( 2016.12.03 )
SNS
  使



 そもそもSNSって何?
 SNSも 「駅の掲示板」 も本質はなんら変わりません


 フェイスブックに代表される 「SNS」 と呼ばれるサービスが多くの人に使われるようになり、SNSという言葉も世の中に普及しました。

 しかし、そもそもSNSって何なのでしょうか。 「SNSとは〇〇である!」 と自信を持ってしっかり説明できる方は、意外に少ないのではないでしょうか。

 インターネットでSNSの意味を検索してみると、次のような説明が見つかります。
SNS( ソーシャル・ネットワーキング・サービス )

人と人とを結びつける機能を有し、さらにはその結び付きを強める機能を持つインターネットサービスの名称

 機能は 「人を結び付け、関係を強める」 コレだけ。 この要素を満たす道具がSNSと呼ばれています。 よく考えてみれば、私たちの身の回りには、こういう道具があふれています。 スマホ、パソコン、タブレット …… 最近では携帯ゲーム機にも、この要素がない機種を探すほうが難しいくらいです。 私たちは、大人も子どもも、誰もがSNSというものに囲まれており、気が付いたらいつでもSNSを触っている、そんな状況なのです。

 グリーでネットの安全な使い方について全国で講演活動を行っている私は、大人向けの講演会では毎回必ず、こんな質問をしています。

 「みなさんの中で、自分はSNSを使っているという方、ちょっと手を挙げていただけますか」

 数年前にはほとんど手が挙がりませんでしたが、最近ではもう8割くらいの手が挙がります。 かなりの普及率です。 でも2割くらいの方、特に年配の方々はあまり手を挙げません。 当然、ご本人は 「SNSなんてやっていない」 と思っているからでしょう。

 でも実はそんな方々、特に年配の方々こそ、SNSに 「詳しくて」、SNSを 「使ったことがあって」、SNSのことを 「人に上手に説明できる」 方々なのです。 なぜなら …… 20年くらい前までは、どの街の駅の改札にも、たいていSNSが置かれていたのです。

 話を引っ張ってスミマセン。 昔は、どこの駅でも見かけた黒板の 「伝言板」 のことです。 これは、機能的には完全にSNSだったのです。

 今これを読まれている方々の反応が、見事に2つ、もうパッカンと分かれたと思います。

 駅の伝言板を知っている方: 「あったね! 懐かしい」

 駅の伝言板を知らない方:  「……ナニそれ?」

 小学校のPTAなどで質問をすると、9割くらいの保護者の方は知りません。 そんな方々のためにご説明しましょう。 黒板の伝言板とは、いったい何なのか。


 携帯電話 「以前」 の待ち合わせ

 そもそも昔は、メールどころか携帯電話もありませんでした。 だから待ち合わせをするのも必死でした。 今みたいに、 「12時に渋谷駅ね」 といったラフな待ち合わせはできないのです。

 「12時10分に渋谷駅のいつもの場所、柱3本目のあたり」

 たかが待ち合わせに、そこまで綿密な約束を交わしていたんです。 それが当時( といってもわずか20年ほど前ですが )の 「待ち合わせ」 でした。

 想像してみてください。 これから待ち合わせに出掛けるってときに、自分も相手も携帯電話を持っていないのです。 「携帯がなかったら会えないかもしれない」 って不安になりませんか。 そのとおりです。 会えたり会えなかったり、それが携帯電話 「以前」 の待ち合わせでした。

 家を出る寸前に、親に呼び止められるかもしれない、途中で忘れ物に気が付いて引き返すかもしれない、バスが来ないかもしれない …… 待ち合わせに遅刻する要素なんて山ほどあるのに、家を出たら最後、連絡の取りようがありませんでした。 それが普通の待ち合わせだったのです。

 しかも、もし約束の時間に相手が現れなくても、うかつにそのへんをブラブラできません。 その間に、もし相手が到着しちゃったら大変だからです。 当時は、待ち合わせ場所に恋人が現れず、でもその場を立ち去ることができず、シクシク泣いている女の子もいました。 そんな光景が広がっていたのです。

 そんな非常にハードともいえる時代の待ち合わせに便利だったアイテムが 「黒板の伝言板」 です。 駅など待ち合わせに利用されやすい場所には、ほぼ設置されていました。 「先に行くね」 「今日は中止!」 「あの店で待ってます」 …… そんなメッセージを書くために黒板が使われていたんです。

 今ではすっかり見かけなくなりましたが、人と人を結び、その結び付きを強める、あの 「黒板の伝言板」 は間違いなくSNSでした。

 私の場合は東京の渋谷駅、東急東横線の改札前にあった伝言板、通称 「東横ボード」 にはずいぶんお世話になりました。 学生時代、 「飲み会の店はココだよ!」 というお知らせは、東横ボードに書かれていたのです。

 実は今でも現役で生き残っている伝言板があります。 岩手県 「JR盛岡駅」 新幹線改札の中に設置されている伝言板です。 全国を行脚している私ですが、これくらいしか知りません( 流石にもうラクガキ帳みたいになっていますが )。 「うちの近所には、まだ現役で活躍している伝言板があるぞ」 という方は是非コメント欄で教えてください。 出張で訪問したときに見に行きたいと思います。


 「探しています」 の貼り紙

 黒板の伝言板は見かけなくなってしまいましたが、今でもなんとか生き残っている 「昔ながらのSNS」 は、ほかにもあります。 たとえば、いつぞやの秋、私の自宅近所で見かけたコレも、間違いなくSNSでしょう。

 この貼り紙、私の自宅近所のアチコチに貼られていたんです。 「かわいがってたんだなあ、戻ってきてくれたらいいなあ、でも鳥が飛んで行っちゃったのはさすがに厳しいよなあ ……」 と思っていたら、後日、

 「この貼り紙のお陰で戻ってきました」 ですって。 しかもまったく知らない通りすがりの誰かが 「よかったね」 というコメントまで …… たぶん貼り紙を剥がすとき、飼い主も気が付いてますよね。 人と人とを結び付けたうえにインコまで戻ってきて、しかも誰かの 「よかったね」 まで伝えている・・・。 これは、もう完全にSNSです。

 もちろん張り紙は、街中に勝手に貼って良いものではないので、それはまた別の問題なのですが、少なくとも 「ワシャSNSなんてやっていないよ」 という方々もこれはご存知のはずです。 黒板の伝言板もよく知っているでしょう。 つまりSNSを知っていて、上手に説明もできるんです。


 SNSは決して新しい道具ではない

 SNSは、新しい道具でも何でもありません。 昔から使われていた黒板や貼り紙が、機械仕掛けになって、インターネットに乗っかっただけ。 ソーシャル・ネットワーキング・サービスなんて偉そうな名前で呼ばれているだけ。 現在のSNSも、黒板や貼り紙と本質はなんら変わりません。

 ですが、現在のSNSには、黒板や貼り紙にはなかった特徴、しかも強烈な特徴が2つだけあります。 それは、

 ● 情報が広がる範囲
 ● 情報が広がる早さ

 この2つです。 ちなみに広がる範囲は 「全世界」、広がる早さは 「一瞬」 です。 黒板や貼り紙のSNSにはない、このたった2つの特徴が、SNSに関するさまざまな物語を作り出したり、ネット炎上を引き起こしたりしているんです。

 逆に言えば、この2つの特徴をしっかり押さえれば、現在のSNSの本質も簡単に理解できる、といえるでしょう。

 SNSは決して新しい道具ではない ――。 ぜひこのことを知って頂ければ、と思います。


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