太陽系の他の惑星では、水星と金星がゼロ、火星が2個などと衛星の数はさまざまだ。 最も多い木星では最近、一挙に12個も発見されて計79個になり、天文学者の注目を集めている。 中には他の衛星に衝突するリスクを抱えながら “逆走” している命知らずも見つかった。


巨大な引力で大家族に

 太陽系最大の惑星である木星は地球の約11倍の大きさがある。 重さは318倍もあるため引力が大きく、小惑星や彗星などの小さな天体を引き寄せやすい。 このため多くの衛星を持つ素地があり、これまでに67個もの衛星が見つかっていた。

 このうち4つは1610年にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが発見したもので、直径3千~5千キロと特に大きく双眼鏡でも確認できる。 うち太陽系最大の衛星 「ガニメデ」 は水星より大きい。 内部に海を持つ可能性が指摘されており、欧州が2022年に探査機を打ち上げ、詳しく調べる。 日本も観測機器の開発などで協力する見込みだ。

 残りの衛星は大半が岩石片で、大きさは最大でも200キロほどと小ぶりだ。


第9惑星探しの最中に偶然発見

 新たに12個の衛星が見つかったのは昨年春。 太陽系のはるかかなたに未知の 「第9惑星」 を探していた米カーネギー研究所のチームが偶然、発見した。

 「惑星探しで望遠鏡を向けていた空の方角に、たまたま木星があった。 そこでこの際、木星の未知の衛星も探してみようかと思いついた」

 チームリーダーのスコット・シェパード氏は7月の発表資料で、こう振り返った。

 12個は大きさが1~3キロと、かなり小さい。 米ハワイにある国立天文台のすばる望遠鏡も、発見の確定に貢献したという。 国際天文学連合が1年がかりでそれぞれの軌道を特定した。

 このうち9個は木星から離れた場所を、木星の自転と逆向きに約2年周期で回っている。 その軌道などから、元々は3つの衛星だったが、それぞれ別の天体と衝突して砕けて数が増えたようだ。 残る3個のうち2個は、木星に近い場所で木星の自転と同じ向きに1年弱の周期で回っている。


「全くの変わり者」、最後の生き残りか

 チームを驚かせたのが残る1つだ。 他の衛星とは軌道が大きく異なっており、シェパード氏は 「全くの変わり者」 と表現。 木星から離れた所にあり、他の衛星の軌道を横切りながら周回している。

 この衛星にはローマ神話の神ジュピターのひ孫娘で、健康と衛生の女神の名にちなんで 「バーリトゥード」 という命名が提案されている。

 バーリトゥードは木星の自転と同じ向きに回っているが、周辺に逆向きに回る衛星が多数あり、それらからみると逆行している。 衛星同士が衝突するリスクはかなり高いはずだ。

 「衝突すればたちまち、互いに木っ端みじんになるだろう」 とシェパード氏。 木星の周囲では過去にこうした衝突が繰り返され、衛星が増えたらしい。 バーリトゥードは、変わり者の最後の生き残りの可能性があるという。 大きさは1キロ未満で、知られている木星の衛星の中で最小のようだ。

 小さな衛星たちが持つ多彩な軌道を調べることで、太陽系が形作られた46億年前の状況について、新しい知見が得られるとチームは期待している。

 木星では未発見の衛星がまだ存在する可能性がある上、衝突が起きれば数はさらに増える。 そんな木星界隈( かいわい )の実態に、ガリレイも驚いているに違いない。


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